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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
少年の夢編
162/206

天界のドグマ

「………っ。………かゆい。かゆいかゆいかゆいかゆい…。」

「…?」


 亀神がそう口を開いた。大きな胴体を揺さぶっている。


「ちとお前たち、ワシの背中見てくれぬか。」

「せ…背中って…、甲羅…のことですか?」

「決まっておろうっ。ワシぁ亀ぞ。亀の背と言うたら甲羅じゃろうが。ほれ、こっち来んか。」


 レオの問いに亀神がそう答えると、レオ達は亀神が立つ祠の中に入り、甲羅を見た。ネネカは目を大きく開いて声を溢す。


「っ…!これは……」


 彼らが目にしたのは確かに甲羅だった。しかし、その甲羅はドーム状のガラスのようになっており、ガラスの奥には複数の大陸と青い海があった。シェウトは甲羅に手を置き、それを見つめる。


「…これって……俺たちの…」

「ま、そういう事じゃ。ワシはこうして下界を見ておる。それより、ほれ、左肩んトコ。」


 彼らは指示通り北西のところに目をやった。イリーグ上空に赤い雲が渦巻いている。ライラはそれに顔を近づけた。


「……何だっ…炎か……?」

「魔物の仕業に違いねぇっ、すぐに——」

「待たんか。」


 亀神はアランを止めた。亀神は続けて口を開く。


「敵はおそらく火の使い手。お前のスキルを見る限り、属性が被っておるではないか。第一、お前は神器を持っておらん。ふむ、お前には勝てぬじゃろうな。」

「何をっ」

「勝てぬと言うておるのじゃ。……ハァ……仕方ない。ワシが選抜するかの。」


 亀神がそう言うと、レオとコルトのアイテムポーチと、シルバの衣の内側が輝きを放った。同時に、ココの目の前に光と共に亀の形をした小さなスノードームのようなものが現れた。3人は光を手に取ると、それはココの目の前に置かれたものと同じものだった。甲羅の部分が亀神と同じように透明になっている。亀神は続けて口を開いた。


「それはドグマの証、アバトファクトじゃ。ドグマってのは、まぁ簡単に言うたら宗教の信者みたいなものじゃ。そのアバトファクトがあれば、自分の位置や世界の異変を見る事ができる。りあるたいむ(・・・・・・) でな。ちょいと便利になった地図だと思えばよい。」

「それで、今これを貰った俺たちが今回の選抜メンバーってことか?」

「そじゃ。そして今、お前たちはワシの信者になったという事じゃ。強っ制っ的っにっ、な。はい、ザマぁ。」


 シルバの問いに亀神は頷き、そう答えた。手の上に乗るアバトファクトの透けた部分を覗くと、亀神の甲羅で見たのと同じ光景がある。すると、ココはふとある事に疑問を抱き、口を開いた。


「そういえば、ここの行き来はどうすればいいんだ?」

「簡単じゃ。今渡したアバトファクトを握って、その場で10秒間瞑想………以上じゃ。」

「………オイラ、前足じゃぁ握れないぞ。」

「ええいっ、触っておればよいのじゃ!ほれ、さっさと行かんかっ。背中が痒くてたまらんっ!」


 亀神がそう言うと、レオ達はアバトファクトを握り、目を閉じた。





 しばらくすると、彼らの頬を肌寒い風が撫で始めた。目を開くと、そこは人気(ひとけ)のないローアの広場だった。コルトとレオは口を開けたまま辺りを見渡す。


「………戻って…きた……」

「……だね…。」


 するとシルバはアバトファクトを懐に入れ、ココと共に歩き出した。


「んじゃ、ペガサス借りに行くとしますか。」

「あっ、はいっ!行こう、コルト。」

「うん。」


 レオとコルトは、シルバとココの後を追った。そして、ペガサス貸出場でペガサスを3頭借り、3人はそれぞれペガサスに跨った。ココはシルバの前の方に飛び乗る。そして、イリーグに向かって3頭のペガサスは翼を大きく広げて飛び立った。




 肌寒い風を体全体で受け、静かな草原や雪を被る山脈を越えていく。空に広がる青い空を薄い雲が流れていく。しかし、ノルスフィアの上空まで来たところだろうか。肌寒い空気は少しずつ暖かくなっていき、視線の先に水平線が見えたころには、全身の毛穴が開き汗を流すほど暑くなった。


「この熱気……近いぞっ。」


 シルバがそう呟き、懐からアバトファクトを取り出すと、ココは空を見上げた。先程まで青かった空は緋色に染まっている。夕日の色ではない。


「なんだっ……これ……」

「熱気による異常気象……これも魔物の力ってことなのか…」


 レオは瞳に緋色の空を映しながら、額の汗を腕で拭い払った。この時、彼らは気付いていた。これまでの敵とは一味違う事に。ノルスフィアを越え、イリーグの島を目にしたその時、無数の火の玉が彼らのペガサス目掛けて飛んで来た。


「っ!!…お前らっ!!高度を下げろっ!!」

「はっ、はいっ!!」


 3人は火の玉を一つ一つ避けながら、ペガサスを急降下させた。空と同じように緋色に染まった海の真上まで行くと、火の玉は飛んで来なくなった。


「さっそく仕掛けてきたなっ…」

「でもっ、まだイリーグは先ですよっ……。この距離であんな攻撃を仕掛けてくるなんて……」


 ココとコルトがそう口を開くと、シルバは目を大きく開き、先を見た。


「“獣王の天眼”。」


 シルバの視界は広くなり、ともに遠くまで見る事ができるようになった。そして、その視力で彼が目にしたものは、崩れかけた大きな城だった。最上階のバルコニーに人影がある。華美なドレス姿の女性だ。しかし、その肌は黒曜石のように黒く、火炎を纏っている。シルバはニヤけ、口を開いた。


「はい、見つけちゃった〜。お前らっ、武器を手に取れっ。戦闘開始だっ!!」

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