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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
幻想の星編
141/206

壁の中の女王

 城の大きな扉が開くと、豪華に彩られた内部の輝きが、レオ達の目に飛び込んできた。海のように青いカーペット、宝石のようなシャンデリア、隅々まで煌めきに飾られる中で、兵士は姿勢を正し、召使いは深くお辞儀をした。3人は思わず息を呑み、ゆっくりと城の中へと入った。


「凄い……綺麗…ですね……」

「うん。」


 ネネカの目は輝いていた。彼女の声にレオが頷くと、アランは小さく口を開いた。


「間違いねぇ…城ん中見てはっきり分かった。女王は清楚系で優しくて美しくてお淑やかな人だ。」

「アラン…それ…、まだ言ってるの…?」


 レオは苦笑いをした。そう3人で小さい声で話しながら長い階段を上ると、長い槍を持った兵士が左右に立つ、大きな扉の前に辿り着いた。右に立つ目つきの鋭い兵士がレオ達に近寄り、口を開いた。


「この先に立ち入る際は、武器をこちらに渡すようご協力願います。」

「あっ、はい。」


 レオが返事をすると、彼は折れた剣を、アランはガントレットを、ネネカはロザリオを兵士に渡した。


「では、くれぐれも無礼をなさらぬよう……」


 兵士がその言葉を残すと、2人の兵士は大きな扉をゆっくりと開いた。扉の奥で待ち構える玉座の間からは、より強い輝きと圧力が放たれる。瞳孔が整うと、レオ達の目に、豪華に装飾されたドレスを纏う女王の姿が映った。あまりの輝きに、3人は視線と意識を奪われる。すると、そんな彼らに、女王が口を開いた。


「どうした、そこに居ては話せん。もっと近くへ来んか。」


 その声は鋭く、氷のように冷たかった。レオ達は慌てて返事をし、女王の前まで歩き、床に膝をついた。すると女王は、大きな玉座に腰を掛けながら、彼らの顔を見つめ、口を開いた。


「それにしても、私に客とは珍しい。しかも異界から来た人間とやら……か。随分とモノ好きで変わった者達だな。…さて、まずは名でも聞こうか。そこの少年、頼まれてくれるな?」


 その鋭い視線は、真ん中で膝をつくレオに向けられた。レオは口を無理矢理開くようにして声を吐いた。


「……は…はいっ。わたしがレオ・ディグランス・ストレンジャーで、右がクナシア・ネネカ、左がガルア・ラウンですっ。」

「ほぉ……ではMr(ミスター).ストレンジャー、お前達はなぜここに?」


 女王の鋭い視線が圧となり、レオの視線を弾く。レオは少し落ち着こうと、ゆっくりと息を吐き切り、息を吸い込んだ。そして、大きく口を開いた。


「はいっ、この世界の理を掌る神を呼ぶために、3人の王に会いたいのですっ。」


 彼の真っ直ぐな声を聞き、女王は少しだけ目を大きく開いて止まった。驚いているのだろう。すると女王は少しだけ口角を上げて話し出した。


「……この世界に導きの光を……か。面白い。しかしその目を見る限り、自らの意志では無さそうだな。誰に頼まれた?」

「えっ…ぁぁ…っと……リュオンさんに頼まれて…ここに……。詳しい話は女王様に聞け…と。」


 突然の質問にレオは言葉を躓かせながら話した。すると、それを聞いた女王は硬い顔をしてゆっくりと首を傾げた。


「…リュオン………聞いた事が無いな……。私はライトニングの大半の名を知っているつもりだったが……。まぁよい。しかし、そのリュオンとやらは大胆な事を思い付くな……気に入った。」


 女王の表情は戻った。しかし、目つきは相変わらず鋭い。白く瑞々しい頬の彼女は、口紅が光るその唇を続けて開いた。


「さて、3人の王と言ったな。場所は教えてやらんでもないが、身の危険は承知の上で…だろうな?」

「はいっ、覚悟はできています。」


 レオは女王の言葉の後に、強い思いと鋭い眼差しを彼女の目に刻みつけた。女王は目を細くし、見下すようにして口を開いた。


「ほぉぅ…………そうか。ではゼノバレル将軍、地図をここに。」

「承知いたしました、陛下。」


 女王は、白く大きな鎧に身を包むゼノバレルに指示を出した。扉の近くに立つ彼が頭を下げると、複数人の兵士を連れて玉座の間を離れた。しばらくすると、彼らは巨大な布を巻いたような物を運んで来た。レオ達は目を丸くしてそれを見つめていると、ゼノバレルは3人に口を開いた。


「すまない君達、少し退いてくれないか。」

「あっ、すみませんっ。」


 ネネカがそう口に出すと、レオ達は急いで立ち上がり、部屋の隅に立った。すると、複数人の兵士達は巨大な布を床に広げた。地図だ。やはり現実世界の世界地図と似ている。女王は立ち上がり、ゼノバレルから長い指し棒のような物を受け取ると、口を開いた。


「まずは、世界の活力を掌る炎王竜。メルビアの西側にある巨大な溶岩洞の底に彼は居る。」


 女王は北アメリカ大陸のような場所を指した。続けて口を開く。


「次に、世界の鮮麗を掌る海帝鯨。彼女はイリーグの南の深海に居る。」


 女王はイギリスのような島の南の海を、円を描くようにして指した。


「そして、世界の恵みを掌る森皇獣。ブランカの森の最深部に彼は居る。」


 女王は南アメリカ大陸のような場所の最南端を指した。そして女王は指し棒を両手で持つと、レオ達の顔を見て口を開いた。


「さて、この3箇所に行ってもらうわけだが……勿論、道中は危険だ。しかし1番の問題は、それら3人の王から、どうティアステーラを貰うか……だな。」

「……ティア…ステーラ……?」


 レオは首を傾げた。女王は右手に持った棒で左手の平を叩くようにしながら口を開いた。


「何、知らんか。世界の理を掌る神を呼ぶために必要な物なのだがな。3人の王に会うのも、そのためのはずだが……。…まぁいい。これについては、直接聞くといい。礼の品として受け取るのが理想的だな。」

「なるほど……ありがとうございます。」


 レオは軽く頭を下げ、再び床に広げられた巨大な地図を見た。するとアランは、眉間にしわを寄せて口を開いた。


「んじゃぁ………そうだな………。炎王竜、海帝鯨、森皇獣の順で行くとして…メルビアから、東の海を越えてイリーグに——」

「………Mr.ラウン、何を言っているんだ?」


 女王は鋭い目つきでアランの目を見つめた。彼は口を開いたまま固まった。


「人間は何も知らぬようだな。この世界は半球状に出来ている。確かに歴史上には、お前のように『この世界は球体である』と言った学者が居た。しかしな、それを信じて航海に出た学者は二度と帰って来なかったという。そしてその(のち)に、あるペガサス乗りはこう言った。『この世界の端では大海が斬られ、流れ落ちていた』……と。」


 レオ達は驚きを隠せなかった。開いた口が戻らない。しかし、今はそれに驚く時ではない。3人は女王の口から出た言葉を呑み込み、姿勢を正した。すると、女王は指し棒をゼノバレルに渡しながら口を開いた。


「どの順番でどう行くかは後で決めるがいい。説明は以上だ。何か質問は?」

「ぁっ…ありませんっ。ありがとうございましたっ。」


 レオがそう口に出すと、アランとネネカと共に深く頭を下げた。


「よろしい。ではMr.ストレンジャー、Mr.ラウン、Ms(ミズ).クナシア、()きなさい。」


 女王が言うと、レオ達は頭を低くしながら部屋を出て、兵士から武器を返却してもらった。そして静かに階段を降り、城の外に出た。城壁の上には青い空が広がっている。町へと続く橋を渡ると、アランは大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き切った。そして、小さく口を開いた。


「…怖っ……」

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