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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
幻想の星編
123/206

友情の結晶

「レオを…生き返らせる方法…だと……?」


 黒い雲に覆われ、夜の匂いが漂うパーニズの町。ネネカとアランは、コルト、カルマ、オーグル、スフィル、シェウトを酒場に集め、木のテーブルを囲んでいた。眉間にしわを寄せるシェウトに、アランはテーブルに右腕を置き、真剣な眼差しを送りながら口を開いた。


「あぁ……ティアクリスタルってのが北ラスカンの屍山山頂にあるらしくてな、それを使うことで、人を1人生き返らせることができるらしい。」

「……なるほど……だからさっき騒がしかったのか……まぁ無理もねぇな。」


 スフィルがそう言い、右手の人差し指でテーブルをこつこつと叩いていると、厨房からデンテが近寄ってきた。


「おい、こんなに集まってんならデケェ何か頼めよ。さっきから水しか持ってきてねぇぞ。」

「わりぃデンテ。後で頼むからよ。」


 カルマがそう言うと、デンテは残念そうな顔をして厨房へ戻った。7人はそれを見送った後に再び向き合うと、ネネカは小さい口を開いた。


「……その…言いづらいのですが……どうか、皆さんには…レオさんの復活を……手伝って欲しいのです……」

「無理なら正直に言ってくれ……ただ、俺とネネカは…誰よりもレオを生き返らせるべきだと思うんだ。」


 ネネカに続いて、アランは立ち上がってテーブルに両手を置き、口を開いた。テーブルの上に置かれた7つのグラスの水は小さな波を静かに広げた。するとオーグルは右の義手を光らせてアランを見た。


「……誰よりも生き返らせるべき……か……。だがアラン、その山がどれだけ危険なのかも分からんのだろう?もしここにいる全員がレオ派になったとしても、レオ1人に対して多くの犠牲を払う事になる可能性だってある。もしかしたら、これだけでは命が足りんかもしれん。確実に全員生きて帰って来られるって自信はあるんだろうな。」


 オーグルの鋭い声にアランは心と喉を裂かれた。そして彼はゆっくり椅子に座り、下を向いて口を開いた。


「正直言うと……自信はねぇ。ただな、この先レオ無しじゃぁ、俺達はこの世界からは出られねぇ。そう思うんだ……。だからよ、やってみる価値はあると思うんだ……。…頼む……っ。力を……命を貸してくれっ……!!」


 アランは深く頭を下げた。その時は一瞬だけ時間が止まったように思えた。しばらく静かで冷たい風を肌で感じた後に、コルトは口を開いた。


「命を貸してくれ……か……。なんかカッコいいね。……アランっ。協力するよ!」

「…お前……」


 アランがゆっくり顔を上げると、その目には、椅子から立ち上がってアランに微笑むコルト、カルマ、オーグル、スフィル、シェウトが居た。


「俺も行かせろよ。アイツには世話になったしな。」

「……スフィル……お前ら……っ!!」


 アランは喉を震わせた。言葉にならない大きなものが込み上げてくる。隣に座るネネカの顔にちらりと目を向けると、彼女の頬は濡れていた。それは予想の範囲内だったからだろうか、アランは安心した。すると、シェウトは口を開いた。


「レオ派パーティ結成だな。んで、リーダーはどうする。7人も居ちゃぁまとめる仕事ってのは大事になってくるぞ。」

「……そりゃぁ俺が——」

「私がやりますっ。」


 アランが中途半端な声の張りを吐き出すと、ネネカは鋭い声を放った。他の6人は目を大きく開き、黙った。


「レオさんみたいに上手くまとめられるか心配ですが……っ、ですがっ!レオさんは最後まで私に生きる勇気を与えてくれました。私もそうでありたいっ。どうかその仕事っ、私にやらせてくださいっ!」


 ネネカはそう言って立ち上がった。彼女の鮮やかな瞳は生き生きとしており、それはまるでレオのような眼差しだった。


「良いんじゃねぇのか。少なくともこの中では1番信頼できるだろうしな。」


 オーグルは口角を上げ、右腕に巻かれた鎖を鳴らしながら腕を組んだ。カルマも続けて口を開いた。


「だな。何しろずっ〜とレオの事見てきたんだし?リーダーの仕事は学べてるだろ。っていうか、『私もそうでありたい』って、かなり大胆になってきたんじゃないの?」

「ぅっ…ぅぅ……」


 その言葉にネネカは耳まで赤くし、両手で顔を隠して椅子に座り込んだ。カルマは周りの5人の冷たい目を見ると、苦笑いをした。


「お……おっと………」

「……カルマ、恋人失った人の気持ち考えた事あるのか?」

「っ…!アランさんっ!まだそんな関係じゃないですっ!」


 ネネカは必死な赤い顔でアランを見上げた。アランはそんな彼女の顔を見て、小さな声を溢した。


「………『まだ』?」

「っ〜〜〜!!」








 その頃、ダークネスの世界では……


「申し訳ありませんっ、魔王様っ…!!」


 ここは魔王城。静かな玉座の間にグレイスの声が響く。


「……グレイス。あれは使うなと言ったはずだが…?なぜ使った?」

「そっ……それは……その……」


 グレイスは男に頭を下げたまま喉に声を詰まらせ、全身の毛穴から気持ちの悪い汗を流していた。男は彼女にため息を吐き、人差し指と中指を揃えて立てた右腕をグレイスに伸ばした。


「ふふ…あらあら。」


 男の後ろに居たカイルは微笑んだ。彼女の眼鏡がぎらりと光った時、男は口を開いた。


「“ユータナジー・ヒット”。」


 その時、男の2本の指先から一筋の細い線が放たれた。その線はグレイス当たると、心電図のように波打ち、また真っ直ぐな線となって彼女を通り過ぎた。グレイスはばたりと倒れた。


「…………………………」


 男はしばらく、動かなくなったグレイスを見下していた。彼女の瞳は、鮮やかな色を失った。そして男は伸ばした右腕の手を開き、口を開いた。


「“気攻波”。」


 男の手の平から強烈な風圧が飛び、それを背に喰らったグレイスは少し跳ねた後、咳き込んだ。


「…っ!!ゲッホッ!!ゲッホッ!!…ぅ!!お゛えぇえ゛ェぇえ゛え゛ェえ゛ェェっっ!!」


 グレイスはその場で嘔吐した。涙とよだれと嘔吐物で汚れたその顔を見て、男は鼻で笑った。


「分かったな。規則に違反した者への罰は重いぞグレイス。生憎ティアクリスタルは1度使うと消滅する。さてこの先、どう尻拭いするか–—」


 男は気配を感じ、顔をあげた。鋭い視線を向ける先には、腹と両肩と口から血を流すデルガドが居た。彼はおぼつかない足取りで男に近寄り、膝をついた。


「ぅ……っ…!た…ただいま……戻りましたぁ…っ……」

「……無様だな……。可能なことなら、姉弟揃っての馬鹿面を見たくはなかったが……。」


 男は冷たく静かな顔でデルガドとグレイスを見下した。その声は鉛のように重たかった。するとデルガドは、声に押さえつけられた頭をゆっくり上げ、口を開いた。


「しかし…魔王様ぁ……っ。人間をぉ……1人殺しましたぁ……っ。あれはぁ………っ、間違い…なく……っ、勇者です……っ。」

「…レオ・ディグランス・ストレンジャーか……しかし…だ。……これを見ろ。」


 男はそう言うと、玉座の左に置かれた水晶玉を手に取り、デルガドとグレイスに見せた。そこに映し出されたのは、首に青紫の痣が滲む、白い肌の人間の死体だった。よく見ると、灰色の地面の上に、数多くの人間の死体が転がっている。


「……こ……これ…は……」

「屍山の麓だ。ここにはチョーカーという魔物が住みついている。彼らはそれにやられたのだろう。しかし問題はそこではない。デルガドよ、ティアクリスタルは各世界に1つずつあるというのは知っているな。」


 男の言葉で、デルガドとグレイスは同時に何かを察した目をした。グレイスの汚れた両手は震え、デルガドの眉間にはしわが寄った。男は口角を少し上にして続けて口を開いた。


「ライトニングのティアクリスタルは屍山の頂上のどこかにある。現在ライトニングでは、人間どもが自我に呑まれて混乱している。実に愚かだ。しかしだ、貴様の殺したレオの仲間は、彼らとは少し違う。彼らがもし、レオを復活させたなら…目には目を、歯には歯を……そうなり得るだろう。」


 デルガドは拳を握り締めた。今自分が立たされている状況を何度も思い返し、歯を食いしばった。そして彼は立ち上がり、口を開いた。


「ヤツらより先に見つけろって事ですかぃ。分かりましたよ魔王様ぁ。」

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