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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
幻想の星編
103/206

冷気

 天井のライトが赤く光り、大きな音のブザーが鳴り始めた。


『侵入者発見、侵入者発見。直チニ排除セヨ。繰リ返ス。侵入者発見、侵入者発見。場所ハ地下ノ収容所。直チニ排除セヨ。』


 3人を見つめるロボットは、アームからアンドレイの腕を落とし、レンズを鋭く光らせた。レオ達は咄嗟に武器を手に取った。


「どうします!?」

「一気にここを突破するっ!!“ファルコンスラスト”っ!!」


 レオは剣を強く握り、刃を前に向けた途端に飛び出して、ロボットを貫いた。ロボットは火花を散らして動かなくなった。


「さすがレオ君っ。」

「いえ、ここからですっ!」


 3人が前を見ると、そこには無数の人型ロボットが列になって、こちらへ向かって来ていた。手にはライフルのような物が握られている。


「排除スル。排除スル。」

「クレアさんっ!攻撃速度と走力アップをお願いしますっ!!」

「う、うんっ。“ビバーチェ”!」


 クレアがギターを弾くと、レオの腕と脚に音符が飛んだ。レオはロボットから剣を引き抜き、それを踏み台にして、列に飛び込んだ。


「“連続斬り”っ!!はああぁぁぁっ!!」


 レオは剣を振り回しながら、飛び散る残骸の中を走った。ロボット達もそれに対抗して、無数の弾丸を放つが、レオは素早い剣捌きで弾いていく。


「一斉射撃。」


 ロボット達は同時に引き金を引いた。数発の弾丸がレオの剣を抜けて、後ろのネネカとクレアに向かって飛んだ。


「まずいっ!!」

「“ガードファントム”っ!」


 ネネカは前方に透明な防御壁を出し、弾丸を防いだ。


「ネネカちゃんすご〜いっ。」

「えっ、あっ、いえっ…」

「“回転斬り”っ!!」


 レオは跳び、体勢を横にして、剣とともに回転した。剣と弾丸は火花を散らし、残骸を飛び散らせた。


「はぁぁぁぁぁっはあああっ!!」


 レオが回転を止め、剣を振り下ろすと、先程までの銃声は止んだ。静かな一本の道に、天井の赤いライトが光っている。レオは目の前のドアノブを握り、捻り、鉄のドアを開けた。


「さぁ早くっ!」

「はっ、はいっ!」


 3人は収容所を出て階段を上がり、一階に戻った。しかし、


「マリスさんっ!!」


 マリスを囲むように、多くの人型ロボットが立っていた。先程と同様に、手にはライフルが握られている。


「どうしよっ、このままじゃあ…」


 するとマリスは右腕を高く挙げて雷を纏わせ、勢いよく床に手をつけた。


「……“スタン・ビート”………」


 マリスを中心に床に振動が走り、ロボット達は動かなくなった。


「…ハ……イ…ジョ………ス…………ゥ……」


「……なっ…何が…………っ、早く鍵をっ!」


 レオはそう言ってマリスの方へ走り、彼女の背後のドアの鍵を開けた。


「…っ、開いた。行こうっ!!」

「はいっ!」

「うんっ、ほらマリスちゃんも行くよ。」


 4人は部屋を出て、鉄のドアを閉め、内側から鍵を掛けた。


「ふぅっ……一体何なんだここは……」

「レオさん、部屋が左右に4つあります。」


 ネネカの声でレオは振り返り、前を見た。今立っているのはどうやら廊下のようだ。薄暗く光る一本の蛍光灯が、左右の4つの鉄のドアを照らす。奥には螺旋階段があった。手始めに鉄のドアを開けることにした。しかし、


「……だめだ……開かない。そっちは?」

「ダメです。鍵が掛かってます。」

「ねぇ、奥に何か見えない…?」


 クレアがドアについた小さなガラス窓を覗いていた。薄暗い蛍光灯のおかげで、部屋の中が少しだけ見える。


「……何が見えます……?」

「え〜っとねぇ………薬…品?…あっ、奥にベッドみたいなものが1つあるよ。ただ、その横に道具が並んでる……。何だろう………。」


 レオはクレアに部屋を覗かせてもらう事にした。ドアの近くにクレアの優しい匂いが残る。


「………これ……手術室みたいですね………」

「じゃあ、この施設は病院……でも、地下のは……」


 ますます謎が深まる。何も知らない自分達が、今どのような場所に置かれているのか、深く考えてみても、寒さによって思考が凍ってしまう。


「地下の牢屋、拷問道具、ロボット兵、手術室……」


 レオがそう口を開いていると、前の階段から何かが降りて来る音がした。


「っ、何か来るっ。」


 3人は武器を構えて、床を踏み締めた。しかし、足音にしては音が小さく、肌を叩くような音だ。そして4人の目に飛び込んできたのは、信じ難いものだった。


「きゃあっ!!」

「っ!!腕っ!?」


 数本の腕が床を這うようにして、こちらに寄って来る。レオ達の体中の毛穴が開き、背筋が凍った。


「何よ…これ……」

「こっちに来ますっ!!」


 その時、数本の腕が高く跳ね、4人に飛びついて来た。その手の平には、虫の口の様なものがあった。


「シャァァァァァァッ!!」

「っ!!“連続斬り”っ!!」


 レオは飛び掛かってきた腕を斬り刻んだ。床に落ちた肉片からは、緑色の血が流れ出ている。


「……魔物にしては奇妙だ……形が特徴的すぎる……」

「………この先に…何があるの……」


 レオとクレアは口から白い息を吐いた。振り返ると、無表情で立つマリスの横で、ネネカは脚を震わせていた。レオはそんなネネカに口を開いた。


「……大丈夫…?…無理しなくていいからね。」

「…だ……大丈夫……です。い…行きましょう……」


 ネネカの弱々しい声を聞いたレオとクレアは、優しい表情で頷き、その後4人で螺旋階段を上がった。2周ほどすると、4人は広い部屋の前に立った。


「こ………これ…は………」

「…ほんと……何なの……ここ……」


 その光景に、うまく言葉も出せなかった。薄暗い部屋には、緑色に光る液体の入った大きなカプセルが10列ほど奥まで並んでおり、その中には臓器の様な物や、魔物の体の一部などが2つずつ入っていた。4人はそれらの間を静かに歩いた。


「ねぇ、カプセルひとつひとつに何か書いてあるよ。」

「…本当だ……エンペラーグリズリー……人間……。アイスドレス……人間……。髑髏蜘蛛……ライトニング…老………。どうゆう事だ………?」


 レオ達はカプセルの文字に首を傾げた。カプセルの中の物が、蛍光色に光る液体の中を漂う。これらを見ても、この施設が何なのか見当もつかない。


「……それにしても静かですね……」


 ネネカの口からは白い息が出なかった。どうやらこの部屋は常温らしい。そして、多くのカプセルを見て歩いていると、気がついた時には部屋の奥の螺旋階段の前に立っていた。階段周りの壁はガラス張りで、外の吹雪がよく見える。しかし、外はどこを見ても真っ白だ。


「行こう。」


 レオの言葉で、彼らは螺旋階段を上った。2周ほどすると、目の前に大きな鉄のドアが現れた。


「開けるよ。」


 レオがドアノブに手を掛けると、マリスは息を引く様に吸った。同時に他の3人も、どこからか物凄い圧を感じ取った。レオはドアノブを握り、捻り、開いた。



 広い部屋だ。壁には本棚が並び、奥には紙や試験管などが置かれた長い机。背もたれが長い革の椅子。


 椅子が回転した。青く長い髪が、艶とともに揺れる。


「おや……よくここまで来れたわね。坊や達……」


 白衣を着た女が、コーヒーカップを持ち、冷静な顔で、眼鏡越しにこちらを見た。耳が尖っている。レオは口を開いた。


「あなたは…誰なんです…?ここはっ……?」


 女は上品にくすりと笑った。


「ふふ。知りたい…?」


 すると、マリスが口を開いて、レオより前に出て言った。




「お母さん……」

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