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∞9神様の嫌がらせ9∞

 オレには、名前など存在しなかった。存在する必要がなかったからだ。予定ではオレは一、二年であの世へと行くはずだったんだ。それが、こんな長旅までしてしまったよ。特に幸せを掴めなかった人生。オレは、アイツに伝えたい言葉があった。



 ――ごめんよ、見捨てて――



 いくら謝っても許してくれようがない言葉。今さら謝ってもどうしようもない言葉。果たしてオレはあの世でアイツと出会うことができるのか。出会ったら、とことん謝罪してやる。なんでもやってやる。オレの歩んできた人生を正直に伝えてやる。会えたらの……話だけどな。



「……」



 気がついたときには、オレは真っ白な何もないような空間に居た。いや、何もないとは言い難い。どうやらオレは仰向けに寝そべっているようで、オレから見て右下には白く長い絹が垂れ下がっていた。壁というべき空間の端も白の統一で、どうやらオレは白のベッドらしきものに寝かされているらしい。果たしてここがあの世の世界なのか? オレはずっとお花畑なんじゃないかと想像していたのだが、どうやら勘違いのようだ。


 オレは、なんとなく左手に違和感を覚えたのでゆっくりと上げて見る。父親に切られたせいか、手のひらの周りには多少の赤みがはみ出ている包帯が巻かれていた。

 どうやら優しいあの世の住人とやらもいるようだ。つまりオレが来たのは天国ということなのか? 左手の傷を見て内心忸怩じくじたるものがあるが、世の優しさに今は触れておこう。そう思って右手で抱えた左手を胸のあたりに持ってきた刹那、オレは一目の疑問を抱いた。


 ドクン、ドクンと……心臓が、動いているのだ。


 実際それについてどうこうということはないが、死者も心臓は動くものなのか? 死んだら動かないんじゃないのか? オレはふと、半信半疑に両手を使って起き上がり、しっかりと辺りを見た。


 上から下に長く伸びたシワが沢山入った絹のカーテン。白の壁には少々のキズ跡があり、全てが白一色ではなかった。


 おかしい……ここは本当にあの世なのか? どうにも信じられない。オレは疑心暗鬼になった。まさか、まさかそんなことあるまいと、そっと伸ばした右手でカーテンを開けた。


「……!?」


 街、緑、海。


 そこに広がる光景は、オレの想像していたものとはだいぶ違っていた。いや違ってはいるが大分は合っている。オレはあの町の病院にでもいるとばかり思っていた。しかし、どうやらここは町の病院ではないみたいだ。見たことのない、遠くの海が見える知らない街にいるみたいなんだ。


 その光景を目にしながら、またしてもオレは思った。


 オレは、生きているんだ……。


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