∞死8―決意決―8死∞
「…………」
暗がりの夜。雲のせいで半分月が隠れた今、オレは自身の目元から涙が出ていないのを認識するなり立ち上がる。
もう、もう、いいんだよ。なに、泣いてんだよ……ホントにもういいじゃねぇか。十分生きたじゃねぇか。幸せだったと思って、楽に消えちまおう。
オレは公園の隅を全て探るより前に中から出て、今度は公園外に刃物のようなものが落ちたりしていないか、探し始める。
公園の入口付近、木の両端、家の隅、車庫の中。
植木鉢などはあるものの、果たして自分で落として死ねるものか……。刃物じゃないと、度胸のないオレには死ねねぇわな。このあともいくら探すが、そんなものは見当たらなかった。
神様は意地悪だ。オレが死にたくもないときにばかり死のアイテムをふんだんにオレへ向かって差し出してくるくせに、今には何も差し出してくれねぇのかよ。
冬の寒さなどもう知らぬと言った雰囲気で、しばし公園外を抜け出して少し距離のある街路を歩いていると、すぐ近くで大きなエンジン音が聴こえてきた。
「……?」
音のなる右方向を見ると、真っ直ぐ百メートル程離れた道路で、赤信号によって動きを止めている、いかにも豪華そうな黒の車があった。
細なげぇ車だな。きっと令嬢や執事が中にいるんだろうな。あれなら、引かれただけであの世行きかもしれねぇな。
無意識的に、オレの足が、道路側へと動き出す。
信号が、赤から青に変わる。
オレは今、何をやっているんだろう? というような、そんな感情は一切としてオレの頭の中には存在していなかった。ただ一つ。オレの頭の中の感情は、たった一つに絞られていたんだ。
あはは、今日はとっても幸せだ。今までにない幸せかもしれない。
オレは笑った。道路に足を踏み入れながら……。
細長い、黒の車がオレのもとへスピードを変えることなく突き進んでくる。
「今日は、サイコーに幸せだぁぁぁ!」
自殺を満面の笑みを浮かべて行う奴を見たことがあるだろうか?
つまらない人生を楽しいと感化できる奴を見たことがあるだろうか?
クローンという存在を……目にしたことがあるだろうか……?
車のクラクションが鳴り響く中、オレは無残に道路を飛び散った。