∞33セパショ33∞
食堂を出てすぐのところで、オレは満腹感を越え、気持ち悪さにもがいていた。もがいていたと言っても、別に苦しむように動き回っているわけではない。ただ、オレは長い廊下の端に位置する赤い色をした椅子に腰を下ろして、下を向いたまま動かないでいるのだ。
「えーと……これからどうする、リウ?」
オレの目線からではほっそりとした脚しか見えないが、肌色からしてリウとシャマ、どちらがオレの右側にいるのかが確認できる。どうやら右がリウで、左がシャマのようだ。
気難しそうにシャマに問いかけられたリウは、少しの間のあと、脚を折り曲げてスカートの中ギリギリ見えない程度に脚を閉じ、疲れ果てているオレにも顔が見える角度で見つめてきた。
「……なんだ?」
目を細めながら顔を数度上げるオレ。
「次、どこか行きたい?」
しゃがみこみながら、顔を斜め四十五度傾け、オレに聞いてくる。
前にも同じことを言ったと思うが、オレに聞くのは宜しい。しかし、この中でセントパル塔の中身を一番知らないオレに、どんなところがあるのかを教えずに訊くのはいささか問題があると思う。だが、せっかくオレに聞いているというのだ。今まで行った場所でもいいから、もう少しこの二人と過ごそうじゃないか。
オレは、椅子に座りながら今まで行った場所を思い出す。
風呂、勉強室、食堂、自室、そして、セントパル塔の頂上である鐘への道の階段。
思い出した途端に、一段しか登ることができなかった鐘への階段をもう一度登りたいとも思ったのだが、シャマがいる以上、また競争になりかねないと思い、その発想は控えた。
「行きたい場所、ない?」
オレの顔に数センチ自身の顔を近づけるリウ。オレに頼っているのかは知らないが、一応聞いてくれていることに感謝したい。だがしかし、生憎だがオレでは次なる目標地点を考え出すことはできない。
オレが軽く首を振ると、リウは小さなため息をついて立ち上がった。その時一瞬スカートの中が見えた気がするが、気のせいだろう。気にしない。
そのあとしばらくリウが小さくも悩ましい声を上げて考えていると、突然シャマが手を叩き、驚いたオレが顔を上げると同時に、口を開いてリウに提案した。
「じゃあさ、『セパショ』にいかない? あそこは品揃えもいいし、ライの胃袋にも良いものがあるかもしれないわよ?」
胃袋に良い? その言葉を聞いて、オレは即座に立ち上がった。
セパショに行くと、胃袋に良いものがあるのか。セパショに……って、セパショってなんだろうか?
「すまん、セパショってなんなんだ?」
赤椅子から立ち上がった後、シャマに疑問を問いかけるオレ。すると、シャマではなくオレが急に立ち上ったのを見て驚いていたリウが代わりに答え始めた。
「セパショというのは、『セントパルショップ』の略。つまり、スーパーのようなものなの」
「そうね、品揃えも豊富で、もしかしたら胃袋を安定させる薬とかも売ってるかもしれないわ。行ってみて損はないわよ?」
リウに続いてシャマも口を開いていた。
セパショ、スーパーか。確かにそこでなら胃薬の一つや二つ売っているかもしれない。シャマの言うとおり、行って損はないだろう。
「おう、じゃあ早速だが行こうぜ? 飯を食いたくとも食えないなんていう苦痛、これ以上嫌だからな」
リウとシャマに親指を立てるオレ。
「うん、そうしよ」
「決まりね、それじゃあ行くわよ!」
二人の了承の声を聞いたあと、オレは上機嫌になりながらセパショの場所もわからず先頭をスキップしながら掛けていった。
途中でシャマの「そっちじゃないから!」という大きな声が耳に入ってきたが、気のせいだろうと思いそのまま突っ走った。




