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∞27馬鹿な島27∞

 大きな、数百と輝いた丸い電球。大きな窓からは少々暖かな雰囲気が出ているが、カーテンで外の景色を遮断していた。席に座っている人は満員ではないが、多数の人が勉学に励んでいる。そして一番前の席には、電子黒板を見たり下を見たりと忙しそうなリウの姿が見てとれ、まるで本当に学校に来ている気分を味わっていた。


 いや、既にここはもう本当の学校なんだ。オレは、学校へと通えるようになったんだよ。嬉しみの一環、よくわからない悲しみをも覚えていると、よくあるチャイム音が流れると同時に、大きな電子黒板の前に年寄りがマイクを持って停止した。


『それでは、今日の授業はこれまで。私は週に一度のペースでしか現れないので、勉学に勤しみたいものは、気軽にここへ来て勉学に励むように。それでは、解散!』


 年寄りの合図で、席に座っていた人が全員立ち上がったので、寸分遅れてオレも立ち上がった。と思ったら、みんな疲れたのか清々しい気分なのか、個人個人席から離れて勉強室から姿を消していった。


「そんじゃ、オレも行こうかね」


 席から足を出して帰ろうとすると、隣でシャマが死んだように頭を机上に貼り付けていたので、どうしようか迷った末、心配になり声を掛けてみた。


「……おいおい大丈夫か? 何かわからない問題でもあったのか?」


「そうね! 少なくとも全部わからなかったわ!」


 頭を机上に付けたまま、強い口調で言うシャマ。その言葉に、オレは……引いた。


 ぜ、全部わからなかったって、コイツはどんだけ馬鹿なんだ? 半分わからなかったとか、一問わからなかったとかならともかく、全部はないだろ全部は……。


 オレは後ろ頭を掻きながら、フォローのつもりで口を開いた。


「まあ、誰だってそんなことはある。これからも毎日勉学に励めば、問題もわかるようになるんじゃねぇか?」


 なんの根拠もないが、言うだけマシだ。オレがそう言うと、うつ伏せだったシャマが急に立ち上がり、オレの空いている右手をガッツリと両手で掴み、涙を流すような表情をしつつ口を開き始めた。


「いいわね! そのフォロー、あたしを元気づけてくれたのね。ありがとう、ライ」


 そう言うシャマに、オレは「そうか」とだけ答えて、机下から飛び出している丸椅子を足で中に押し込んだ。熱血はやれやれである。


「早速お友達が出来たの?」


 シャマの熱血に呆れていると、突然階段を上ってきたリウに声をかけられ、オレは思わず「おう」と言ってしまった。友達がどこからかなんてわからないオレが、シャマは友達だと認めてもいいのだろうか? 仮にも今日の、一時間も立たない間に会ったばかりだというのに。


「そう……それは良かったね」


 ゆっくりとした口調で微笑むリウ。そんなリウを見ていると、シャマがリウの存在に気づいたのか、オレから両手を離していきなりリウに抱きつき始めた。


「リウ~、なんだか久しぶり~」


「ちょっと、昨日も会ったでしょ?」


「じゃあ、昨日ぶり~!」


 オレといた時とは打って変わった表情のシャマ。どうやらリウとは仲が良いようだ。半年も前からここに居るんだしな。昨日も会っていたところを聞くに、この二人は仲が良いのだろう。


 階段の途中で、リウが抱きつくシャマを離そうとするが、生憎シャマの方が力強く、自分から離すことができないでいた。


「ねえ、そろそろ退いてくれる? 私、今から彼を案内しなくちゃいけないの」


 苦しそうに、しかし小さな子供を見るような微笑ましい目でシャマを見るリウがオレを指差すので、シャマはオレを見て口を開いた。


「勉強のあとはどこへ行く予定なのかしら?」


 リウの時とは違いとげのある口調に一瞬怯えつつも、腕を組んで考えるオレ。勉強が終わったあとか……そういえば考えていなかった。というか、そもそもオレは何一つ考えていない。オレの行動なんて、リウが定めているものと同様なんだ。だからオレは、リウに言われた通りに行動する。今はその方が健全だろうからな。


 そう思ってリウの方を振り向くと、抱きつかれたまま藻掻くのを諦め、オレに向かって口を開いた。


「……まだお昼まで時間もあるし、ちょっと部屋で休んでてくれない?」


 シャマの対処に忙しいのか、あまりオレに関わる暇はないようだな。オレはリウに「分かった」とだけ言って、もうオレたち以外人が居なくなった勉強室をあとにした。


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