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∞22殺意の前兆22∞

 昨夜の雨が原因だろうか? 沢山積もっていたはずの雪が、嘘のように減り微かしか残っていなかった。


「……そろそろ終わったか?」


 朝方の、人気のない公園で私は四人の大男を連れて奴の居たはずの滑り台をくまなく検知させていた。検知といっても、ただ指紋を探したりしているわけではない。今後この場に奴が来ると、音を鳴らして我々に気づかせるように、クローンセンサーとクローン警報器を設置しているのだ。クローンセンサーというのは、文字通りクローンがこの場に現れたら察知するといったアイテムで、普通に生まれ出た人間に反応することはない。同様にクローン警報器というのは、クローンセンサーが反応することによって私たちの耳に音が鳴り響くような仕組みになっているのだ。このセンサーと警報器はこの町の闇市で仕入れたもので、このような機械を作ることのできる者は素晴らしと思う。


 昨夜、奴は私を殴ったあと、そそくさとこの場を去っていった。もうこの場には来ないとも予想がつくが、念の為というものもある。


「設置できました! これで正常に動くと思います」


 一人の大男が私に向かって言う。スキンヘッドの威圧的な頭をした人間だ。オレは四人のスキンヘッドを連れて行動している。なあに、こんな奴ら、金さえあればいつでも呼び込める。至極私の言うとおりに動いてくれるコイツらは、こうやって私が考えた対策を言葉通りに準備してくれるのだ。


「そうか、ありがとう。手間をかけさせたな、少し休んでもいいぞ」


 私の言葉に、警報器を付け終わるのに疲れきったスキンヘッドどもが、小さくうなり声を上げながらその場に座り込んだ。


 まったく、これくらいで疲れるとは……スキンヘッドも所詮人間だ。


 私が表情に出さず呆れていると――


「高田の親方! 耳寄りな情報です」


 残り一人の大男が、公園の入口から私に向かって駆けてきた。


 そう、スキンヘッドは四人ではなく五人なのだ。危うく一人を数えていないのかと思った。


「なんだ? いいものでも見つかったのか?」


 私の前で荒い息を立てているスキンヘッドに言うと、スキンヘッドは一度息を整え、ポケットから何やら写真のようなものを取り出した。


「これです」


 写真を手渡され、深緑のボロボロになったコートの袖を曲げながら、その映る光景を見て、私は驚愕した。


「…………血?」


 その写真には、血が飛び散った道路が映し出されていた。何の冗談か、出血が半端じゃない。こんな怪我、車に引かれた程度じゃ起こすことも不可能だぞ?


「しかし、この血は誰のものなんだ? そこらへん、検知したんだろうな?」


 動揺しているのか、私は目の前にいるスキンヘッドに慌ただしく声を荒らげた。


「はい、検知しました。親方の探している者の血だと……」


 その言葉に、私は一瞬驚いた。悲しみにではない。憎しみにだ。


 私は写真を強く握り締め、嬉しさなし、憎悪の感情でいっぱいになる。アイツが、自殺? 自ら車に引かれただと? そんなはずはない。今まで苦しい目に遭ってきた奴が、こんな簡単に死を決するはずがないのだ。


「ちっ!」


 スキンヘッドの持ってきた写真を力いっぱい握りつぶし、公園に位置する半分浮き出たタイヤに腰を下ろす。


 いや、アイツは車に引かれた程度じゃ死なない。死ぬはずがない。今もどこかに怯えながら身を隠しているに違いない。そうでないと、こちらがやっていけないよ!


「もういい、この場を探ってもこれ以上は見つからない。他を渡るぞ!」


「「「「「はい!」」」」」


 タイヤから立ち上がり、声を上げていると、一人、元から立ち上がっているスキンヘッドに合わせるように、残り四人も立ち上がった。


 さあ、今は何をしているのかはわからんが、このまま逃げられると思うなよ? この世にいるにせよいないにせよ、私はお前を……殺しに行く。


 空を睨み、私はそう思った。


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