∞2小さき命の消失2∞
数年経ったある日、不思議な成長の助けとなる薬『成長保護基本薬No.krn』というものを使用された僕のクローンは、数年で僕の本年齢と同じ大きさまで成長していた。ここまで早く成長すれば、少年時代の思いでなんて空白の一行となってしまいそうだが、成長してくれたなら僕にとっては好都合だ。
僕は、この時を合図に不思議と体の力が抜け、医者の判断の元、病院内の集中治療室へと運ばれていった。
――手術。時が来たのか、僕の体は既に限界を知らされていた。しかし、ここで心臓を取り替えれば僕の命は助かり、リハビリのもと昔のような生活が楽しめるはずだ。そう、楽しめる。僕は期待を胸に膨らませながら麻酔を打たれ、過労しきった心臓と新たな心臓の取替を期待していたのだが……麻酔を打たれてから眠りにつくまで、僕の遺伝子を持ったクローンが現れることは一切としてなかった。いや、端的に言えばこの場に現れなかった。来なかったのだ。医師の慌てふためく姿を見るに、恐怖のあまり逃亡したのだ。
おそらくこの頃には既に、知らぬ間に物心がついていたのだろう。感情が芽生えていたのだろう。死ぬという辛さを理解できていたのだろう。だから、この場には来なかった。医師たちから隠れた。捕まる危険性もあると思い、遠くへ逃げたのだ。僕を見捨てて……。
僕は食いしばることができない歯を頭の中で食いしばりながら、医師の止む終えまいという無造作な治療のもと、永遠の眠りについた。