表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/31

メリットとデメリット、そして必要とされること

 私はゆっくりと生徒会室に入っていく。

 もう、その教室には、私ともう一人、会長しかいない。

 黄昏色に染まる生徒会室で、物憂げに会長は、窓の縁に座って、外を眺めていた。

「会長、お疲れ様です」

 そう声をかけると、驚いた顔をしていたが。

「副会長か。副会長もお疲れ様。陸上部もかけもちだってのに、よくがんばるね」

「部活は好きではじめたことですし、それに、生徒会の仕事も嫌いではありませんから」

 そういうと、会長は嬉しそうに微笑んで。

「そういう人材が生徒会に入ってくれると嬉しいね」

「会長は……その、違うんですか?」

「え?」

 私は続ける。

「その、そんな雰囲気を……感じたものですから」

 先ほどの物憂げな様子も重なって、思わず口ごもってしまう。

 私の様子に会長は苦笑を浮かべながら。

「そうだね。下心はあったよ。会長になったら今後について、箔がつきそうだとか、今後の進学や就職に有利そうだとかね」

 窓の縁から立ち上がり、会長は私の所にやってきた。

「いつも考えちゃうんだよ。メリットとデメリットを考えて、有利な方を選択する。いつもそうやって行動してきたんだ。そしたら、ほら、会長様になっちゃったよ」

 くすっと笑う会長が、少し寂しげに見えたのは、気のせいだろうか?

「それに、ここにいないメンバーもそれを考えて、ここに来ないのかと考えると、腑に落ちる部分もあるんじゃないかな」

「そういうものなんでしょうか?」

 メリットとデメリットを常に考え、行動する。

 それの何処が悪いんだろう?

 それに、会長がここまできた歩みが決して悪いものではないと思う。

 だって、そうでないと、ここまできたことが無駄になってしまうんじゃないかって……。

「会長は凄いです。メンバーが一人、また一人と減っていく中で、ここまで生徒会を支えてくれたじゃないですか。私、会長がいなかったら……」

 続けようとした言葉を、会長の指が邪魔をした。

「それ以上は言わないで」

「会長?」

 首を傾げる私に会長は。

「それ、他の子にも言われたよ。俺がいなくなったら、凄く困るって。でも、優秀な人間は他にもいる。現にこの部屋にもね」

「えっ!?」

 そ、それって、私のこと!?

「わ、私はただ、与えられた役割を精一杯果たしているだけですよ?」

「それが出来ない人間も多いよ?」

「そ、それでもっ!!」

 会長の寂しそうな笑みを変えたいと思って、更に言葉を重ねる。

「やっぱり、会長はここにいなくてはならない人です。もし、会長が何も出来ない人であっても、やっぱり居るだけで安心すると思うんです。それに、私もいますよ! 全部背負い込むなんて、必要ないんです。一緒にがんばっていきましょうっ!!」

 そう力説すると。

「君のような子が、生徒会に居てくれて、本当に嬉しいよ」

 ぽんと優しく私の頭に手を置くと。

「ありがとう、柊」

 先ほどの寂しそうな笑みが、優しい笑みに変わったのを見て、私も嬉しそうに微笑んだ。


 これが会長と会った、最後の日のことでした。

 ……えっと、あれ!? どういうことですかっ!?

そして、誰もいなくなった(副会長以外)。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ