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断れないジレンマ

 徐々に機能停止していく生徒会。

 そんな中、私と会長と、そしてもう一人。


「あ、ハルちゃ……」

 庶務を担ってくれているハルちゃんの姿を見つけ、私は声をかけようとしました。

 今はもう、生徒会は3人でしか回っていません。

 その分、与えられていく仕事が増えていくばかりです。

 そう、この日もハルちゃんと今日の業務について、確認するためにハルちゃんを捕まえようとしていたのです。

 ですが……声をかけられる状況ではありませんでした。


「ハルちゃん、これ、職員室に持って行ってくれる? 山崎先生のトコだから」

「ハルちゃん、職員室に行くの? だったら、このプリント、担任に渡してきてくれない?」

「じゃあ、帰りにジュースお願い! 何でも良いからさ」

 なんていうか、言いたい放題です。

 当のハルちゃんはというと。

「えっと、そんなにいっぱい言われても困っちゃうよ。順番に言ってくれる?」

 困りながらも、全部をこなすつもりのようです。

 って、おいおい、全部やるの、これ!?

「ちょっと!! ハルちゃんは、生徒会なんだから、そんな暇ないのっ!!」

 私は思わず、ハルちゃんの前に出て、そう一蹴すると、クラスのみんなは嫌そうにさっと去っていきました。

 その隙にハルちゃんを引っ張って、そのまま生徒会室へと向かいます。

「もう、ハルちゃん、たまにはダメだっていうことも大事だよ?」

「んー、でもやったら皆が喜んでくれるから、つい」

 ついで引き受けないでください。

 思わず突っ込みしちゃいました。

「けど、そんなにたくさん引き受けたら、ハルちゃん、体が足りなくなっちゃうよ?」

「体力だけは自信あるから、大丈夫」

 ふふんと、胸を打って、にっこりとハルちゃんは言います。

 そういえば、ハルちゃんの家が何でも屋をやっていて、その配達とかで鍛えられてるとか言ってたっけ。だから、何でも引き受けちゃうのかな?

「たまには、ダメだって言ってみたらは?」

 ハルちゃんの持つ資料と私の資料を交換しながら、私は尋ねました。

「んー、でもなんだか断れないんだよね。全部ボクができることだしね。できるんなら、やっぱりやってあげた方がいいかなって。皆も喜んでくれるし」

 皆も喜ぶって……。

「けど、そんなの言ってくれたの、柊さんで2人目だよ」

「え?」

「ありがと、ボクのこと心配してくれたんでしょ?」

 にこっと相変わらずの、人懐っこい笑みでハルちゃんは言います。

「うん、まあ……そうなんだけど……」

「じゃあ、ちょっとだけ、断ってみようかな」

「うん、忙しいときは断っちゃっていいと思うよ!」

「だね」

 こうして、打ち合わせを終えた私達は、そのまま別れたのです。


 これがハルちゃんと会う、最後の日でした。

今回はそんなに甘くありませんでした。

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