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私を抱いてくださいっ!!

 ど、どうも、こんにちは。

 柊沙奈です。

 えっと、ついさっき、自動販売機のそばで、その、凄いことを教えてもらいました。


 えっとその、先生に抱いてもらったら、強くなれるそうです!!


 って、それって、どういうことですかっ!!

 どうして、そんなことになっちゃってるんですかっ!!


 そりゃまあ、先生、むっちゃ格好いいし、紳士だし。

 それに、抱いてくれたら嬉しいかなーとかも思うけど、それには順序というものがあるってことでっ!!


 ででで、でもっ!!

 私は美柚ちゃんのように、凄くない。

 なんとなく、それはわかるよ、私にも。

 だから、先生に迷惑かけないよう、その……だだ、抱いて……ごほんごほん。

 というわけで、今、私は自分の部屋にいます。

 で、先生をメールで呼んでみました。

 たぶん、もう少ししたら来るんじゃないかな?

 ううううう、すごく、その、すごく緊張してきた……。


 こういうのって、本当は恋人になって、そして、婚約者になって……で、結婚してから、初夜を迎えるもの……だよね?

 やっぱり、アレなのかな?

 痛いのかな?

 いや、それよりも、その、あんまりそういうの見てないから、どうやればいいのかわからないし……。

 そしたら、先生、幻滅するかな?

 いや、それよりも、先生の裸って凄いのかな?


 ……って、何考えてんの、私っ!!

 いやそれよりも、どうやって、切り出そう……。


 なんて考えてたら。

 ぴんぽーん♪

 インターホンが鳴りました。

「ははは、はいっ!!」

 すぐさま出てみると。

「こんばんは、沙奈。大切な用があるって聞いたけど」

「ど、どうぞ、入ってください」

「そう簡単に男性を部屋に入れちゃ駄目だよ?」

 とかいいながら、先生は靴を脱いで部屋に入ってきます。

「その、先生は私の担任だから、その、いいんですっ」

「じゃあ、それ以外の男性は、すぐさま上げないこと。できるだけ、チェーンを使うようにね」

「は、はい……えっと、そちらに座ってください。あの、麦茶でいいですか?」

「沙奈が入れてくれるのなら、どんなのでもいいよ。っと、失礼します」

 私が指し示した座布団にすとんと座って、先生はにこにこと待っていてくれている。

「す、すぐ持ってきますっ」

 うう、緊張してきた。手が震えて、零れないようにするのが大変です、ええ。

「ど、どうぞ……」

「ありがとう」

 さっそく先生は私のもってきた麦茶を飲んで。

「で、用事って何かな?」

 ききき、キターっ!!

 いや、呼んだのは私なんだから、うん、概ね私のせいなんだけどね。

「えっと、その……えっと」

 ぎゅっと手を握って、俯いたまま、顔を真っ赤にさせて、覚悟を決めて言いました。


「私を、そのっ!! だだだ、抱いて、くださいっ!!」


 ………。

 ……………。

「いいよ」

 長い沈黙の後、先生は静かにそう告げました。

 って、えええ? いいのっ!?

「でも沙奈、どうして、抱いて欲しいの?」

「そ、それはその……」

「美柚から、聞いたの?」

 って、なんでそれ、知ってるんですかっ!?

 思わず、こくんと頷きました。

 すると、先生は今度はふかーいため息を零して。

「沙奈」

 えっと、ちょっと目が据わってるように見えるのは気のせいですか?

「何ていわれたか知らないけど、僕が抱いて何も起きなかったらどうするの?」

「えっ……」

「だって、抱いて済む話じゃないよね? これ」

「えっと……その……」

「それに君を抱くというのは、様々な責任がかかってくる。そのことも考えていた?」

「それは、その……」

「その場の雰囲気で決めるな」

 冷たくそういわれて、私は涙が止まらなくなっちゃいました。

「だ、だって……だって……」

 ぐずぐずになりながら、答えます。

「美柚ちゃんは、全部知ってて戦ってるし、先生も会長も知ってるっぽいし、私だけ置いてけぼりで……それに私、弱くて……だから、だから……」

「だから、そんなことを言っちゃった?」

「んっ……」

 ぽろぽろ零す涙を、先生は優しく、持っていたハンカチで拭ってくれました。

「そんなことよりも、もっと確実でやれること、あるでしょ?」

「……シミュレーションで練習、するとか?」

「そう。それに、沙奈はついさっき、いろいろ知ったばかりなんだから、差があるのは仕方ない。だけど、その差を縮めることはできるはずだよ。これからがんばればいいんだから。そのために、僕はここにいる」

 また、止まりかけた涙が溢れてくる。

「わかった、先生……私、がんばるよ」

「うん、その意気だ」


 こうして、私は翌日から、ばんばんシミュレーションをこなす事になったのです。

そんな展開にはしませんよ。

しませんったら。………………たぶん。

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