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11歳-6-

 狙い通り、ギガースは私を排除しようと菜の花畑まで追ってくる。


 ギガースの攻撃を避けながら、あらためて剣を持った自分をアナライズ。要点を絞って。


=============

・右手装備 コカルト樹の木剣


・物理攻撃力 73

・物理防御力 44

・魔法攻撃力 86

・魔法防御力 60

=============


 確かに伸びてはいるけど……、ギガースには遠く及ばない。


 ギガースは技術が低いから、回避自体は簡単だ。ショコラとは比べものにならない。

 が、持久の差で先に疲れるのは私だろう。どこかで攻撃に出ないと、このままあの剣で叩き潰されるだけ……


 ……なん、だけど……


 ――HP6000、防御力900を……果たしてどうやって削りきればいいのか……


 魔力剣は遠距離に投げられる分、攻撃力が低い。

 このステータス差では、当たっても大してダメージにならないだろう。


 となると、活路はエンチャントしかない。

 アナライズを視界の端に表示させたまま、エンチャントを掛けた。


=============

・右手装備 コカルト樹の木剣+1


・物理攻撃力 167

・物理防御力 44

・魔法攻撃力 179

・魔法防御力 60

=============


 もう一回!


=============

・右手装備 コカルト樹の木剣+2


・物理攻撃力 270

・物理防御力 44

・魔法攻撃力 279

・魔法防御力 60

=============


 ――一回あたり、だいたい100ずつアップみたい。

 ということは九回重ねがけして、やっとギガースの防御力と同等。


 そこから、さらに6000のHPを削る必要がある。


 ――考えてただけで目眩がしそう。

 二重でさえ数分の戦いで負荷が凄いのに、九重エンチャントしたまま長期戦なんて無謀でしかない。


(せめて、もっと魔力神経が成長してからだったら……)

 なんて、無い物ねだりしててもしょうがない。


 引き続きギガースの攻撃を避けながらエンチャント。

 三重、四重、五重、六重……


 七重掛けた瞬間、突き刺すような頭痛がした。視界が白くなる。


 ――ヤバッ!


 直前のギガースの動きを頼りに木剣で防御……

 できたけれど、まるで大砲で撃ち抜かれたような衝撃。


 一瞬、意識が飛ぶ。


 意識を取り戻した時は、宙に浮いていた。


 受け身も取れずに菜の花畑に落ちる。そのまま地面を転がった。四回ほど転がったところでやっと止まる。


 平衡感覚はぐちゃぐちゃで、背中を強打したせいで上手く息ができない。

 なんとか視界が戻って来た頃、私に剣を突き立てようとするギガースの姿が見えた。


「くっ!」

 死ぬ気で腕の補助魔法を全開! 腕の力だけでなんとか横に転がって回避する。


 ギガースの剣が地面に突き刺さった。菜の花と一緒に私の体が吹き飛ばされる。

 今度はなんとか空中で姿勢を整えて、両足で着地。


=============

・右手装備 コカルト樹の木剣+3

=============


 視界の端で、そんな絶望的な数字が見えた。

 ――エンチャント四回分が、たった一撃防御しただけで……


 けれど、視界はモヤが掛かったようにボンヤリだし、頭痛は元気に私の脳みそをズキズキといじめている。


 ギガースが剣を抜いて、こちらに大股で歩き出した。


(これ、勝てないなあ……)

 一瞬脳裏をよぎる、絶望。


 ――全くさ。11歳の女の子にさせていい苦労じゃないでしょ、ホント。

 中身はプラス十四歳だとしても。


「……でも、泣き言言っても、誰も助けてくれないもんね」

 創造神だって、死ななきゃ助けてくれなかったし。次はそんな助け望めない。


 私だけの話じゃない。

 私が殺されて、ギガースが野盗達の所に戻れば全滅だ。

 レナが上手く逃げ延びてなければ、前生と同じ未来が来るだけ。


「それだけは、許せない。絶対、許せないのよ……!」


 さあ、そろそろ年齢だの女の子だのって甘えは捨てよう。


 エンチャント。エンチャント。エンチャント。エンチャント……


 ――頭痛? 我慢しろ。

 ――目が見えない? レナがかすり傷でも負う方が重大だ。


 エンチャント。エンチャント。エンチャント。エンチャント……


 ――全身が焼けるように痛い? 名誉の痛みだよ。

 ――死ぬのが嫌? レナが野盗の慰み者になる方が100倍嫌だよ。


 エンチャント。エンチャント。エンチャント。エンチャント……


 ――魔力神経が壊れたって構わない。私の体が不随になっても勝てばオーケー。


 だから。


(『まだ子供だから負けました』なんて言い訳、誰かが許しても私が許さない!)


「━━━━━━━━━━━!」

 ギガースが襲いかかってくる。 


 ――体の痛みは、最早マヒしてきた。

 ――やればできるじゃん。これでまだまだエンチャント出来るね!


 エンチャント。エンチャント。エンチャント。エンチャント……


「貴方を殺して、レナを助ける。これは、私のワガママよ」


 そう言ったつもりだったけれど。

 もしかしたら、喋ることすらできない体になったことに気付いていないだけかもしれない。


 木剣を脇に構えて、向かってくるギガースに向けて踏み込む。



 咆哮と共に、渾身の力で斬り上げた――



=============

・右手装備 コカルト樹の木剣+71


・物理攻撃力 7270

・物理防御力 44

・魔法攻撃力 7498

・魔法防御力 60


・魔力神経強度 弱

・魔力神経負荷 1232%

=============





 ……のちにエルザから聞いた話では。

 月夜を切り裂くように、菜の花畑から天に向かって青白い魔力の稲妻が(ほとばし)ったという。

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おっふ、雷とかの魔剣で足止めして逃げるとかでなく無茶して真っ向からか
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