10歳-1-
お父様との話し合いから半年。
日々の勉強やレッスンに励み、レナと毎晩を共にし、朝晩剣を振っていると、あっという間に10歳になった。
貴族の子供は10歳になると鑑定魔法を受けさせられる。
理由は二つ。一つは王宮が成長度を知るため。もう一つは魔法習得の許可を下すためだ。
ということで10歳の誕生日の翌日。
屋敷に宮廷魔術師の方々がやってきた。
客間に両親と私、そして三人の宮廷魔術師。
今、私は一人の魔術師で机を挟んで正対している。
「うぬぬ……はあっ!」
宮廷魔術師のお兄さんが鑑定魔法を発動。
……すっごい時間をかけて、玉のような汗を流しながら。
アナライズはスキルだから発動も一瞬だしMPも消費しないので、なんだか申し訳なくなってきちゃう。
その後、お兄さんは震える手でペンを持ち、用紙に私のステータスを書き連ねていった。
「はぁ、はぁ、はぁ……。お待たせしました、こちらが、鑑定結果です……」
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【ルナリア・ゼー・トルスギット】
・持久 19
・膂力 10
・技術 18
・魔技 23
・魔力神経強度 弱
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やけに項目が少ない。
アナライズが最上級だから、お兄さんのはそれよりは下級の鑑定魔法みたいだ。
――そういえば前生でも鑑定魔法は高難度とされていた気もする。
去年見たときより技術と魔技がかなり低くなってる。
なんで下がってるか不思議だったけど……そういえばアナライズの概要に『創造神の加護によりMP・技術・魔技が上昇』と書いてあったっけ。
お兄さんの鑑定魔法では創造神の加護は見抜けないのかも?
――あとで自分でも見てみようっと。
「ほう! 技術18に魔技が23ですか。かなり優秀ですね。さすがトルスギット様、良い教育を施されているのでしょう」
別の偉そうな魔術師が父に笑いかけた。
「いえ、ひとえにルナリア本人の頑張りに因るものです」
「ご自慢の娘さんですね」
「ははは、それはもう」
一見笑顔だが『だから王太子に売り込んでこい』と語尾についていそうだ。
「魔力神経強度が弱になってますので、初級魔法までなら習得いただけます。以後、魔法教育もよろしくお願いします。
もし教師の用意が無いようでしたらご相談ください」
「お心遣いありがとうございます。教師は当家の私兵から選びますので、ご心配なく」
『うちの娘、すで魔法使っちゃってるんだよなあ』とはおくびにも出さずお父様は答えてた。さすが公爵様、ポーカーフェイスは堂に入ってる。
偉そうな人が用紙を丁寧に丸めて、また別の人が用意した豪華な筒にしまう。
「それでは、この鑑定結果を以て陛下へご報告に上がります。本日はご協力ありがとうございました」
「「「ありがとうございました」」」
トルスギット家の三人は礼をし、去って行く彼らを見送った。
†
「お帰りなさいませ、ルナリア様」
自室に戻ると、エルザが出迎えてくれた。
「ただいま」
「テラスにお茶菓子をご用意しております。よろしければ」
「ありがとう、いただくわ」
テラスに出る。
綺麗な青空に、空気が美味しい。
椅子に座りながら、テーブルの上のクッキーを一つ取ってかじる。流石エルザのクッキー、サクサクでホロホロだ。
もぐもぐしながら席に着く。
エルザがティーカップにお茶を注ぐのを横目に、アナライズを自分にかけた。
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【ルナリア・ゼー・トルスギット】
・HP 41/41
・MP 1684/1684
・持久 19
・膂力 10
・技術 57
・魔技 82
・右手装備 なし
・左手装備 なし
・防具 貴族の服
・装飾1 貴族のブローチ
・装飾2 なし
・物理攻撃力 10
・物理防御力 28
・魔法攻撃力 31
・魔法防御力 44
・魔力神経強度 弱
・魔力神経負荷 0%
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――MPどうなってんのこれ……。もはやこんなにあっても使い道ないんじゃ?
魔法を習得していけば、いつか役に立つ日が来るのかな。
他は、技術と魔技が結構上がっている。
技術はここ一年の素振りの成果だろう。魔技は……特に何もしてないけど、体の成長+創造神の加護の影響かな。
そこでカップが置かれた。
「今日はなんのお茶?」
「デアルディリーの紅茶でございます。一応ミルクやシュガーのご用意もありますので」
一口飲む。
「うん、良い香り。ミルクも砂糖も下げて良いよ」
「かしこまりました」
再びステータスに意識を戻す。
――やはり、持久や膂力は心許ない。
まだ10歳だし、仕方ないと言えば仕方ないんだけど。
膂力は補助魔法でなんとかなるとしても、成人男性との接近戦はどうしても不安が残る。
(……ジョギングでも始めようかな。戦闘の持久力に繋がるか分かんないけど……)
やらないよりはいい……かもしれない。
――私たちが襲撃され、レナが攫われる日まで、あと一年少々。
残された日は多いようで少ない。私の体の成長を、野盗達は待ってくれないのだから。
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