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僕は断罪される公爵令嬢に恋をした ~彼女を救うためなら王太子だって敵に回す~  作者: ぱる子
第8章:騒乱のあとさき

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第22話 伯爵家と公爵家①

 夜会の熱狂がようやく落ち着いて、数日が経った。王太子を中心に進められた策略は完全に崩れ去り、セレナ・グランの嘘も白日の下に晒され、レティシア・アルヴァトロスが負っていた濡れ衣は大きく晴れた。その一方で、王家に対する不信と、セレナ自身の評判の悪化は避けられず、多くの貴族がこの事態の後始末に注目している。


 そんな中、フォルスター伯爵家でも騒動の余波が大きかった。夜会での一件を主導したかのように見られがちなクラウス・フォルスターが、伯爵家の次男とはいえ、王家を追い詰める形になったのは事実だ。


 フォルスター伯爵の名はハンス・フォルスター。穏健派として知られ、政治的にはなるべく波風を立てないという方針をとってきた人物だ。しかしながら息子の今回の行動は、彼の望む「平和的な社交」の枠を大きく逸脱している。


 伯爵家の広い書斎では、ハンスが細かい書類に目を通しながら渋い顔をしている。そこにクラウスが呼び出され、父子だけの対話が始まった。


「クラウス、お前が今回とった行動……正直、伯爵家の立場を危うくするかもしれないと、わたしはかなり心配していた。だが、結果としては、大きな(わざわい)を招くことなく、あの公爵令嬢の名誉を取り戻すのに成功したのだな」


 ハンスの言葉はあくまでも穏やかだが、そこには複雑な感情がにじんでいる。王家を相手に公に対峙するなど普通では考えられないことであり、最悪の場合フォルスター伯爵家が政治的に追い詰められていてもおかしくなかったのだ。


 クラウスは父の意図を察しながら、深く頭を下げる。


「父上に多大な心配をかけたことは承知しています。わたしが身勝手に動いたと受け取られても仕方ありません。しかし、あの場でレティシアを放置していれば、後悔してもしきれなかったと思います」


 ハンスはしばし沈黙し、息子の表情をじっと見つめる。王都の夜会で伯爵家の次男が王太子を公然と批判することは、大袈裟でなく家の存亡に関わる危険行為だった。だが、クラウスの行動が結果として真実を明らかにし、かつ伯爵家が大きな非難を浴びることなく済んだのは予想外の大団円とも言える。


「……わたしとしては、正直、お前の判断を全面的に()める気にはなれん。それでも、こうして大事には至らず、結果的には貴族社会の多くが『フォルスター伯爵家は正義を貫いた』と見る向きさえある。お前の真摯さが伝わったのだな」

「はい。自分の力だけでは到底なし得なかったことです。多くの人の助力がありましたし、レティシアが誇りを捨てずに戦い続けたことが大きいです」


 そこでハンスは、ついに本題に踏み込むかのように身を乗り出した。


「伯爵家と公爵家の関係……少なくとも今は、わたしたちの家同士が正式に協力関係を結んだわけではない。だが、お前はそれこそ命がけであの令嬢を助けてきた。その事実は少なからぬ噂を呼んでいる」


 クラウスは言葉を選びつつ答える。


「噂になるのはやむを得ないでしょう。わたしは王太子派閥との争いに加わった形になりましたし、レティシアとの関係についても憶測を呼んでいるのは承知しています」

「お前のしたことは、わたしとしては危険な橋だったと今でも思う。それでも、お前が貫いた意志は、おそらく公爵家としても無視できないほど価値をもたらしたのかもしれん。お前自身がどうしたいのか……やがて考えねばならない時が来るぞ」


 ハンスの言葉は、レティシアとの将来を暗示するようにも聞こえた。クラウスははっきり言葉にしづらい感情を抱きながらも、父の寛容さと配慮を感じ取って、一礼する。


「わたしは、今はまだレティシアを政治的にどうこうという次元では考えておりません。彼女が(おとし)められた真実を取り戻すために行動した。それ以上でも以下でもないのです。ただ……公爵家には改めて挨拶に伺うつもりです」


 ハンスは微笑みを含んだ眼差しを向け、最終的には「お前の判断を尊重しよう」と告げる。これまで息子の軽率な行動をたしなめていた父が、この期に及んで大きく怒らなかったのは、クラウスが示した結果が伯爵家の名誉にも繋がったからだろう。


「しばらくは無茶をしすぎるな。これから公爵家の周囲がどのように動くかは不確定だが、少なくともお前には一つの選択肢ができたようだな」


 そう言われて、クラウスは「はい」と短く答える。やはり、レティシアとの今後の関係を暗示されたのだと感じているが、まだ自分でもそれを確立させる覚悟には至っていない。ただ、「彼女の隣に立つこと」への思いは、日に日に強まるばかりだ。

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