ここちゃん、大ひな祭り大会!?
「ずるいっ!」
主語なし唐突大声はここちゃんの得意技です。
「で、何がずるいのよ?」
「今日は大ひな祭り大会だろ? 女の子ばっかりずるいって皆言ってる!」
「何よその小学生みたいな言い分は。それから大ひな祭り大会って何なのよ。記憶に残ってるひな祭りはどれも、大会ではなかったわよ。あとねぇ、二ヶ月後にこどもの日があるでしょうが!」
「何か美波すごい言ってくるな」
「誰のせいだと思ってるのよ! 少しは思い当たりなさいよね!」
ひな祭りだというのに、ついつい怒鳴り散らかしてしまい、おしとやかさも何もあったものではないなと自分に言い聞かせる私。
「なぁなぁ美波。大ひな祭り大会は、ひなあられ食べたり、ちらし寿司食べたりするんだよな?」
「食べてばっかりの大会ね。ちゃんとひな人形飾ったりするわよ」
「今年はどれが勝ち上がっていくんだろうな?」
「ん? どれが勝ち上がる?」
ここちゃんはトーナメント表の勝ち上がりのような動きを宙に描いた。そこで、私は気付いたのです。大ひな祭り大会とはなんなのかを。
「あのぉ、ここちゃん。その大ひな祭り大会ってトーナメント制なのよね」
「あったり前だろ! 美波の家は毎年やってるよな? 決勝はいつも同じふたりだな」
やっぱりそうでした。ここちゃんは、ひな飾りの段を、トーナメントだと思っていたようです。つまり一番上は決勝戦の対戦カード。メインイベントだと思い込んでいます。
「それにしても、毎年お爺さんが一回戦敗退でかわいそうだよな。弓持ってるのにな。はははっ!」
「はははっじゃないわよ! ひな人形バトルロイヤルしないから!」
「美波が寝てるときにしてるもん!」
「何でここちゃんがそれを知ってるのよ」
「そ……それは、あれだよ。ほら……皆そう言ってる!」
「それやめなさいよ! 怖いわ!」
来年ここちゃんが来るときは、ひな人形の位置を替えて、大ひな祭り大会を開催してみよう。
「いやいや、やっぱりやめよう」
「何か言ったか?」
「ううん。何にも」
「じゃあ早速、ひなあられ撒こうぜ!」
「撒かないわよ! 何が〜外なの! 先月のとごっちゃになってるから!」




