ここちゃん、助けて助けられる!?
「あふれる笑顔のために」の矢崎陽菜と藤堂大雅と、ここちゃんのコラボ回です。
駅の改札を通り、待ち合わせの場所に向かう。確か、ここだったよな?わんにゃん像の前って言ってた。
あっ、じぃちゃん。危ない。そう気がついて直ぐに足が前に出た。
「じぃちゃん、ここ段差あって危ないよ」
「おぉ、すまないねぇ。助かったよ」
おじいさんは白杖をついて歩いていた。杖で道を確認しながら歩いていたが、ここちゃんが咄嗟に声をかけていた。
「じぃちゃん、段差降りるまで手伝うよ」
「ありがとう助かるよ」
ここちゃんの手伝いで、おじいさんは無事に段差から降りられた。
「声かけてくれて手伝いまでしてくれて、本当に助かったよ。ありがとう」
「どういたしまして。それじゃあ、じぃちゃん、気をつけてね」
おじいさんを見送り、待ち合わせ場所に向かおうと振り向いた瞬間
うわぁ。
おじいさんを助けた段差に、まさか自分が落ちる
「君、大丈夫? 怪我とかしてない?」
僕に語りかける声が聞こえる。そしてもうひとりの人が僕の前にしゃがみ込み
「どこか痛いところあるのかな?」
可愛らしい声で僕に語りかけてくれる。
「ここ、痛いです」
咄嗟に手をついたため手のひらに擦り傷ができてた。
「擦過傷だね」
「大ちゃん、消毒綿花で良いかな?」
「その前に水で流せれたら良いけど」
女の子は自分の鞄の中から、水のペットボトルを取り出して
「新品なのでコレで傷を洗いましょう」
そう言って素早くキャップを開け……
「あれ、開かない。硬いなぁ」
可愛い。僕が大怪我していなかったら開けてあげたのに。
「陽菜貸して」
うわっ、めっちゃさりげない。かっこいい。僕もこういう大人になろう。
「大ちゃん、そのまま水で洗ってあげて。消毒綿花の準備するね」
「わかった」
そう言って、僕の手に水をかけて傷の周りを丁寧に洗ってくれた。それから女の子が
「アルコール綿花で被れたことないですか?」
「ん?アルコール綿花、使ったことないです」
ん?何か、僕間違った事言った?なんか空気乱れてるよ。
「注射や採血などの針処置の前に、消毒するあれで、痒くなったりしたことは?」
おぉ!わかりやすい!
「ないです。かゆかゆないです」
え? 目の前で鞄から医療用の手袋が出てきて、女の子がパチパチはめる。
「消毒しますね。少し染みるかも知れないです。我慢しててくださいね」
「えぇ? 痛いんですか!? うぎゃ~〜」
容赦なく消毒の綿花を傷口にポンポンと押し当てる。そしてサッと絆創膏を貼ってくれた。そして使った物全てビニール袋にサッとまとめていた。それを男の人がさりげなくゴミの入った袋を受け取り横に見えるコンビニのゴミ箱に捨てに行ってくれた。
「おしまいです」
ゴミを捨てに行っていた男の人が戻ってきた。
「段差は気をつけてね。それじゃあね。陽菜行こうか」
「うん。大ちゃんゴミありがとう」
僕の命の恩人のふたりは、仲良く手を繋いで歩いていく。ん?僕って人助けしたよね?
神様、僕に悪戯しないでください。手のひらに貼ってもらった絆創膏をみつめて複雑な思いを持て余していた。待ち合わせのことをすっかり忘れて……。




