ここちゃん、おでんで宇宙旅行!?
「ふんふんふ〜ん」
今日のここちゃんは上機嫌。なぜかというと、お夕飯が大好きなおでんだからだそうです。
「ここちゃん、そんなにおでん好きだったっけ?」
幼稚園からの幼なじみなのに、まだ知らないことがあるもんだなぁと思っていると、ここちゃんがスマホの画面を私に向けてこう言いました。
「これ食べてみたいんだよ」
「ん? あ〜これかぁ」
そこに表示されていたのは、こんにゃく、卵、ちくわが串に刺さったおでんの絵文字でした。
「おでんと言えばこの形を想像するのに、今まで生きてきて一度も食べたことないんだ。それどころか見たこともない! そしたらかぁちゃんが、作ってくれるって言うんだ」
「確かに見たことはないわね。あっ、そうそう。ここちゃん知ってた?」
「知ってる! 俺もそうだと思ってた!」
「まだ何も言ってないんだけど。まぁいいわ。そのおでんの絵文字、海外の人は食べ物に見えないらしいよ」
私の言葉を信じられないといった表情のまま、おでんの絵文字を眺めるここちゃん。
「どう考えてもおでんだろこれ。三角、丸、四角が串に刺さってたらおでんに決まってる! それともロケットだとでも言いたいのか?」
「あっ、ここちゃん正解。海外の人にはロケットに見えるらしいよ」
「だ、だろう! 知ってたしっ! じゃないかなぁって思ってたんだよ。やっぱり俺の感性ってグローバルで、ワールドワイドだからな」
ここちゃんが饒舌な時は、逆にぐうの音も出ないときです。矛盾しているように聞こえるかと思いますが、これがここちゃんなので、皆さんどうぞお気になさらず。
「あら? 早瀬さん。兵衛君。まだ残っていたの? 早く帰りなさいね」
教室の扉を開けて入ってきたのは、担任の坂本尚絵先生だった。教室に忘れ物がないか見に来たらしい。
「あっ、先生! 今日かぁちゃんにロケット作ってもらうんです。じゃあまた明日〜!」
「何かわからないけど、気をつけるのよ?」
二人のやり取りもどうかと思いますが、謎と誤解だけを残して、ここちゃんはロケットの待つ家へと帰るのでした。
「三っ! ゼロっ! 四っ! 発射〜!」
「はははっ! ここちゃんおでんの形でカウントダウンしてる! いや、なってないし!」




