ここちゃん、空模様と心模様!?
『明日は一日曇り空で風が強く、ところによっては雨や雪、また陽が射す時間もあるでしょう』
テレビの天気予報を観ていたここちゃんが、たまらずツッコミを入れた。
「全部じゃん! そりゃあ当たるだろ! 太陽、雲、傘、雪だるまって、全部盛りかよ!」
ところによっての『ところ』が、自分のところなのか分からず、もやもやするここちゃん。
「あ〜、これじゃあ宿題どころじゃないなぁ」
「天気予報を宿題やりたくない理由にするんじゃないわよ」
「だって嫌いなんだもん」
「野菜を残す子供みたいなこと言って。あっ、そうか。ここちゃんはお子ちゃまだもんね」
「はいっ!」
そこは「誰が子供だって!」って言うとこだと思っていたら、気持ちいいくらいの返事が返ってきて、逆に清々しささえ感じた。
「美波。俺はな? こう思うんだよ」
いいこと言いそうな雰囲気を作るここちゃんですが、上手いのはその雰囲気を作るとこまでなのです。
「いいか。俺はやって後悔するくらいなら、やらないで後悔したい! きりっ!」
「きりっ! って。普通逆なのよ。あとどっちも後悔することになってるじゃないのよ! やったら後悔しないんだから、さっさと宿題済ませる!」
とは言ったものの、今日はどの教科も宿題が無かったことを思い出した私。
「これは謎だぞ。宿題出された記憶がまるでない! 美波、これは事件だ!」
案の定、ここちゃんは騒ぎ出し、ああ言った手前、引っ込みがつかなくなったこともあり、ここは押し切ることにした。
「普段から宿題やらないから、こういうことになるんだよ」
「わかったよ。宿題やるから教えてくれよ」
「そ……それは、自分で考えなさいよ」
危ない危ない。教えてと言われても、そもそも無い宿題を、どう教えろというのか。
「あぁぁ! 俺の心の天気は雨だぁぁ! あっ、さっきの天気予報で言ってた『ところによって』は、俺のことだったのか! なぁんだ、すっきりした。すっきりしたら宿題やらなくてもいい気がしてきたぞ。宿題はまたの機会にする!」
「そ……そう。じゃあ次はちゃんとやるのよ?」
結果セーフだったけど、相手がここちゃんじゃなかったら、完全にアウトだったわ。
「でもさっきの天気予報。一日の中であれだけ天気が変わるなんて、異常気象だよな」
たまに出るここちゃんの的を射た発言が、宿題の件の時じゃなくてよかったと、ホッと胸をなでおろす私でした。
「本当よね。色々怖いわね。気をつけよう」




