ここちゃん、知らぬ苦労はスウィート or ビター!?
バレンタインデーが近づき、クラスの女子はチョコの話題で持ち切りです。
かくいう私もその例外ではなく、いかんせん料理が実力の方に追いついて来ないので、今年もお店で買おうかなと思っていたのですが、そんな時、英里ちゃんにこんなことを言われました。
「あのぉ、美波ちゃんはどんなチョコを作るの?」
そうです。作る前提で話が進んでいるのです。
「あ〜、まぁ……普通のかな。簡単に出来るやつ」
つい見栄を張って、チョコ作れる人発言をしてしまいました。
「そっか。やっぱり……九君に?」
「ここちゃん? そうだね。幼稚園の頃からあげてるから今年もあげるかな。英里ちゃんはどうするの?」
「わわわ私っ!? あの、えっと……」
英里ちゃんは恥ずかしがり屋さんなので、自分の気持ちを話すのが少し苦手なんです。
「フォンダンショコラ……作ろうかなって思ってて……」
「フォンダンショコラ! お店でしか見たことないよ! そういえば英里ちゃん、調理実習のとき手際いいよね。普段からお料理するの?」
「初めて作るから上手に出来るか分からないけど、レシピ見ながらだし何とかなるかなって。料理は好きで、普段からお母さんのお手伝いしてるよ」
「そうなんだぁ」
私は決めました。もう恥も外聞も捨てて、英里ちゃんのお弟子さんになることを。
「あのさぁ。実は……」
皆さんはご存知かもしれませんが、神様は私に料理のセンスを付与し忘れたので、今まで台無しにしたことこそあれ、ちゃんと完成させたことがないのです。
「なんだぁ。美波ちゃんでも苦手なことあるんだね。いいよ。一緒に作ろう」
料理の女神が私に微笑んでくれました。これをきっかけに、お料理上手になれますように。
「いや〜、お恥ずかしい限りです。それじゃあ、学校終わったら買い出しに行こう。英里ちゃんに話してよかった。ありがとう」
今年のバレンタインは勝ち確だと、心の中でガッツポーズをする私は、ここちゃんの驚く顔を想像し、さらに小躍りするに至りました。
「美波ちゃんうれしそうだね」
「そりゃあもう。これでここちゃんに大きい顔されなくて済むんだもん。英里ちゃんは誰にあげるの?」
「わ……私は、そのぉ……」
顔を真っ赤にしながらうつむく英里ちゃん。こんなかわいい子からチョコをもらったら、あの鈍感なここちゃんだって勘違いしてしまうことだろう。
バレンタインまであと二日。英里ちゃんに教えてもらいながら、食べ物を作れるように頑張ろう。




