ここちゃん、たまに閃く!?
年が明けてから、一ヶ月が終わろうとしていますが、あっという間過ぎて実感がありません。
「たいしたことしてないなぁ。今年は何か新しいことでも始めてみようかな」
私はこれといった趣味もないので、毎年何かやってみようと思うのですが、思ったまま年を越してしまいます。
「趣味といえば……読書とか、映画鑑賞とか、スポーツもあるかぁ。あとは……」
そういえば最近、クラシックコンサートのコマーシャルをよく目にすることを思い出した。
「楽器ねぇ」
楽器といえば鍵盤ハーモニカと縦笛なわけですが、小学生時代に授業で触った程度で、それをわざわざ趣味にするのもどうかと、結局逡巡してしまいます。
「いかんいかん。何事も否定から入ったら、始まるものも始まらないわよね。楽器だと何がいいかなぁ?」
ギターやベース、キーボードにドラム。バイオリンやサックスなども思いついたが、どれも自分が演奏している絵が思い浮かばなかった。
「今の中なら、多少なりとも触れたことのあるキーボードがいいかな。とは言っても、ああいうのってお高いイメージが……」
値段を調べるため、インターネットで検索してみた。
「おや? いろんな機能がついてお安い物もある。これなら初心者でも投げ出さずに続けられるかも」
ということで、早速ポチっと購入ボタンをクリックしました。
数日後──
「ここちゃん。適当に座ってて、今お茶持ってくるから」
「おっけ! お構いなく〜」
今日はここちゃんが遊びにきたのですが、すっかり忘れていました。部屋には届いたばかりのキーボードを置きっぱなしにしていたのです。
私が飲み物とお菓子を持って、部屋に戻ると、ここちゃんはキーボードを指差して「弾けたんだっけ?」と、疑いの眼差しを向けてきました。
「最近始めたんだよ。年も明けたし、何か新しいこと始めてみようかなって思ってさ」
「そうかそうか。弾けるようになったら聴かせてもらおうかな。まぁ、美波のことだから、すぐにこのキーボードは、物干し竿になるだろうけどな。ぷぷっ」
「こんな大きな物どうやったら物干し竿になるのよ! 弾ける曲ならあるし!」
そう言って、レ♭とミ♭に指を乗せようとした私を見てここちゃんが一言。
「可哀想だから猫踏むなよ?」
予言のような言葉に、ピタッと手が止まった。
「ふ……踏まないわよ。やだなぁ、ここちゃんたら。あ〜何か曲弾く気分じゃないなぁ。また今度にしよう。うん、そうしよう」
悔しいから、ちゃんと弾けるようになって、ここちゃんを驚かせてやろうと思います。
皆さんも温かい目で見守って下さい。




