ここちゃん、白猫事件!?
私の家の裏は空き地になっていて、ところどころ草が生えている場所があります。最近そこに猫ちゃんがよく現れるので、学校から帰ると何となく外を覗くようになりました。
「今日もいる。白くてきれいな毛色の猫ちゃん」
外はすっかり暗くなり、景色をはっきりと確認することは出来ませんが、真っ白な猫ちゃんは、いわゆる香箱座りでじっとその場から動きません。
「もしかしたら、お腹を空かせているのかな。何か冷蔵庫にあったかな」
一階に下り、自分用のあたたかい飲み物の他に、猫ちゃんにあげられる物はないかと探していると、チーズを見つけました。
「調べたらチーズを食べても大丈夫って書いてるから、これをあげよう」
急いで部屋に戻ると、窓を開けてチーズを持っているアピールをした。
「反応なしか。それじゃあこれでどうかしら?」
チーズを一口サイズにすると、狙いを定め猫ちゃんへと投げた。
しかし、顔のすぐ近くへと落ちたのだが、微動だにしない。
「お腹減ってないのかな。それならいいか」
と、その時、一陣の風が吹いた。
砂埃を巻き上げ、木の枝や葉を揺らしながら近づいて来る。
「猫ちゃん大丈夫かな」
窓を閉めて安全を確保した状態で、猫ちゃんの様子を窺っていると。
「猫ちゃんが飛んだぁぁ! っていうか飛んで行ったぁぁ! ん?」
飛んで行った猫ちゃんをよく見ると、その正体に自分が恥ずかしくなった。
「白いビニール袋じゃん! 私あれにチーズ投げてたの!? まぁ本当の猫ちゃんじゃなくてよかったよかった」
こんなところをここちゃんに見られたら、どんなイジり方をされるか分かったもんじゃない。
私は何事もなかったかのようにカーテンを閉めると、飲み物を口にし、一息ついた。
♪──
♪──
このタイミングでスマホが鳴り、液晶画面にここちゃんの名前が表示されている。
「まさか見られてた? もうしょうがないか」
覚悟を決めて着信ボタンをタップした。
「はい。ここちゃんどうしたの?」
「美波っ! 俺見たんだ!」
やっぱり見られていたかと思い、敗戦処理のように通話を続けた。
「いや、それなんだけど……」
「今、窓の外を白い猫が飛んで行ったんだよ! 美波の家の方から飛んで来たから、美波も見たかと思って!」
「へっ!? い、いや〜。私は見てないなぁ。不思議なこともあるんだね〜」
「だよな! 空飛ぶ白猫事件だ!」
同じような勘違いをここちゃんもしていたことに、思わず口角が上がり、ほっこりしました。
「俺興奮して、明日の朝起きれるかわかんないわ!」
「寝れはするんかい!」




