ここちゃん、ホットケーキへの道!?
『ここちゃん、ホットケーキ作るからおいでよ』
その言葉に何の疑いも持たなかった俺は、すっかりホットケーキの口になっていた。
「ホットケーキって甘くていい香りで、ふわっふわで美味しいよなぁ」
「そうよねぇ。バター乗せて、上からシロップかけて」
「そうそう……で、美波先生? これは一体、何をお作りになられたのですか?」
美波が無言で持ち上げたのは、ホットケーキキットと書かれた箱だった。
「またまたぁ。だって全然違うじゃん! これはホットケーキじゃない。両面黒のオセロだよ!」
「おっしゃるとおりです」
申し訳なさそうにする美波を見て、これ以上つつくのも悪いと思った俺は、真っ黒のオセロを……いや、ホットケーキを持ち上げた。
「カチカチだ。ん? ちょっと待って。これ……割れないんだけど!」
「恥ずかしい!」
両手で顔を覆い、耳を真っ赤にする美波。
「まぁ何ていうか、ほら……これだって使い道はあるぞ。こんだけ硬かったら、ドアストッパーとか。あとは、外でフリスビーとか、あっ! 鍋敷き……」
「もういいよ! ここちゃん言い過ぎ! 反省してるんだから許してよ!」
「反省してる人の言葉とは思えないけど、面白かったし許してやろう。ってことで、ホットケーキ食べに行こうぜ!」
「賛成」
果たして、美波のお料理をおいしくいただく日は来るのだろうか。
何でもそつなくこなす美波の、数少ないウィークポイントに、これからも乞うご期待。
「美波のおごりな?」
「甘んじてその刑に処されましょう」




