タネと仕掛けのイリュージョン!?
「うわぁお! なぁなぁ美波。これどうなってんだろうな?」
私とテレビを交互に観ながら、ここちゃんは今、テレビのイリュージョンショーに夢中です。
「タネと仕掛け満載なんたろうけど、それにしてもわからないよね」
「いやいや、ちょっと待て。今タネと仕掛け満載って言ったか?」
「うん。それがどうしたの?」
「美波はわかってないなぁ。いいか? さっきこの人は、タネも仕掛けもないって言ってたぞ。そもそもそれじゃイリュージョンじゃないだろ」
ここちゃんの何でも信じる純粋なところ嫌いじゃないんだけど、それにしても信じすぎる。
「あのね、ここちゃん。それがイリュージョンなのよ。タネと仕掛けがなかったら、どうやってこんなこと出来るのよ」
「で……でも、この人」
「身近な人が犯人だったことを知った主人公みたいなリアクションしないでよ」
ああ神様。私はいいお客を一人、テレビの中のあの人から奪ってしまったようです。
その後のここちゃんは、その人のショーが終わるまでずっと。
「嘘つきっ! 信じてたのに! お金返せぇぇ!」
「いや、ここちゃんお金払って観てないでしょ」
「そうか。おいっ! 嘘つき、ごめん!」
ちょっとアレなところもあるけれど、私はそんな正直なここちゃんが……。
「なぁ、美波。俺と美波でやってやろう。タネも仕掛けも無い、あの体が半分になるやつ」
「出来るかぁぁ!」
こんなことの繰り返しで、私は毎日楽しく過ごせています。