ここちゃん、さっそくご利益!?
「美波。どんと祭行くぞ」
そんなここちゃんの一言で、私も一緒に近くの神社へ行くことになりました。
「どんと祭が終わると、あんまり神社に来なくなっちゃうよね」
「そうだな。神社は初詣と、どんと祭と、夏祭りくらいしか面白いイベントやってないしな」
「言い方」
夕方になり、神社の境内では御神火が焚かれ、そこに正月飾りを置いて焼くことで、お正月の神様を送るのだそうです。ちなみに御神火にあたると、一年間健康で過ごせるなどのご利益があるともいわれています。
「あったけ〜。両面こんがり焼いて〜」
「焼き肉じゃないんだから」
「でもさぁ、あったかいから離れられなくなるんだよな〜」
「気持ちはわかるけど。あっ、あっちに屋台がある」
「美波。何してんだ! そんなとこにいつまでもいないでさっさと行くぞ。屋台が語りかけてくる」
「ここちゃんの決め台詞出ちゃったよ」
焼きそば、焼き鳥、焼きとうもろこし、お好み焼き、チョコバナナ、りんご飴、わたあめ。たったの数分で、ここちゃんはその全てを集めた。
「ここちゃん。指足りてる? どうやって持ってんのそれ?」
「やったぞ美波。リベンジ大成功だ! 初詣の大凶に会心の一撃くらわせてやったぜい!」
「しっかり気にしてたんかい!」
すると向かい側から、私が所属する美術部の部長、美紗子先輩と真希先輩が歩いて来た。
「あら、美波ちゃん、九君。相変わらず仲がいいのね」
美紗子先輩の言葉に、何かを察した真希先輩が続けた。
「あっ、そうよねぇ。ごめんごめん。邪魔しちゃ悪いわよね。ほら、美紗子行くわよ」
「ん? あ〜! そういうことね! はいはい。大丈夫よ美波ちゃん。私達、こう見えて口硬いから。それじゃあね〜」
「あの、これは……」
先輩二人は足早に歩き出すと、途中振り返り、ニヤッとして消えて行きました。
「あ〜、学校始まったら絶対何か言われる」
「美波。りんご飴やるよ。好きだろ?」
「なっ! 好きって! ななな何言ってんのよ! ほら、帰るよ!」
「ちょっと美波、待てって〜! 指もげるから〜!」
勘違いに過剰反応、家に帰り冷静になってみると、とっても恥ずかしくなりました。
「…………好きって」




