表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/64

ここちゃん、世界へ羽ばたく!?

 私とここちゃんが住む街にはアーケード商店街があります。


 梅雨入りした今、傘を差さずに歩けるのはありがたい。


 そして、今日はここちゃんが大事なミッションを遂行するため、二人で商店街へとやって来ました。


「それにしても商店街も太っ腹だよな。特賞オーストラリア旅行なんて。俺がこの伝説の左手で引き当ててやるからな!」


「その左手にどんな伝説があるのかはわからないけど、ここちゃんじゃ……」


「引くよな! 絶対! 日頃の行いがいいもんな」


 めちゃくちゃポジティブなここちゃん。案外、こんな人が引き当てるのかも知れません。


「あった。福引き所!」


 ポケットからくしゃくしゃになった福引き券を取り出すと、ここちゃんは緊張の面持ちで、ガラガラに手を掛けた。


「お兄さん。当てちゃってちょうだい。特賞はオーストラリア旅行だよ」


「いただきます。レッツ! オーストラリアァァァ!」


 ぽとりと落ちた玉の色は──


「……白」


「残念。白はポケットティッシュです」


 まぁそんなにうまくはいかない訳で。


「そういえば、私も一枚あるんだった。お願いします」


 絶望の顔がニコッと反転したここちゃん。


「よし、美波。お前の運をここで使い果たせ!」


「いやよ! 私は一等の有名ホテルのスイーツ食べ放題を狙うんだから」


「お姉さん当てちゃって。一等もまだ出てないからね」


 ゆっくりと回し、ガラガラと音を立てながら一つの玉が落ちてきた。


「なんとっ! これはっ! おめでとうございま〜す! 特賞のオーストラリア旅行です!」


 カランカランと鐘が鳴り、アーケード中に響き渡る『特賞』の声。


「み……美波。お前……ととと特賞だぞ!」


「一等が良かったのになぁ」


「あほ。そんなこと言うもんじゃないよ。オーストラリアの神様が泣くぞ。で、いつ行く?」


「オーストラリアの神様って何よ。それから、何で一緒に行く感じになってるのよ」


「だって、ほら」


 ここちゃんが指差した先には。


「特賞。オーストラリア旅行。ペアでご招待! ぺぺぺペアだからって、別にここちゃんと行くとかじゃ……」


「あっ! 俺パスポート無いから作らないとな。おい美波行くぞぉ!」


 特賞の目録を手に持ったここちゃんは、満面の笑みで私を呼んでいる。


「……何か……付き合ってるみたいじゃないのよ」


 このオーストラリア旅行で、私とここちゃんは想像を絶するような体験をすることになるのですが、それはまたいずれ──


「ここちゃん、待ってよぉ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ