ここちゃん流、本格的鬼ごっこ!?
これは私とここちゃんが、まだ幼稚園に通っていた頃のお話です。
「みなみ。かくれんぼしよ」
「いいよ。じゃんけんで、まけのことがおにさんだからね?」
「わかた。おれがおにさんするよ」
鬼役をかって出てくれたここちゃんは、十数えて私を探しにやって来る。
はずだったのだが──
「もぉぉいいよぉぉ! むずかしのところにかくれただから、みちゅからないよ」
案の定、なかなか見つからず、それどころか、探しているような気配を感じなかった。
「ここちゃん。おさがししてるかな? しゅこしだけ、みてみようかな」
私は隙間から外の様子を伺うと、ここちゃんを見つけた。
「ここちゃんいたぁ。おさがししてない。なにちてる?」
ここちゃん観察を続ける私。
「がおぉぉ! おにしゃんだよぉ! あかのおにしゃんのことだよぉ!」
そうです。ここちゃんは、しっかりと鬼役をしていたのです。
「あかおにしゃんのことちてる」
思っていたより鬼をしているここちゃん。
かくれんぼしようと誘ったのはここちゃんの方なのに、何度もしているかくれんぼで、今更そんなこと起こるかと思いながら私は──
「ここちゃん! おさがしちてよ!」
自分から出て行った。
「みなみみぃつけた! あかいのおには、ちゅよいなぁ」
かくれんぼでこうなのだ。鬼ごっこなんてしたら、完全に鬼を演じるに違いないと思った。
「つぎは、みなみがおにしゅるのことだからな」
目をキラキラと輝かせ、私を見つめるここちゃん。
「おに……ちないよ」
「えぇぇぇ!」
あんなに驚いたここちゃんを見たのは、この時が初めてでした。




