ここちゃん、ここフェス開催中!?
「ふんふんふん♪ ふんふんふん♪ はい、美波。今のは何の歌でしょうか?」
「えっ、出題されてると思ってないから聞き逃しちゃった。もう一回歌って」
ここちゃんはこうして、たまに鼻歌イントロクイズを開催してきます。ちなみに難易度は激ムズです。
「せーの。ふんふんふふふん♪」
「ストップストップ! 何せーのって。ひとりだよね? 誰と合わせてるの? あとさぁ、さっきと違くない?」
「俺の中のオーケストラ……あっ、オーレストラを指揮してやらないとな」
「その“オーレストラ”って、今思いついたでしょ? あっ、て言ってたもんね。うまくもないし。よくて鼻歌合唱団てとこね。ひとりだけど」
「美波はネーミングセンスがないな」
「誰が言ってんのよ! 鼻歌の方はわからないから、ヒントちょうだい」
ここちゃんに降参はしたくなかったので、ヒントをもらい解くことにした私。
「ヒントはそうだなぁ。さっきと違う……かな」
「やっぱりそうだよね。違うよね。私さっき言ったよね、それ」
「おっと美波選手。興奮しておりますが、未だ正解はせず。このままお茶を濁すつもりかぁ?」
「すごく嫌な司会者ね。あと選手って何よ」
ここちゃんは、マイクを持ってるふりをしながら、私にコメントを求めてきた。
「それでは答えを張り切ってどうぞ! ビリになったら罰ゲームあるから気をつけるんだぞ?」
「待て待て待て。私は個人戦でお送りしてきたつもりなんだけど、ビリになる可能性あるの? 誰と戦ってるのよ。それから罰ゲームの件は聞いてないんだけど!」
そんなことよりと言わんばかりに、握りしめた拳を私に伸ばしてくるここちゃん。
「ひとには答えさせようと詰めてくるのに、自分は答えないスタンスの司会者か。まったく、じゃあいいですよ。答えは……」
「今のでよろしいですか?」
「どこ切り取って答えとしたのよ。答えは、ここちゃんの思いつきです。つまり適当!」
「美波選手、ハズレですが、答えを発表致します! 正解は……」
「下手か! 先に不正解発表してるじゃん! もうドキドキしないわ」
ひとり司会者を満喫中のここちゃんは、たっぷり間を取ると、ちらりと腕時計を確認。
「あっ、もうこんな時間か。じゃあな美波。また明日な」
そう言うと司会者は、まさかの途中退場をし、何とも言えない気持ちだけが私の心を支配した。
「ちょっと、正解は? 罰ゲームは? 何、この時間。もやもやするわぁぁ!」




