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今回のことは、あくまで僕がやりたかったこと。

彼女に代わって行った復讐ではない。断じて違う。

なんやかんや、あの子は優しいから。怯えはしても、やり返そうなんて思わないだろうから。


僕が、気にくわなかったから。

あの子への、自分勝手な餞別だ。




再びあの子を咥えて(高い木の上だから1人じゃ降りられないんだよ)、家である洞窟にさっさと戻った。

僕の身体は猫なので、つまりちっちゃいんだよ。だからゆっくり移動すると、あの子を引き摺っちゃうんだよね。スピード出して身体を浮かせないと、傷だらけになっちゃう。で、ヒュンヒュンとジャンプしてる。たまにぶつけちゃったりすると、小さく声をあげるけど、でも完全に無抵抗だ。それこそ仔猫のごとし。


洞窟について、地面に下ろされると、あの子はそのままへたりこんでしまった。ぺしゃ、って感じ。うーん、動かない。

ま、色々あって疲れたよね。長い1日でした。もう日が落ちて、周囲の森はすっかり闇に包まれている。



ずり、ずりり、となんとかあの子を寝床へ移動させる。この寝床、草や動物の毛皮なんかをつかって作った、なかなかの力作なのだよ。鳥の羽をむしって洗って乾かして、と手間暇かけて作ったクッション、中身を捕まえたのは僕です。沢山捕まえたよ!

あ、もちろん本体も美味しく頂きました。あの子と僕と、お裾分けしたその辺の生き物とで。



上から布団をかけて、っと。

うん、お休み。





あの子はすっかり寝入った。さて、もういいかな。



エッちゃーん。

出てきてー!



「1回出るごとに1ポーズ!」

かぁっ!

「うわっ!」


出てきたエッちゃんに飛びかかる!

ネッコが飛びかかってくるなんて、とんでもないご褒美でしょ?にゃおん!




僕がエッちゃんにお願いしたことは、2つ。

そのうちの一つが、あの子に何があったのか教えて、だ。


だってさ。あの子が怯えていたんだ。

ちっちゃい身体を目一杯縮こまらせて、必死に隠れてたんだ。

あの子にそこまでの仕打ちをしたやつら、そのままにしておくなんて癪に触る。


そしたらエッちゃんは、見せてくれた。言葉もわかるようにしてくれた。

僕は、あの子の記憶を見た。そしてついでに、さっき来た3人の記憶も。

記憶を見る、これもこの世界の魔法なんだって。

すごいね魔法。こんなことも出来るんだ。監視カメラいらず、そしてプライベートもないときた!いや、対策の魔法とかもあるらしいけど。すごいね魔法!


そして僕は、胸糞悪い事実を知った。

大体予想通りだった。けど、村ぐるみで胸糞悪いとまでは想像してなかったよ。


このエンゾーとか言う男の予想通り、巫女の婆さん率いる村長一族は、巫女の力なんか持っちゃいない。

あの子を生け贄として捧げ、再び加護を得たと主張し、正統な巫女として改めて村長として君臨するつもりだったらしい。

その為に必要だったのが、あの杖。


かつて巫女として加護を得たときに、生贄を受け取った証として『強き力をもつもの』から授かったと言われている、飴色の木の杖。それが本当かどうかは知らないけど、あれを持って行って回収することで、「巫女と認められた証!再びわが一族に授けられた!」とか主張つもりだったようだ。

だからあの子に持たせた。本来なら最初に連れて行ったときに回収するはずが、あの子に逃げられたから杖を取り返せなかったわけだ。そして、わざわざ回収するやつがまた来たって訳。


正直、加護を得る自体はどうでもよかったらしい。「生贄が捧げられていない」、そう主張することで、もう一度杖を取りに行く機会を得ようとした。

まあ加護なんて目に見えないからどうとでも言えるもんね、うん。


よくあるように、あの子のいた村も一枚岩ではない。反村長派が段々と増え続けていて、村長は焦っていたらしい。だから折よく『強き力をもつもの』が現れて、これは好機と行動に起こしたようだ。


なんで巫女の力がないのに『強き力をもつもの』が現れたってわかったのかって?

それは、あの子が感じ取ったらしい。

そう、あの子は本物の巫女の力を持つ者だったんだ。

だからはじめて僕と対面した時、尋常ではない怯えっぷりだったのね。そして殺されると思った、と。


村長、せっかく本物の巫女が現れたのに、殺そうとしたんだね。怖かったのかな?自分の正当性と地位を脅かす者だもんねー。



あー、まぁ、もういいや。やることは済んだ。

あの子の村のことはどうでもいい。



あとは、あの子自身のことだ。


引っ掛かれた跡さえいとおしい……

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