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ああ、今日も朝日がまぶしい。

今日の戦利品を足元に置いて、顔をくしくし。脚をペロペロ。加減をしつつバリバリ爪研ぎ。うし、今日も良い爪痕を残したぞ。


はいはい、もー起きたのね。相変わらず早起きね。

あーもう、お待ちなさい。今日は君の大好きな橙色の実が食べ頃だったんだから、傷つけたら勿体ないよ。


なぁんごあぁんと抗議するが、あの子はお構い無し。かごに入った果物を嬉しそうに眺めながらうっとりしている。

それ、なかなか食べられないもんね。



あの子が編んだかごを咥えて、明け方に森で食料を収穫するのが最近の僕の役目。その前には、運動がてら食べられる生き物を取っ捕まえて、家(といっても洞窟だが)の前にずるずる運ぶ。


今日は赤と紫と黒という、目に痛いカラーリングの鳥を3羽捕まえてきた。香草焼きにすると美味しいんだよねこれ。


食べる必要はないんだけど、たまにご相伴にあずかります。

ほら、元人間としては、美味しいものを食べたいのよ。しかも食にうるさい日本人だよ?ここ最近のブームなんです。わけて。

いや僕が捕ってきたんだけど。


ここが僕の縄張りだと知っているから、他の生き物はここには近づかない。安心だね。僕が不在のときを狙ってやって来る奴はいない。



なんやかんや、あの子と暮らすのにも慣れた。


あの子は自活する術に長けていた。だから年中付いて回っている僕のほうが勉強になることが多かった。


あの子は、火を起こす道具や小さいナイフ、鍋の替わりになるものなんかも持っていた。食べられるものの区別や水の探し方、森歩きの方法やいくつかの薬の作り方なんかも嗜んでいる。危険な生き物は基本近づいてこないけど(僕がいるから)、身を隠すのも上手い。ここにやってきたとき以外は見ていないけど、多少の戦う術も身に付けているようだった。

僕は身体能力がずば抜けて高いらしいし、他の生き物が寄ってこないから、戦い方なんてわからない。


そもそも、この世界に対する僕の知識は浅い。

この世界で過ごしていた長い間は、基本的に寝ていたし。その時の気分のまま過ごしてたし、思うまま振る舞っていた。力業でなんとかなってたし。

子育ての真似事のようなことはしたことあるけど、その時は相手が望むまま行動していた、ような気がする。あっちの子も、よく無事に育ったよなぁ。


というわけで、世情どころか、この世界そのもののこともよく分からない僕なのです。



……後で謎の偉い人に聞いてみようかな。でも何を聞けばいいのかな?ま、いつでも連絡とれるなら、気になったときに聞けばいいか。

そうそう、あの人と連絡とれるんだよ。本来なら一方通行で、こちら側からは接触出来ないらしいんだけど。僕の場合はちょっと変わったケースで、双方向やりとりが可能だ。何時でも即座に反応、とまではいかないけど、呼び掛けたら大抵返事をくれる。

僕の無意味な呼び掛けですら、可愛いポーズ1回で許してくれるからね!可愛いって罪ね~。ププ。



閑話休題。



さて。あの子は生きることに貪欲だ。具体的にいうと、毎日獲物を捕まえることにとても熱心だ。僕が毎日捕まえてるけど、自分で試行錯誤して獲物を捕らえることに余念がない。

兎に似た生き物の上手い追い詰め方、けっこう大きな鳥を捕まえる罠の作り方と捌き方、捌いた肉の保存や熟成の仕方。いやー勉強になるなあ。


僕の関心が肉に片寄るのは仕方ない、猫は肉食動物だからだ。そういうことにしておこう。



その中で僕の目を引いたのは、「魔術」だった。


いや、「魔術」という表現が正しいのかはわからない。他に適した表現を思い付かないだけた。

あの子は、やけに立派な杖を持っていた。長さは約30センチほど。飴色の艶が美しい、何かの木で出来ているであろうその杖は、あの子に不釣り合いなほどに年季が入っていて、そして美しかった。杖の周りをよく見ると、きらきらしたものが波打っているのがわかった。


あれは何なんだろう。いや、あの子の身体にも、このきらきらはある。森の木々や草花にも、他の生き物にも。逆にきらきらがないほうが珍しい。

でもこのきらきらがなんなのか、僕にはよく分からない。

ちなみにぼくもめっちゃきらきらだよ!普段から見えるとまぶしいから、だいたい視界オフしてますけど。何でそんなことが出来るのかって?知りませーん。



『ーーーーーーーーー』


何かを唱えながら、複雑に杖を動かす。杖の周囲のきらきらがさらに揺らめき、そして。


ザシュッ!


風の刃で、並べてあった3羽の鳥の首が切り裂かれた。


最近家の回りで野良猫見ないのです。かなしい…さみしい…

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