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パルーは驚いていた。

結果的に、サブとかいう魔獣の世話は、ローノの言った通り何もすることがなかったのだった。せいぜい最初に寝床を作ってやったぐらいだったが、そこも利用したりしなかったりだ。



食事は自分で狩るし(船縁やマストに止まる鳥を捕まえていた)、船に乗っている人から食べ物をもらうことも多い。パルーが食事を持っていったときは、前足でちょいちょいと突き返され、そっぽを向かれてしまった。どうやらお気に召さなかったらしい。

自分で捕まえた鳥を、船の厨房に持っていって周囲を驚かせたこともあった。結果、料理長自らさばいて、サブに与えていた。食べるのは一部だけで殆ど手を付けないので、残りはありがたく船員のみんなで頂いた。生物の少ない船の上、サブの取ってくる鳥は大変に喜ばれた。


2、3日もすると、船中の人にサブの存在が広まった。娯楽の少ない船の上だ、可愛らしく人懐こい生き物の噂はあっと言う間に広まり、瞬く間に大人気となった。

子供から大人まで、皆がサブに構いたがった。そんな状況が嫌になったのか、サブは時折ふいっといなくなることがあった。そんなときは、誰が探してもサブを見つけられないのだった。



サブはいたずらをするでもなく、大抵どこかをふらふらしているか、寝ているかのどちらかだった。客室に入り込んでいる事も多いらしく、何度か乗客の膝の上に丸まっているのを見かけた。パルーはちょっとだけ悔しかった。



そんな日が何日か続いたあと。

船は次の停泊場所、ロスリックスへ到着した。




「サンデローネのエッちゃん、ねえ。本名は?」


「えっ、エッちゃんとしか知らないっす」


怪訝そうな顔をしたロスリックスの冒険者組合の職員は、それでも一応調べてくれるようだ。大人しくカウンターのうえで寝っ転がっているサブは、職員に顎の下をかしかしされてうるるるる、と喉を鳴らしてごきげんそうにしている。そのうち何人かの職員が集まってきて、順番に撫でられたりかわいいかわいいと言われたりして、もう皆の心を掴んでしまったようだ。かわいいって得だ。


「本当だ、本名エッチャンだわ。ほら、首輪のところにプレートが付いてる。この子はタマサブロウかぁ、こっちも変わった名前ねえ」


ちょっとサンデローネの組合に問い合わせしてきますね、と言われたパルー達は、大人しく席について待っていた。ちなみにパルーの付き添いはヴァルックだ。船に乗った頃から色々と世話になっていて、パルーのお目付け役みたいになっていた。


ヴァルックは生き物があまり好きではないが、サブはむしろヴァルックが好きなようだった。休憩中のヴァルックには高確率ですり寄っていくし、座っていれば膝の上にも乗る。ヴァルックは普段から不機嫌そうな顔をしているが、サブが近寄ってきたときもやっぱり不機嫌そうだ。それでも邪険にすることはなく、されるがままになっている。たまに撫でてやったりしてるのも、パルーは知っている。

ちなみにパルーの膝の上には来たことがない。


今もサブはカウンターに置かれたヴァルックの腕によりそって、さっきから前足をしきりに舐めている。周囲の「かわいい〜」の声ににゃあと返事するように鳴き、愛想を振り撒いているように見えてなんだかむっとしてしまった。


たいしてやることはないけど、俺が世話してやってるのに。おれにはあんまり構ってくれないのに。


パルーは知らない。ネコは構いたがりを好まないことが多い。ネコではなくカッツだが、サブも構いたがりがあまり好きではないのだった。






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