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冒険者組合の裏口からこそこそと脱出させてもらった僕たち。エッちゃんはガントレーさんから借りたマントのフードを深く被り、僕はそのマントの中に隠れている。
なんでこんなことしてるのかって?
だって、これ以上の面倒事はご免だもん。
7級冒険者になったらパーティが組める。僕たちには、これが厄介だった。
前々から、他の冒険者から声をかけられることが多かった。パーティを組まないかって。エッちゃん美形だし、魔術使えるし、美形だし、魔獣つれてるし、美形だし、魔獣つれてるってことは魔獣が認めるほど本人が強いってことだし、美形だし。
7級になったら。いや、8級の今のうちから、君を予約させて欲しい。昇給するためのサポートも惜しまない。ぜひ、うちの一員になってくれ。
そんな言葉を何回かけられたことか。
いままでは、まだ8級だから、実力で7級に上がるまでは待ってくれ、などという理由で何とか回避してきた。こちらの都合なんて知ったこっちゃないからね、しつこく誘ってくる奴らは。旅をしてるっていってんだろ、もー!
僕はのんびりすごしたいの。移動の自由と、世間を知るために冒険者になったに過ぎない。
冒険者になったが、冒険をする気は今のところないのだ。
僕は気の向くままに過ごしたい。
そのため、そんな奴らに見付からないようにコソコソしているってわけ。
ちなみに不自然にならない程度に気配も消しております。エッちゃーん、このあとは明日の朝まで宿にこもるってことでおっけー?
こくり、と頷くエッちゃん。あ、声も出さないほうがいいよね、失敬。
あー、もう日が暮れるー。
今日捕まえた鳥、食べたかったなー。ガントレーさんに捕まったせいで、解体依頼をするのが遅くなってしまった。受け取りが明日の朝いちって、今日食べたかったのにー。
余談だが、解体カウンターに出したときにしきりに「買い取らせてくれ」って言われた。アシさんだけでなくこっちもか。いーやー。
泊まっている宿にも裏口から入らせてもらって、僕たちは部屋に入った。宿の女将さんには、誰も通さないようにってお願いしておくのも忘れないよ。あ、晩御飯はいりませんので。
さて、エッちゃんと二人で、きょうはもう寝よー。
え?反省会?今日じゃなきゃダメ?
翌朝。
しばらく泊まっていたこの宿のとも今日でおさらばだ。
荷物の整理を終えて、宿の料金を精算し、僕らは再び裏口から外へ出た。
昨日借りたマントを被り、こそこそと冒険者組合へ。
昨日のうちに話はしてあったので、冒険者プレートはすぐ受け取ることが出来た。組合入口近くでガントレーさんが待ち構えていて、そのまま裏の方へ引っ張っていかれて、出来上がったばかりだというプレートを見せてくれた。
僕の目の色と同じ、青い石だ。陽の光を浴びてキラリと光るその魔石は、小粒だがとても綺麗だ。
(私の選んだ首輪の魔石の方が似合ってます)
もーエッちゃん、そんなとこで張り合わないの。
「お前らの正体を明かすのは、今のところこの街の冒険者組合長だけだ。領主たちにも明かす予定はないが、場合によっては知らせることになるかもしれん。それは済まないが了承してくれ」
まぁ、偉い人はいろいろ義務も責任も負ってるからね。僕がうっかりなんかやらかすかもしれないし。今回みたいに。
エッちゃんは嫌そうな顔をしていたけど、あれはフリだろう。
エッちゃんはずっといるわけじゃない。
いつでも消えられるし、現れることが出来る。人間のフリしてる間は面倒なんだろうけど、楽しんでる節もあるし。
僕の先生役だって、つきっきりという約束ではないのだ。
そう、エッちゃんとは、この試験後に一旦お別れすることになっている。
昨日の夜、エッちゃんと話した。
一旦エッちゃんは本体のところに戻るということ。
期間は未定。
トレーニングは引き続き続けること。僕の場合、意識して出来ないだけで無意識には出来てることが多いから、今はその無意識にやっていることを、意識して感じ取れるように普段から気を付けて過ごすこと。
首輪の魔石には実は収納機能がついていて、お金や色々なものがしまってある。意識を集中すれば入っているものはわかるし、念じれば出し入れできるらしい。
他にも、用事があってもなくても再びちょこちょこ現れるつもりではあることや、色々な注意事項をいわれました。
覚えきれないよ、と言ったら、頭の片隅にあれば大丈夫ですよって。エッちゃんは綺麗な顔でにっこりと笑った。
寂しくなるなー。
ここんとこずっとエニシとかエッちゃんとか、人と一緒に過ごしてたからな。
まぁ、気ままな生活にもどるだけだ。
それはそれでいいか。




