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ちなみに、エッちゃんが結界を展開したのは、僕が発する魔素が外にもれないようにするためだったらしい。
エッちゃんも僕もなんともないけど、ガントレーさんはあのあとしばらく声を発することも出来なかった。顔色真っ白、唇真っ青。魔素にあてられると、こんなふうになっちゃうんだ。知らなかった。
ようやく起き上がったガントレーさん。椅子に深く腰掛けなおし、深くため息をついたその顔からは、最初の険しさがとれていた。
「まぁ、なんだ。たしかにこれで、魔獣の異常行動や魔素の原因についてはよくわかった」
眉間をもみもみ。口調もいつもの感じに戻っている。
「サブが興奮しちまった原因は何だったんだ?」
ああ、とエッちゃんはにっこりと笑う。
「そちらを含め、合計3人もの尾行者がいたものでね、サブがイライラしてしまったんですよ。それで、さっさと試験を終わらせようと興奮して走り出してしまって」
言外に、尾行者をつけたそっちにも原因があるんだぞ、と匂わす。これには、ガントレー副組合長もグッと押し黙るしかない。
噂の盗賊団を捕まえることばかりに注意がいってしまい、確かに配慮に欠いた行動だった。少なくとも、事前に試験官を装った冒険者組合員が付くことは伝えておいてよかったかもしれない。そう思わせることで、こちらが精神的に優位に立つ。
イヤン、エッちゃんやりますなぁ。
バレていたか、とこぼしたガントレーさんは、頭を下げた。
「…すまなかった。結果として、お前達を危険に晒してしまった。まさか尾行者が3人もつくとは、こちらの想定外だ。無事でよかった」
ねー、3人は多いよ。
「まあ、一人は私達の身の安全を心配した知り合いがつけてくれた人だったので。しかし、三つ巴で戦闘になりそうになったときはどうしようかと思いましたよ」
じわじわとガントレーさんを追い込むエッちゃん。
まだ根に持ってるのかな?それともそういうフリして優位に立つことが目的かな?
「ここからは提案なのですが」
おっ、話が急転直下の予感。
「あなた達は、サブに首輪をつけたいですよね?」
もう首輪ついてるけどねー。
「それは、許可してもよいと魔獣王様は仰っています。ただし、行動を制限することは許さない、と。また、必要最低限以外の人物に私達のことを明かすのも認めません」
なるほどー、そういう落とし所ね。
「今ここで、判断してください。私達は別に、何かをやらかそうというわけではないんです。あちこち旅してみようか、くらいの気持ちなんですよ。逆に言えば、ここで冒険者登録しなくてもなんの問題もありません。もっと言えば、冒険者組合に所属しなくても構わないんですよ」
「…俺は副組合長だ。組合長に相談したい」
「ダメです。いまここで約束していただけなければ、身分剥奪を選びます。すぐにでもこの街を出ますよ。あなたにその権限があるのはわかっています」
ぐうう、とうなるガントレー副組合長。
畳み掛けるねー、エッちゃん。かっこいいー、ひゅーひゅー。
(これはオマケてすからね。本来ならこういうやり取りも時分で出来るようになっていただかないと)
僕喋れないのにどうやって交渉するの?
(そこも含めての、お勉強です)
はぁい。
その結果。
ガントレー副組合長は、エッちゃんの要求をそのまま呑んだ。もうちょっとごねるかとも思ったけど、案外早々と決断してくれたねー。
首輪代わりとして、僕につける方の冒険者プレートに、魔石をはめ込むことになった。居場所を特定する魔術が仕込んであるらしい。
エッちゃんが買ってくれた、僕の首輪の魔石の上位版かな?
(私が買った首輪についている魔石の魔術なんて、所詮おまけですからね。サブならなんとでもできるでしょうし、そんな魔石がなくともサブの居場所はわかりますし)
ですよねー。エッちゃんだもんね。
じゃあこの魔石はなんでつけたん?
(対外的っていうのもありますが、なによりサブに似合う色をしていたから選んだんですよ。綺麗でしょう?)
ううーん、僕愛されてるぅ。
冒険者プレートにはめ込む魔石は、超特急で準備してくれるらしい。明日朝にもう一度冒険者組合に来ることを約束して、僕たちはようやく開放された。
あー長い一日だった!




