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まずは、と話を切り出したいかつい職員、もといガントレー冒険者組合副組合長。


「これがお前達の冒険者プレートだ、確認してくれ」


そう言って手渡されたのは、銀色の薄くて四角いプレートが2枚。片面にはエッちゃんと僕の名前、そして7級という文字が彫り込まれていて、もう片面には模様が彫り込まれている。左右対称なその模様は、左右組み合わせると一つの模様になるような造りになっているようだ。


「見りゃわかると思うが、2つで1つのプレートだ。この魔獣は冒険者の相棒だ、ってわかるように、しっかりそのカッツにくくりつけておいてくれ。何かあったらこのプレートが必要になるからな」


細い鎖がついているそのプレートの1つを、エッちゃんは首からかけた。そしてもう一つを、僕の首からかけ、元々あった首輪と絡ませるようにして固定した。その慣れない重さに違和感を感じて首を軽く振ると、チャリ、と音がした。


エッちゃんとペアのアクセサリーなんて、サブちょっと恥ずかしー。

ペシ、と軽く頭を叩かれた。うにゃん、冗談だってば。



「さて、わかってるとは思うがここからが本題だ」


ですよねー。

偉い人がわざわざこんな説明のためだけに来るわけないよね。あー面倒事のよかーん。



「お前達のことはマキムから報告を受けている。魔獣の異常な行動と、強力な魔素の発露について、知っていることを洗い浚い吐いてもらおうか」


あ、それ僕も気になってた。


「場合によっては今渡したその冒険者プレートを回収して冒険者としての身分を剥奪するから、心して答えろ」


えー!なにそれ、横暴!

いやさ、僕ら何も悪い事してないし、一から十まで喋っても問題ないけどさ。なんでそんなに喧嘩腰なん?そんな姿勢で来られたら、こっちの心象を悪くするってわかるでしょうに。なんかやな感じ。やな感じ!


でもなー。うーん。

ここで喋らないと、それはそれで面倒くさい気もするんだよな。


どうしよー。

あー、考えるのも面倒。


(どうしますか、サブ?これも勉強です、ここでの対応はサブの判断に任せますよ?)


ありゃ、エッちゃんに丸投げしようとしたのがバレた?






これは分の悪い掛けだ、とガントレーは内心呻いていた。

こんな役回り、組合長が不在じゃなければ絶対やらなかったのに。そもそもこういうのは俺は向いていないんだ、とさっきまで愚痴をこぼしていたが、ここまで来たらやるしかない。

報告に上がってきた魔獣の暴走やら強烈な魔素とやらがこの冒険者に関係しているなら、対応できるのは今いる組合員では自分含めてごく少数。さらに冒険者組合の権限行使のことを考えると、対応出来るのは今は自分しか居ないのだ。


(畜生)


答えてもらうしかない、が、答えて貰えるとは思えない。だいたい魔獣を連れた魔術使いなんてやってるんだ、訳アリに決まっている。この街に来るまでの足取りも掴めないし、そもそも冒険者登録したのがこの街だ。冒険者組合でわかることなどたかが知れている。


大体答えてもらえたとしても、こちらにはそれが本当か確かめるすべがない。そもそもこちらの予想が当たっているのなら、たかが1つの街の冒険者組合で対応できる範囲を超えている。

この冒険者と魔獣を、このまま野放しにして良いのか、正直自分には判断がつかない。


しかし。

舐められるわけにもいかない。冒険者たるもの、冒険者組合の意向には従ってもらわねばならぬのだ。でなければ、規律が保てなくなる。住民をむやみに危険に晒す行為をしたとなれば、見逃すわけにはいかない。


(畜生)


攻撃されたときに備えて、扉の外には手練の組合員を配置しようかとも思った。が、やめた。お行儀のよい7級冒険者なら必要がないし、こちらに向かってくるようなら、今いる組合員ではとても対応しきれない。


(畜生、大人しく、正直に答えてくれよ…!)



ちなみにマキムはツイていない冒険者だが、ガントレーは、貧乏くじを引くことが多い。






ねーエッちゃん、正直に喋るとどんな面倒なことがおきそう?


(首輪をつけられる、ってところですかね。あとは交渉次第かと)


ちなみに、魔素がどうたらこうたらとか、やっぱり僕が原因なの?


(そうです)


うーーん。

うーーーん。

うるるると喉がなり、尻尾がせわしなく動く。



ふと、目の前のガントレーさんと目があった。



いいか。


(?)


エッちゃん、話しちゃおう。


手を組み、険しい顔でこちらをじっと見つめるガントレーさん。その目に、すがるような、祈るような光を感じて、感じていた不快感がすっと収まってしまった。

この人なら、きっと何があっても悪いようにはしないよう努力してくれるだろう。


そもそも、僕は物事を深く考えることには向いていないのだ。何か面倒なことが起きたら、その時はその時。力業でなんとでもなるさー。


そうですか、と呟いたエッちゃん。

顎に手を当てて少し考えたあと、手をぱん!と叩き、

ガントレーさんに向かって話し始めた。

あ、結界ができてる。



「まず、ここにいるのはリファーカの魔獣王です」



ブフォッ、とむせる副組合長。きちゃないなぁ。


「私は縁あってこのリファーカの魔獣王に同行しています。先日もとの住処から移動してきました。冒険者になろうと思ったのは、身分証があったほうが何かと便利だからです」


「ちょ、ちょっとまってくれ」


「ご存知の通り、リファーカの魔獣王はいつも寝てばかりで殆ど動きません。しかし今回、あちこちを歩き回ってみようということになりまして」


「一旦整理させてくれ!」


無視して話し続けるエッちゃん。


「この街で冒険者証を得ようとして、本日7級昇級試験に参加した次第です」



「……魔獣の異常行動と魔素の発露については」


「魔獣王が興奮したせいですね。全力で走り回っていたら、抑えていた力が漏れ出してしまったんです。その魔素を感知した魔獣達生き物達が、パニックを起こして逃げ惑ったというわけです」

 

「その漏れ出した魔素が、マキムの感じた強烈な魔素だということか?」


「いえ違いますよ。サブ、ちょっとテンション高めに遠吠えしてみてください」


えー急に?喉の調子も整えてないのにぃ。

コホン。はいいきますよー。



にゃおおおーーーん!




ビリビリビリビリッ!と結界内部が揺れた。ううーん、気持ちいい。

エッちゃんも微笑ましそうに僕を見ていて、ガントレーさんは…あれ?地面にうずくまってる。


あ、みんなが気絶したり、マキムさんが膝ついて警戒してたのって、このせいか!

鳴き声に魔素がのっかっちゃってるのね?


「正確には、鳴き声を発しようとした段階でもう魔素が吹き出してますよ」


あ、そうなの。あれか、魔素の衝撃波みたいなのを放ってしまったのね?強力な魔素に触れると、魔力酔いを起こして気絶するんだっけ。


「この至近距離で耐えているガントレーさんはなかなかにお強い方ですね」


さっすが、冒険者組合副組合長!


「……よぉく、わかった…」


そして地面に完全に倒れ込むガントレーさん。

ありゃ。大丈夫かしら。


「大丈夫ですよ、起きるまでほっときましょう」


エッちゃんは一連の流れに不快感を感じてたのか、仕返しができてスッキリした顔をしている。ほらほら、美形の眉間にしわが寄っても女の子たちが色めきだっちゃうだけだからー。

エッちゃんの眉間に左手をおいてみたら、そのまま抱え込まれてめっちゃお腹吸われた。お腹なくなっちゃいそうでちょっと怖いよ。



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