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商人達がいるという薬草の群生地は、この鬱蒼と茂る森の小道をしばらく進んだ先にあるらしい。あまり代わり映えしない、獣道と言っても差し支えないような道を、途中の分岐も迷うことなくエッちゃんはずんずん進んでいく。
ねーエッちゃん、休憩しなくていいの?普通の人は休憩するんじゃない?
よくわからんけど、このまま歩き続けるん?とエッちゃんに尋ねる。後ろに人もいるし、不審がられないほうがいいんでない?
エッちゃんの腕の中にするりんと移動して、顔を見上げる。相変わらずの顔面凶器ですね。思わず目がぁ!とか言いたくなっちゃう。
まだまだ大丈夫ですよ、と僕の頭をなでなでするエッちゃんは、疲れた様子がない。
当然だ、エッちゃんは外見こそ人だが、実際は本体から別れた分体とやらで、普段とくに疲れも感じないし、食事も必要としないという。
でも人の生活に紛れ込んでいるから、それらしき行動をとっているっていってたはず。
普通の冒険者はそう頻繁には休憩しないのかね?体力?
でもお水飲むふりぐらいしたらいいと思うよ。
まっいいかぁ。はやく試験終わらせたいしー。
そんな僕らの後ろからは、森に乗じてそろりそろりと距離を詰めてくる、怪しげな尾行者が3名。
ああ、そろそろ戦闘になりそうですねえ、とエッちゃんが他人事のように呟いた。
ありゃ、ここでおっぱじめちゃうの?拠点に情報持って帰るとか、出直すのかと思ってた。尾行してた人達だってお互いに気づいてたでしょうに。3すくみで動けなくなってたんじゃないの?
どうやらそうでもなさそうですねえ、と呑気に歩き続けるエッちゃんは、我関せずといったところ。僕も関したくなーい。めんどーな予感。
なんだかちょっとイラッとしてきた。
これ試験関係ないよね?なんでこんなことになるの?
僕らお手紙届けるだけでしょー!
でも、どうやら一人は昇級試験の関係者っぽいんだよなぁ。ほっといたら減点になったりする?
えー僕らの試験内容に関係ないよね??
んんんーン、ぶにゃあぁ。
エッちゃん。
走ってもいい?
「どうぞ、サブのお好きなように」
ひさびさの躍動感あふれる僕が見られる予感に、目を輝かせるエッちゃん。
よし。
うち(目的地)まで競争!
エッちゃんの腕の中から勢いよく飛び出し、僕はそのまま駆け出した。
後ろからはエッちゃんが、あっずるーい、待ってー!とノリよく返しつつ追いかけてくる。
その知識はどこで仕入れたん?
よし、目的地へ急ぐぞー!
面倒事には関わらないに限る!
「本気で走られたら私が追い付けないですよ!人なんですから!」
じゃああとからきてー!今とっても走りたい気分だからー!
久しぶりの全力疾走だ!
ああ、楽しい!
木を駆け登るときの爪の引っ掛かり具合、肉球に触れる幹の感触。枝から枝へ飛びうつるときの、ひげを揺らす強い風。全身のバネを使って伸び、身体中の筋肉が躍動する感覚。
「サブーーー!遠くへ行きすぎないようにー!」
はーい!
ひゃっほーーう!
ザザザザッと、わざと草むらの中を走り抜け、岩の上から飛び降りる。
無心で駆ける。駆ける。駆ける。
たまには全力で運動しないとー!気持ちいいい!
僕は今、風になっている!
森の中を縦横無尽に駆け回る。
今だけは森の生き物達のことも気にしない。
どけどけー、お猫様のお通りだー!
そんなことをしていたら、あっという間に目的地である薬草の群生地を通り過ぎてしまっていたらしい。
おっとっと。目的を見失っていたぜい。
ふー気持ちよかった!
えーと、どこだ?
お、いたいた!
テンションが上がった僕は、つい叫んでしまった。
「にゃおおーーーーーーん!」
はっけーん!お手紙届けに来たよ!
これで試験クリアだ!!
あっお手紙忘れてた!エッちゃんの荷物の中だ!
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良くない勘ほどよく当たる。
マキムは、近づいてくる気配を感じた瞬間、そう思った。
良い予感は外れるクセにと毒づきつつ、商人と冒険者の少女に駆け寄る。
この状況はまずい。想定した中でも非常に厄介な部類だ。
「何かが来る!俺のそばから離れないで!」
近くの木を背に二人を庇いつつ、鋭く前方に視線を向ける。
近づいてくる気配は、2、いや3。いや4?
こめかみから汗が一筋流れおちた。
まずい、こんなに複数の生物に襲われるのは想定外だ。
今持っている高価な魔物避けの香が効かないとは、何かあったとしか思えない。
弓に矢をつがえて狙いを定めつつ、息をひそめる。
身を隠す場所が少ない、ひらけた群生地であることが仇になる。相手が現れたら、すぐに攻撃を仕掛けなければ。後ろの二人が狙われる前に、自分に注意を向けさせねばならない。
しかし、複数の敵に一度に襲われるとは。
しかもまだ目的の盗賊を捕まえたという連絡は来ていない。
ツイてない。
ツイてないぞ。
余談だが、マキムは割と普段からツイてない。
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