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ううーん、いい天気。あふぁ。


さくさくと草を分ける足音が心地よい。

日差しのぬくもりに包まれながら、一定のリズムを刻む振動に身を委ねながら、ぼくはウトウトと心地よいまどろみを満喫している。現在エッちゃんの背負っている荷物の上で丸まっているタマサブローです。



町の検問を通過して、街道を外れて草原を行くエッちゃんの足は淀みがない。目的地もバッチリ把握してる。薬草の生えている場所は冒険者組合で調べて来たけど、それにプラスして人の気配を追っているのだ。

冒険者組合で確認した当該人物、一緒にいる冒険者は2名。計3名のグループの気配で、かつその薬草の群生地となると、現在のところ該当するのは一組しかいないのだ。

え?そんな遠くの気配をどうやって知るのかって?

やだなぁなにいってるのー、僕とエッちゃんですよ?気配探るのなんてラクショーですのよ。



一人突っ込みをしつつ、背中で揺られること暫し。

なだらかな丘を越えた先、木々が生い茂っているのが見えた。草木に埋もれるようにして、一本の小道が森の奥の方へ伸びている。

目的地はその先だ。




僕らはそのまま森の中に入った。後ろからは相変わらず尾行してくる3名が、お互い付かず離れずの距離を保っています。

ねーエッちゃーん、そろそろ喋っておっけーじゃない?


そうですね、そろそろ小声ならいいでしょう、と呟いたエッちゃん。森のざわめきが小さな声をかきけしてくれる。


エッちゃんの長い指が、僕の顎をかしかしとくすぐった。

うにゃん。もっとして。あーそこそこッ。



「ねぇ、サブ。着いてくる人達、どうします?」


えー。

ほっといてよくない?敵じゃないしー。試験とっとと終わらせたいよー。

右手をなめなめ。がぶがぶ。がぶがぶがぶ。なめなめ。

あっ、エッちゃんそこっ。耳の付け根、気持ちいいー。



「少なくとも一人は敵ですよ?」


いやいや、わかってますよ。敵じゃないってのは、弱いって意味です。僕らの敵じゃないでしょ。

あれでしょ、一人は僕を捕まえたいんでしょ。

猫の額もこしょこしょしてー。ああんいい。エッちゃん素敵。


「わかってましたか」


エッちゃんのテクニックに翻弄されながら、にゃーん、と返事する。

そりゃ、まぁ。聞こえてるしねぇ。猫って耳もいいから。



ま、僕めっちゃ可愛いから仕方ないよねー。あー猫最高。知ってる。最高。

しっかし、カッツって割と珍しかったのねー。


尾行してくるうちの一人は、僕を捕まえようとしている盗賊団の一員のようだ。低ランク冒険者がカッツをつれている、という情報を仕入れた盗賊団が、僕を捕まえて売り飛ばそうとしているらしい。カッツはそこそこ珍しいので、いいお値段がつくとか。



カッツは、魔獣である。いくら可愛かろうとも、小さかろうとも。

魔獣を飼うという文化自体は、割と昔からあったらしい。ただし、大富豪の物好きの道楽だったようだ。カッツ含め、魔獣を捕まえるのは大変だし、さらに人に懐かせるというのはもっと難しい。当然、数も少ないし、非常に高価になる。

昔は毛皮だけでも相当な値段がついたとか。



そして最近、魔獣をペットとして飼うのがブームになってきているそうだ。

魔獣の流通量が少しずつ増えてきているらしい。特に小型の魔獣の人気が高く、愛玩用として買い求める富裕層が増加傾向とのこと。

お茶会やパーティーなんかお披露目し、自らの力をアピールする。手に入れることが出来る財力や人脈を持っている、と。


でそれに伴い、需要増加を見込んだ商人らや何らやの間で、魔獣を仕入れようとする動きが活発になっていると。

カッツ?警戒心が強いのと、生息地域がけっこう人里から離れてるとかで、割と流通が少ないんだってー。



以上、僕のとっても良い耳が拾った情報でした。

あと、動物好きなおやっさんも注意喚起してくれました。見た目も中身もヤクザなおやっさん、美味しいごはんくれたから覚えてるよ!こんどまた何か差し入れしよー。



おっと話がそれた。



まぁー、ねぇ。欲しがる人がいるのはわかる。可愛いからね。分かるよ。手元においておきたいよね!可愛がりたいよね!

でも可愛がらせてもらえるかはわからないジャーン?少なくとも僕は簡単には触らせてあげないから!

そもそも捕まってあげないけどね。



「首輪だってつけてるのに、どうするつもりなんでしょうねぇ。この飼い主登録、変更できないのに」


そう、僕はお高い首輪をしてる。エッちゃんを飼い主登録してるやつ。なかなか気に入ってる。

飼い主以外には外せないし、飼い主の登録もしてある。当然、盗まれたりなんかしたら、その首輪を目印に探せばよいわけで。

そうそう。追跡できるのだ。首輪に嵌まっている石に魔術がかかっていて、どの方向にいるのか分かるらしい。

無理に外そうとすると、なんかダメージを与える魔術も付与されている石もついているらしい。魔術が込められた石って高価なんだってさ。

それにアクセサリーとしての完成度も高ければ、そもそも使われている素材も高い。そりゃいいお値段しますよねー。



ふふ、とエッちゃんが笑う。うぉう眩しっ!麗しっ!

「魔術にちょっと加工しちゃいましたからね、腕ぐらいなら軽く吹っ飛びますよ」


おお…僕への愛をひしひしと感じるよ!

で、それって僕は安全なの?ねぇ?


「サブは渡しませんよ」


ちょっとヤンデレっぽい。






今回はありがたいねぇ、こんな高ランク冒険者が護衛についてくださるなんて、と笑う男に対し、マキムは笑みを返した。


薬草摘みに精を出す商人の男と、もう一人の冒険者。自分は護衛、もう一人の冒険者はまだ子供で、薬草摘みの手伝いの依頼を受けた者だ。自分とも顔見知りである。


今回は商人の依頼した量を確保したら、さらに上乗せで買い取るか、自分のものにしてよいとのことで、その少女は張り切って薬草を摘み取っている。途中で休憩を促すことが必要かもしれない。

張り切る少女と、その様子をほほえましそうに眺める商人。

なんとも平和な光景だ。



しかし、マキムにとって危険な任務だ。

(今回の本題は、薬草採取での護衛ではないからな)



マキムは周囲に目を走らせる。

結果として今回おとり役となった商人に対して、申し訳ない気持ちを押し殺しながら。




最近活動を活発化させているある盗賊団。その一部が、ある冒険者のつれている魔獣を狙っているという情報が入ったのは、数日前のことだ。

通常、冒険者の連れている魔獣を狙う盗賊はいない。なぜなら、その冒険者は魔獣を従えるほどの実力者であるし、魔獣を連れている冒険者というのは珍しいので、大抵が魔獣の姿形とともに名が知られている。

もし首尾よく手に入れられたとしても、足がつくことを恐れて買い手がつかないのだ。


しかし今回、魔獣を連れているのが低ランクの冒険者ということで、手を出そうとしている馬鹿な連中がいるらしい。

そして、この昇級試験に参加することを知ったその盗賊団の連中が、これ幸いと試験に乗じて狙いに来る、と。



(魔獣連れの魔術使いが低ランクなんて、事情があるにきまってるじゃないか)



なかなか尻尾を出さないその盗賊団を捕まえるチャンスだと、冒険者組合が気合を入れて今回の試験を仕組んでいる。

こちらに到着する前には、連中を捕まえる手筈となっているが、油断はできない。



(場合によってはこの場で戦闘になるかもしれないからな)


おとりとしての商人の護衛、そして、場合によっては盗賊団の捕縛。

それがマキムの任務だ。


(何事もなく済めばいいか…)



あまり良い予感がしないのは、なぜだろう。




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