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静寂。

普段鳴いている鳥や魔獣達も、物音ひとつ立てない。サワサワと、この森には不自然なほど葉擦れの音が響く。

平和だなー。

あー、空が青いなー。



……なんじゃい。

このメロメロパンチが効かぬとは、おぬし動物嫌いか?むしゃぶりつきたくなるだろう!もしくは膝をついて天を仰ぐとか!こんっっなに僕かわいいのに!あーもう恥ずかしい恥ずかしいっあーーー恥ずかしっああもうっ!


豪快なへそ天状態でごろごろくねくねうにゃうにゃ、お、落ち着こう。毛の乱れを一心不乱に舐めて整える。前足、胸、お腹、股、後ろ足、尻尾。尻尾をあぐあぐペロペロ。

ふーすっきり!伸びーー。んー尻尾の先までオッケー。落ち着いた。


さ。

あいつにはメロメロパンチ(物理)をお見舞いだぜ。


スタッと立ち上がる。泣いていた少女は、その場から動かない。こちらを見つめている。僕の愛らしさに、じゃなくって。あー猫の事になると愛が溢れて仕方ない。かわいいですよね猫。また脱線した。そうじゃなくて。


少女は、涙をこぼしつつ浅い呼吸を繰り返していた。こっちを見ているようで、見ていない。

足の痙攣、手をすぼめたような形。この状態、覚えがある。


僕は少女にゆっくりと近づいた。そして、座り込んでいた少女の膝に、そっと右足を置いた。

はっとしてこちらを向いた少女を、じっと見つめる。よし、意識はこちらにむいた。あとは、とにかく呼吸を整えないといけない。


はらはらと涙が溢れていく様を、ひたすら見つめた。

この少女は今、混乱している。恐らく、僕以外についても。

肩の力が少し抜けたのを見計らって、膝に乗った。僕の体温で更に意識を分散させる。

あ、手が動いた?強ばり解けてきた?よしよし、いいぞ。あとは呼吸を、吐く息を長めにしてほしいんだけど、言葉は伝わらないし仕方ない。このまま落ち着くまで待とう。


15分位経っただろうか。少女の身体の強ばりが解けて、ようやく呼吸も落ち着いた。ここでだめ押しといくか。


「なぁん」

ちっちゃな声で、首を傾げつつ、可愛らしく。そして頭を少女の手にそっと擦り付けた。


少女は再び固まった。でもさっきみたいな過呼吸状態ではなく、単に驚いた顔。その赤い頬にむかって、よし、いまだ!



メロメロパーンチ!もしくは肉球アタック!



少女がばたんと倒れた。あれ?力強すぎた?!




そんなこんなで、結局少女が完全に落ち着くまで一時間ほどかかった。左頬に肉球の跡、右側頭部に擦り傷。ごめんなさい優しくやったつもりだったんだけど……。残り少ない体力、更に半分くらい削ってしまった気がする。


ぼーっと放心状態の少女をおいて、ひとっ走り果物でもとってこよう。周りに生き物の気配はないし、ほっといて大丈夫だろう。10分くらいで戻るよー。

ま、伝わらないけどね。


これとー、これとー、これでいいか。

果物を咥えて駆け戻る。よかった、まだ岩の前から動いてない。

目の前に果物を置く。お食べー。


……おおう、めっちゃ食べてる。お腹すいてたのかな。もっと取ってこよう。

今度は魚でも捕まえようかな?いや食べごたえのあるもののほうがいいかな?あ、水も必要かも。あー忙しい!


あの痩せ具合、普段からろくに食事も取れていないんだろう。消化の良さそうなものから少しずつ与えたほうがいいかも。

うーん、お粥とかないしなー。やっぱり果物、水分多めのやつから根気よくあげていこう。胃腸に負担をかけさせるのはよくないし。


そして僕は森に逆戻りした。

……あれ、デジャヴ。子育てかな?


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