表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/35

19

「諸君には手紙を配達してもらいたい」


これが今回の7級への昇級試験内容らしい。

朝一で冒険者組合の中庭広場に集まった受験生達。

大半が、子供だ。

そこへやってきた試験官さん達が持ってきたのは、大量の手紙だった。今回の受験生分用意された手紙は、山のように積み上がっている。

一人一人名前を呼ばれて、手紙を受けとった。

配布された手紙の表面には、住所と宛名、依頼主の名が記載されている。


「ただし、次の点を守ってもらう。一、手紙は開封しないこと。二、受領サインを書いてもらい、本日中に冒険者組合カウンターまで持ってくること。三、間違いなく本人に渡すこと。不明点があれば都度職員に質問してもらってかまわない」


今回の受験生達がざわざわしてる。

それもわかる。だって手紙の配達だよ?8級でも受けられる依頼だぞ。それが昇級試験とな。

8級での依頼なら、住所にもっていって、家にいる誰かに渡せば大体問題ない。

でも今回は一応昇級試験だ。多分一筋縄じゃいかないんだろう。

……たまった手紙の依頼をまとめて片付けようとか思ってないよね?試験だよね?



因みに僕達の受け取った手紙の宛先住所は、宿屋。


えーこれ絶対住所にいないパターンじゃん。宿屋って、絶対この町の人じゃないじゃん。本人かどうかをどうやって確認するのさー-。宛先がこの町に住んでる人なら、もしかしたら知ってる人かもしれないけど、今回は僕ら多分わかんないよ。

んで、多分簡単にはサインもらえないんでしょきっと。試験だし。

制限時間が長い。今はまだ朝だ。ということは、宛先住所から遠く離れたところ、例えば町の外にいる可能性だってある。


ええー。この試験、意外と面倒だぞ。

8級の昇級試験って簡単じゃなかったのー?




同様にざわざわしている8級の冒険者達。試験管の「開始!」という合図で、一斉に駆け出していった。

みんな真っ先に宛先の住所に行くんだろうけどさ…。僕らはそうはいかないよなー。

エッちゃん、まずは冒険者組合よっていい?


「いいですよ」


というわけで、組合窓口へ。職員に質問してもいいなら、冒険者組合で質問してもいいよねー。


こんな依頼なんですけど、この宛先の人の情報とか何かありません??

窓口の職員さんにしつもーん。エッちゃんに聞いてもらう。

顔を真っ赤にした女性職員は、それはもう丁寧に教えてくれました。話しかけた職員だけでなく、手の空いていた他の女性職員まで集まってきた。

エッちゃんさすが国宝級イケメン。そのうちどっかのお姫様とか大貴族の娘さんに求婚されなきゃいいけど。権力使っての求婚とか、厄介事の気配しかしないよねん。

エッちゃんは僕の先生なんだから!今のところはね!



さてさて、以下のことがわかりました。

①宛先の方は行商人。毎年この時期に、東北のほうで生産されている調味料などを持ち込んでいる。手紙の依頼主は、毎年その調味料を購入している。

②外見は、40歳くらいの男性で中肉中背。焦げ茶色の短髪、鼻の横のほくろが特徴的。人の良さそうな顔をして、けっこうしたたかなやり手。でも義理人情に厚く、損得抜きで商売しちゃって損することもある。

③宿屋は毎回決まったところを利用しており、宿屋の人とは顔見知り。毎年10日間くらい滞在している。この街には知り合いがいるようで、友人と飲み明かすこともあるらしい。よく目撃されるのは、冒険者ギルド内の飲食スペース(一般人も利用可能)。

④町に滞在中は、品物の仕入れをするために、町中以外にも町の外に行くことも多い。冒険者の護衛をつけることもしばしば。



さーて、たくさん情報が手にはいったな。

…やっぱコレ、たまった依頼を試験にかこつけて片付けようとしてないか?ん?





「今年の試験、本当にこんなに試験官つけるんですか?」

どうしてこんなに必要なんですか、と冒険者ギルドの男性職員が上司に声をかけた。試験当日になって、いまさらな質問だが。

例年、昇給試験の際には、冒険者やギルド職員を動員して不正行為などを取り締まっている。今質問をした職員も、今回の昇級試験の見回りを申し付けられた。

仕事が忙しいのに、正直勘弁してもらいたい。



ただ最低ランクである8級から7級への昇級試験は、毎年数人程度が見回りをする程度だった。

だが。

今年はどうやら事情が異なるらしい。


「うっせぇな、上には上の事情があるんだろうよ。知るか」


さっさと見回りに行け、と不機嫌そうに答える上司。どうやらこの上司も事情は説明されていないらしい。

しかし、30人以上も見回りを動員するとは何事か。

しかも事情もなにも知らされていない。


(あーあ、また残業だよ)

機嫌の悪くなった妻の顔を想像しながら、男はため息をついた。




ねーねーエッちゃんー。

結局さー、宛先の男は冒険者に護衛と採取依頼をして町の外に行ってることは分かったわけども。

「そうですね」

普通さー、そういう依頼主の情報をペラペラしゃべるって、冒険者組合の職員としてはダメダメですよね。

「そうですね」

……エッちゃん、なんかした?

「そうですね」

……話す気はないと見た!

「そうですね」

ねーねーねーねー。

「まだ町中なんですから、喋らせないでください」


もーエッちゃんのいけず。

あとでお話しよーね!



そんなこんなで、僕たちは町の外へ向かっている。


後ろからついてくる3人の尾行者は無視して。



1人なら分かるけど、2人でもまあ、ありえなくはないかもだけど。

3人ってどういうことですか!


















この前、前を歩いていた中年男性が、うにゃうにゃごろごろしている野良猫を見かけて、足を止めて見入っていました。

分かる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ