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「はは、魅力的な女性からのお誘いは光栄ですが、生憎とヤキモチ焼きの連れがいましてね。ありがとうございます」


スマートな受け答え。なんじゃこりゃ。天は二物を与えずって嘘だー!とかよくいうけど、全くもってそのとーりだわ。

はいはいイケメンエッちゃんまじイケメン。

よし決めた、散歩続行。ふん。

踵を返した僕を見て、エッちゃんは苦笑してる。居場所もバレバレですな。隠れて近づいたんだけどなー。


エッちゃんは女性冒険者に手を振ると、こちらに向かって歩いてくる。

あちらは名残惜しそうですね。まあかなりの美形だから仕方ないね!つーか今更だけど、あの顔ってエッちゃんの顔なの?エッちゃん元々人間なの?それとも誰かの顔を借りてきたのかな?

あんな美形いたら歴史に残るよねきっと!稀代の女ったらしとか。

まあどうでもいいや。



「こら、タマ。そろそろ戻ってきておくれ。怒ってしまったのかい?」


うわ、人目があるからって、なんだこの台詞!甘い!声が甘ーい!

つーかヤキモチ焼きって僕のことかよ。連れは僕しかいないけどさ。しかもタマって。いつも「タマサブロー」とか「サブ」とかいうくせに。メスだと周囲に誤解させる気か?



よし、乗った。ヤキモチ焼きの彼女役、やってやろうじゃん。



カツカツと近づいてきたエッちゃんに、すっと距離をとる。そして振り返る。さらに近付くエッちゃん、さらに離れる僕。そしてエッちゃんの顔を見る。しゃがんで伸ばしてきたエッちゃんの手を、猫パンチ!パンチ!ふしゃー!

いつでもどこでも女ひっかけてッ!このろくでなし!いつまでも待ってる安い女じゃなくってよ!

なんちゃって。


うわぁエッちゃん顔、顔。ひどいよ。すごく崩れてるけど、けど……、イケメンだなくそぅ。もいっちょ八つ当たりパンチ!


あ、ちゃんと手加減してるよ!爪だって出してないし。


あー飽きてきた。こんなんでいいか。彼女ムーブ終了。

エッちゃん抱っこ。休みたーい。


「はいはい、我が儘なお姫様ですねえ」


なんとでも言え。



エッちゃんと二人、冒険者組合を出て宿屋に向かう。検問したときにおすすめの宿聞いてて、もう予約は取ってあるんだよねー。鳥車もそこに預けましたよ。町中じゃ動きにくいし、多少目立つし。いや目立つのはいいんだけどね。どうせエッちゃんイケメンだし、なんてったって僕!キュートな僕!人目ひきまくりよねん。

いやホントは絡まれるのが面倒だからです。さっさと用事済ませて寝たい。

だって今日は朝から忙しかったんだもの。荷造りして、この町まで移動してきて、あの子を孤児院に預けて、買い物して、そんでもって冒険者組合行って。


もう休みたい。

だってもう夕方だよー薄暗いよ!いくらお猫様が薄明薄暮性動物だからってもうはしゃげない!

一日中お仕事したら疲れるよ!気分的に!

なに、頑張ってるのはエッちゃんだけとな?うん、否定はしないよ。僕はほら、可愛いさでみんなを癒してるから(適当)。


あ、知ってる?猫って夜行性じゃないんだってー。明け方と日没直後の薄暮の時間帯が一番活発に活動するらしいよ!僕の場合は当てはまらないけどね。猫だけど、猫じゃないし。



僕を抱えるエッちゃんは、足取り軽く宿屋に向かっていく。

今更だけどさ、エッちゃんが先生になってくれたの、やっぱり僕と旅したかったからじゃない?僕と。ラブリーキュートなオトモ役!エッちゃん!タマサブロー!

あ、そういやエッちゃんの本名知らないわ。


野良猫が家猫になる動画をつい見ちゃう。

同一人物(猫)とは思えないビフォアアフターですよね。

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