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83 追走【Side.ビニール仮面】


迫り来る地面の直前で、グリーン(アスカ)は体に風を纏い、減速し空中に止まった。

グリーン(キュウ)とピンク(ミミ)は、空中でクルリと前転し、難無く地面に着地した。


「う、浮いてる……お、降ろしてくれ」


グリーン(アスカ)は、ため息を吐いた。


「それは次回予告と違うな」


「何だと!」


「だが、そのリクエストは聞いてやるよ」


グリーン(アスカ)は、ダズカスを上空に放り投げた。


「うおおおぉぉ!」


ダズカスは勢い良く上昇し、20メートル程でピタリと止まると、今度は落下し始めた。


「うわぁ〜!た、助けてくれぇ〜!」


地上が迫り、ぶつかる直前でグリーン(アスカ)にキャッチされた。


「ハァハァ……ど、どうせ助けるなら、もっと早くしろ!」


「他に何か言う事はあるか?」


「は、離せ!」


「その言葉も違うな」


グリーン(アスカ)はダズカスを担ぎ上げたまま、猛スピードで上空へ飛翔した。

グングンと上昇し、大きな屋敷が米粒程小さくなるがまだ止まらない。

雲を突き抜けた所でようやく停止した。


「ヒュ〜。ヒュ〜。い、息が、出来ん。さ、寒い。た、助けてくれぇ!」


「次回予告は覚えているか?」


「ハァハァ。た、頼む降ろしてくれぇ!」


「その言葉も違うな。では、お望み通り降ろしてやろう」


グリーン(アスカ)はダズカスから手を離した。


「いやぁぁぁぁ〜!!」


支えを無くしたダズカスは、地面に向かい急降下を始めた。

風を顔面に受け、弛んだ肉がブルブルと波打つ。


「かはっ!い、息が……」


気圧の急激な変化と、落下による風圧を受け、無意識で行っていたはずの呼吸が出来ない。

涙と涎、鼻水を撒き散らし、必死に手足をバタつかせるが、勢いは収まらず、あっという間に地上が接近してくる。


「あぁぁぁ」


ダズカスは地面に激突寸前で、グリーン(アスカ)に足を掴まれ、ギリギリで止まった。


「ハァハァ。も、ハァハァ。もうやめて」


ダズカスは目、鼻、口と、穴という穴から水を垂らし、ガタガタと震えている。そして、ズボンの股間付近の色を変えていく。


「急に老けたな。これが最後だ。言いたいことは他にあるか?」


グリーン(アスカ)は冷淡な声で、逆さまの状態で吊り下げているダズカスに聞いた。


「ゆ、許してください。おね、お願いします」


「残念だ。俺はまだ全力を出していない。次は止めないぞ」


グリーン(アスカ)はダズカスを肩に担いで再び上昇しようとした。


「ま、ま、待ってください!言う言う言う!言います!」


ダズカスを肩から降ろし放り投げた。


「ぐふっ」


地面に顔から着地するも、ダズカスは直ぐに起き上がり正座した。


「こ、今後一切、人を傷つけません!」


「人だけか?亜人は?」


「い、生き物全てを傷つけません!教会に寄付します!教会も守ります!命に変えてもシスターたちを守り抜きますからぁ!約束します、どうか命だけは助けてください」


「約束?誓え!」


「は、は、は、はい。女神様に誓います!」


「りんごに誓え!」


「は?り、りんごに?」


「嫌なのか?」


「と、とんでもありません!誓います!りんごに誓います!」


(こんなとこかな)


「常に見ているからな。もし誓いを破ったら……女神より先に、お前に罰を与える」


その言葉を聞くとダズカスは、空を見上げ身震いをした後、地面に頭を叩きつけ土下座をした。


「決して破りません!誓います!」


「その言葉忘れるなよ」


グリーン(アスカ)は二人のイセカイザーを一瞥すると、そのまま門に向かって歩き始めた。二人はその後を、無言で追従する。


(あっ、そうだ!)


グリーン(アスカ)は足を止め、再びダズカスの元へ戻った。


「それともう一つ」


「ひっ!な、何でしょう」


手を叩き、りんごを取り出すとダズカスに放った。


「それを教会の人間に見せろ。あのイケメンの美青年から貰ったと言え。教会の警護はそれの恩だという事にするんだ。俺らのことは他言無用。いいな?」


「はっ、はひ!お、仰せのままに!」


「よし」


イセカイザーの三人は、颯爽とその場を立ち去った。


イセカイザーたちが去った後、ダズカスの兵士が、ガシャガシャと鎧を鳴らしてダズカスを囲んだ。


「ご、ご無事ですか、ダズカス様」


「お、お怪我はありませんか」


「問題ない……」


見るからに無事ではないダズカスを見て、いつものように、ホイッスル声で怒鳴られるのを覚悟していた兵士たちは、肩透かしを食らった。


着衣は乱れ、覚束ない視線のダズカスを見た兵士は、互いに顔を見合わせた。


「おい!お前たち何をボーッと突っ立ってるんだ」


その時、衛兵の間を縫って、胸を押さえ、足を引きずりゲレイドが現れた。その横をミハエルが支えている。


「ダ、ダズカス様。申し訳ありません」


「ゲレイド!ミハエル!無事だったか!」


「お、男が消えました。あの奇抜な二人組はどこに?」


「去って行かれた」


「何ですと!おい!お前ら、奴らを探せ!生死は問わん!見つけ次第……」


「ならん!ならんぞゲレイド!あの方たちに手を出すことはワシが許さん」


「はっ!直ちに捕まえて……え?」


「丁度よい、皆の者もよく聞け!これよりワシは、この街の教会を全身全霊を持って警護する!そして今後、人々には一切危害を加えるな!亜人も然り!よいか!ワシに力を貸してくれ!」


ゲレイドは夢でも見ているのか、ダズカスの言ってる意味が分からなかった。


「は?どういうことでしょうか?」


「そう言う事だ!ゲレイド!直ちに警護計画を作成し、提出せよ!」


「ん?え?……はっ!各隊の長は、私の部屋に集合せよ!その他の者は持ち場に戻れ!手空きは復旧作業に当たれ!」


「「「はっ!」」」


その後、兵士たちは口々にこう言った。


「ダズカス様が我らに頼み事をした」


「ダズカス様は変わられた」と。


ダズカスは震える手に持つ赤いりんごを、決意を新たに燃える瞳で見つめ続けた。


その一部始終をイセカイザーたちは見ていた。


イセカイザーたちは門から去ったと見せかけて、ダズカスたちの上空に停滞していた。


「ふぅ〜。何とかなったな。これでシスター・フランに危害を加える奴はいないだろう」


『キュ〜』


『ミ〜』


「今回はマジで助かった。お前ら最高か!ありがとな」


グリーン(アスカ)に抱きついていた二人のイセカイザーは、更にきつく抱きしめた。


「イテテ。お前らもパワーが上がってる事を忘れるなよ。そろそろ元に戻っていいぞ」


キュウはどろんと煙に包まれると、可愛い九尾の姿に戻った。ミミもまた、グニャグニャと体を縮め、可愛らしいスライムへと戻った。


「それじゃあ教会に戻るか」


ダズカスたちの上空から、さらに真上に上昇し、地上から確認されない距離までくると、その場を後にした。


「シスター・フランは間違いなく俺に惚れるぞ。その前に変身を解かないとなぁ。どこかに隠れる場所はないかな?」


教会の真上で停止して、身を隠す場所を探していると、街の端、門の付近から四体のドラゴンが飛翔するのが見えた。


「ドラゴンだ!格好良いな。あいつをピンクで仲間にすれば移動も楽そうだ!」


『キュ!』


『ミ!』


「冗談だよ!ドラゴンは嫌か?背中に乗ってドラゴンライダー。格好良いと思うんだけどなぁ。あれ?何か背中に乗ってるな!ん?」


ドラゴンの進路上には川があり、その先の上空には禍々しい色の雲が渦を巻いている。


「あれは何だ?……そうだった自衛隊!こうしちゃぁいられない!川を渡った先が南だから、きっとあの渦の下にいるんじゃあないか?キュウ!ミミ!あのドラゴンを追うぞ!」


『キュウ!』


『ミミ!』


「シスター・フラン。そして、エレノア……ヒーローはここで必ずこう言うんだ。さらばだ!」


グリーン(アスカ)は、後ろ髪を引かれながらも、ドラゴンを追って南へ向かった。



『一人も殺める事なく、トラブルを解決させたアスカ。手柄を自慢する事もせず、姿を消すのはヒーローの鉄則。そして十八番。次は誰を救うのか?

何処かで誰かが泣いている!

急げアスカ!

泣くなアスカ!

次回予告

赤』


「泣いているのは俺。そう、シスター・フランに振られて俺の心は大雨警報。って、大アホゥ!」

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