表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/114

82 救助【Side.ビニール仮面】


教会にいた美しい亜人が、アスカの窮地に颯爽と現れ、ゲレイドとミハエルを吹き飛ばした。


「ゲレイド!ミハエル!おのれぇ!き、貴様ぁ!」


ダズカスは明らかに動揺し始めた。


「シスター……フラン?ど、どうして……ここへ」


しかしよく見ると、緑のマフラーをひるがえす、イセカイザーグリーンの姿であった。


(ぐ、ぐりーん?)


朦朧とした意識の中、左側にも誰かがいる気配がした。その時、椅子にアスカを縛り付けていた紐が解けた。同時に左の視界から、イセカイザーピンクが現れた。


(ぴん、く?)


ピンクはアスカの右手にはめられた、無力の腕輪を引きちぎった。


『ミミ〜』


(まさか)


落ちそうになる意識を繋ぎ止め、アスカは両手を叩いた。それは力無く、ぺちんと鳴った。しかし条件は満たされた。

アスカの手に緑の魔石が現れた。


震える手で、それを胸元へ添えると、あの言葉を呟いた。


「変…身」


しかし、その条件は満たされてはいなかった。


(変身できない。何故だ?)


「何だ、その魔石は!どこから取り出した!何をするつもりだ!」


甲高い声を聞き、そこでアスカは理解した。


(あいつに見られていると変身できない……)


視線を上げるとゲレイドが立ち上がり、腰の剣を抜いてグリーンに斬りかかった。


「死ねぇ〜!」


だがそれを難なくかわし、拳を腹にめり込ませると、ゲレイドはくの字に曲がりミハエルの側に崩れ落ちた。


「き、貴様何者だ!」


更にグリーンは振り返り、ダズカスを担ぎ上げると、その場から立ち去った。


「やめろ!は、放すのだ!ワシを誰だと思っておるのだ!金か?金が欲しいのか?それなら好きなだけ……」


ダズカスの声は遠ざかり聞こえなくなった。


(ありがとう。だがすまない……力が、残って、ない)


しかし最後の力を振り絞るが、魔石を持った手は重くて上がらなかった。


アスカは右手をダラリと降ろすと、緑の魔石を落としてしまった。

硬質な音を響かせ、無情にも緑の魔石は転がって行く。


そしてピンクの足に当たり止まった。


(だめだ……ここまで、か)


ピンクは緑の魔石を拾い上げ、アスカの右手に握らせると、そのまま、その手をアスカの胸に導いた。


「は、はは……ありが、とう」


ゲレイドとミハエルは、白目を剥いて気を失っている。


「へ、ん、し、ん」


右手の魔石が激しく輝き始める。

それと同時に意識がハッキリとして、頬の痛みがなくなり、左目も見える様になった。そして身体中に力がみなぎってきた。


緑の魔石がアスカの胸に吸い込まれ、眩い光に包まれた。


「ふぅ〜。ギリギリだった。サンキュ!ミミ!今回は危なかった!マジで助かったよ」


『ミミ〜』


「そうか、お前がキュウを助けてくれたんだな」


『ミミ』


その時、気を失っていたゲレイドが立ち上がった。


「き、貴様ら何者だ!ダズカス様は無事か!?あの男を何処へやった!」


ピンク(ミミ)は地面を蹴ると、猛スピードでゲレイドへと肉薄した。


「ミミ!殺すな!」


ピンクは地面に足を立て、急ブレーキをかけたが間に合わず、ゲレイドにぶつかり吹き飛ばしてしまった。ゲレイドはまた壁にぶつかった。


その音を聞き、意識を取り戻したミハエルであったが、再びゲレイドが倒れ込み、頭と頭をぶつけて二人は気絶した。


「悪りぃなミミ。だが人は殺すなよ。こいつらと同じにはなりたくないからな」


『ミミ〜』


「それにしても今回はマジでダメかと思ったよ。貴族怖えな。そうだ!あの貴族。キュウは何処まで行ったんだ?」


『ミミミミ〜』


「ミミ分かるのか?そもそも、どうしてここが分かったんだ?いや、今はそれどころじゃないな!キュウの元に連れて行ってくれ」


『ミミ〜』


走るミミの後をアスカは追いかけた。

部屋を出ると、同じ石造りの通路が伸びていた。

そして、似たような部屋がいくつもあり、全ての扉が開かれていた。


「なる程ね。全部開けて確認してたのね」


階段を登ると、豪華な装飾品や骨董品が並ぶ部屋に出た。


「宝物庫か?」


様々な武器や防具が、所狭しと飾られている中、壁に飾られた刀に目を止めた。


「日本刀か?」


アスカはそれを持ち上げた。

すると、たった今、出てきた扉が一人でに閉まり、他の壁と見分けがつかなくなった。


「隠し部屋だったのか」


(貴族が開けっ放しだったんだろうな。閉まってたらキュウたちには見つけられなかったかも)


アスカは身震いをした。


(この刀は頂いとくか)


「圧縮」


宝物庫を出ると、執事やメイドが逃げ惑っていた。

気にする事なく二人のイセカイザーは、二階へ駆け登り、通路を奥に進んだ。ここもやはり全ての扉が開かれていた。


ピンク(ミミ)は通路の中間まで来ると立ち止まった。そして開かれた扉の部屋に正対した。


「この部屋か?」


そこにはグリーン(キュウ)と、貴族ダズカスがいた。


「厨房かよ!」


そこは広い厨房だった。

料理人は逃げ出して一人もいなかったが、幾つもの豪勢な料理が皿に乗せられていた。

ダズカスは厨房の真ん中で頭を抱え、座り込み震えている。


グリーン(キュウ)は料理の乗った皿を両手に持ち、グリーン(アスカ)に駆け寄った。


『キュ』


そして、皿を差し出し首を傾げた。


「全く。お前らは、可愛いな。腹が減ってたのか?持って帰って、後で食べよう。圧縮」


グリーン(アスカ)は料理を受け取り、超亜空間へ送った。


「待たせたな畜生!圧縮。お前は貴族という皮を被った畜生だ!圧縮。もう逃げ場は無い観念しろ!圧縮」


グリーン(アスカ)は、ダズカスの元へ歩くのと同時に、並ぶ料理を片っ端から超亜空間に送っていった。


「か、金なら好きなだけやる!だから頼む。命だけは助けてくれ!」


「何だそのダサい決まり文句は!お前が殺した人たちも同じ事を言っただろ?助けてやったのか?

あ、いや、その人たちはダサくない。ダサいのはお前だけで……だ〜!締まらない!地球では悪役ばかりやってきたからな。決まり文句は絶賛練習中だ。圧縮」


「あ、あの男も殺してないだろ?今から回復してやるところだったんだ!な?頼む助けてくれ!」


「あのイケメンの美青年は、既に解放した」


「ひっ!く、来るな!」


「次回予告だ。お前は金輪際、人を、いや、生き物を傷つけない。そして教会には指一本触れない。それどころか教会に寄付をする。更には教会のシスターや子供たちを、末代まで守り続ける」


それを聞いたダズカスは、入り口を見てニヤリと笑った。


「ヒーッヒッヒッ!このワシが、そんな事する訳ないだろう!観念するのは貴様らだ!お前らかかれ!」


ダズカスが叫ぶと、イセカイザーたちが入ってきた入り口から、鎧で武装した兵士が次々と入って来て立ち塞がった。


「そいつらを殺せぇ!」


「はぁ。無駄だよ」


グリーン(アスカ)は、素早くダズカスとの距離を詰めると肩に担ぎ上げた。


「は、離せ!」


「I’m ready!」


そして窓際に走り出した。


「や、やめろ!ここは三階だぞ!ギャ〜!」


そのまま窓を突き破り外へ飛び出した。


グリーン(キュウ)とピンク(ミミ)もそれに続いた。


「落ちる〜〜〜!!」



『貴族の恐ろしさを目の当たりにしたアスカ。

仲間の力に救われて窮地を脱する事に成功した。

そして、キュウがダズカスを連れて来た場所は調理室。ミミがアスカを案内した場所も調理室。

ただ単に、腹が減っていただけであった。

食え!イセカイザーグリーン(キュウ)

食せ!イセカイザーピンク(ミミ)

次回予告

追走』


「何を見たんだ?見てはいけない物なのか?

しかし貴族は思っていた以上にヤバいな。これからは関わらないようにしよう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ