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69 ブラックヴァンパイア


「ヴァンパイア!!!嘘だろ!あのヴァンパイアがいるのか!!」


ゼンジの口から飛散した水は、向かいに座るノックの顔に盛大に掛かった。


「ウォ〜ン。落ち着けゼンジ。お前が言ってる、ヴァンパイアとは多分違うぞ」


ノックは顔を拭きながら答えた。


「違う?自分が知ってるヴァンパイアは血を吸う化け物だぞ!」


「ガッハッハ!そうだな!そいつがヴァンパイアだ」


「じゃあ合ってるじゃないか!」


「ウォ〜ン落ち着けと言っただろ?ロックジョーさんも勘違いするような言い方はやめて下さい」


ノックは、ギルドマスターであるロックジョーにはまともに目を合わせる事は出来ず、下を向きながら呟いた。


「これが落ち着いていられるか?ヴァンパイアだぞ!空想上のとんでもない化け物だぞ!」


「ガッハッハ!空想上などではない。ヴァンパイアは実在する」


「ウォ〜ン。ロックジョーさん少し黙っててください。話が進みませんから」


ゼンジをからかい続けるロックジョーに対して、ノックはとうとう指摘をしてしまった。


「ガッハッハ……俺に黙れだと?」


一瞬にして場の空気が凍りつく。


ノックは顔にかかった水ではなく、今度は噴き出す汗を拭い始めた。


「ロックジョーさん。からかうのはその辺でやめてやってください。ノックも悪気があって言ったんじゃないんで」


ゴードンもやはり、ロックジョーを見る事はせず、噴き出す汗を拭った。

ロックジョーは、残りのエールを一気に飲み干した。


「ガッハッハ!冗談だ。嬢ちゃんエールもう一杯!

俺は、ギルドマスターとしてではなく、客としてこの村に来たんだが、目当ての物は手に入らず、手出しが出来ない村の状況に腹が立っててな。ちょっとしたストレス発散だ」


そしてロックジョーは豪快に笑ったが、ノックとゴードンはその後、一言も発する事はなかった。


「この村は、ギルドマスターのロックジョー殿でさえ手出しが出来ないそうです。勘違いしないで頂きたいのは、一人では無理だという事です」


村長が髭を触りゼンジを見た。その顔は険しい。


「ガッハッハ!恥ずかしい話だ。ギルドマスターが聞いて呆れる。俺が解決出来ないとは、まさかこんな事が起ころうとはな。村で暴れるのは可能だが終わりが見えん!元を潰さん事には、永遠とループしてしまうだろう」


ロックジョーは、キーラからエールを受け取ると笑顔を消した。


「そこでお前さんの力を借りたい。これはクエストではない。俺からの頼みだ。聞けばお前さんはギルドに属してないそうだな。しかし、受けるのであれば、報酬は俺が出す!どうだ?」


ゼンジは被せ気味で返事をした。


「やります!」


ロックジョーはエールを飲み干すと、再び豪快に笑った。


「ガッハッハ!気に入った!相手がヴァンパイアと知っても尚、やると言うその根性!気に入ったぞ!ガッハッハ!」


ロックジョーは、キーラに再びエールの注文をした。


「からかって済まなかった。試した訳じゃないんだが、結果としてそうなったな。ガッハッハ!」


「いえ構いません。勝手に慌てたのは自分です」


「ガッハッハ!では早速本題に入ろう。問題点は三つある」


ロックジョーは人差し指を立てた。


「まず一つ目は、俺一人では無理だという事だ。

この村を守りつつ、元凶を見つけ出し、潰さないといけないからだ。そして、そこの符術師には、この村を覆う程のデカい結界は張れない。だから俺も動けない」


続けて中指も立てた。


「二つ目は、森に解毒薬を持ち運べない。あいにくマジックバッグは置いてきたんでな」


最後に、三本目の薬指を立てた。


「三つ目はブラックヴァンパイアだ。ブラックヴァンパイアはヴァンパイアではない。

正式名称、ブラックリーチヴァイパー・サックワイバーンという、蛇のような蛭のモンスターだ。名前が長いんで、俺たちはブラックヴァンパイアと呼んでいる」


「え?ヘビのようなヒルですか?ブラック、ん〜とヴァイパー?……え〜とブラックヴァイパーでいいんじゃないですか?」


「ブラックヴァイパーというモンスターは他にいる。勿論ブラックリーチヴァイパーとリーチヴァイパーもな。ガッハッハ。ここいらの奴らには、この略称は常識だ。まあ呼び方なんて、この際どうでも良い。

いいかブラックヴァンパイアは、ワイバーンに寄生する珍しい蛭だ。ワイバーンが近くにいるという事は、こいつがいる可能性がかなり高い」


「そんな……ドラゴンに寄生するなんて」


「そうだ。そしてワイバーンは毒に弱い。だから湖には近寄らない。毒を持つ、バルーンモスキートがいるからな。そしてブラックヴァンパイアも毒を持っている。血を吸うのを悟られない為の麻痺毒だ。しかし、こいつは自分では毒が作れない」


「まさか!バルーンモスキートの血を吸って毒を取り込んでいるんですか?」


「半分正解だ。血を吸うんじゃない。喰うんだ」


「食べるんですか……」


「ガッハッハ!そうだ。毒を喰うのは雌だけだ。雌は産卵前に、デーモンスパイダーという岩場に生息する毒蜘蛛を喰らい、自ら体内に毒を取り込む。そして毒にまみれた卵を産む。外敵に食われないようにする為にな。そこから孵化した奴らもまた、毒まみれって事だ。その生態に最適な場所がこの湖だ。外敵がいない、こいつには格好の餌場となる」


ゼンジは固唾を飲んだ。


「そして、こいつのたちが悪い所は、主食が血という事だ。もう分かっただろうが、トマトビートルを喰っているのだろう。吸うのではなく喰っている筈だ。となると、わざわざ毒に弱いが、危険なワイバーンに寄生する必要もなくなってくる。と、言うのが俺の憶測だ。ガッハッハ!ほぼ間違いないだろうがな」


ロックジョーは、話終えるとエールを飲み干した。


「何か質問はあるか?」


ゼンジはロックジョーの問いに目を閉じて考えた。


「状況は理解しました。ですがどうして自分が、この村ではなく湖に行くのでしょうか?」


「ガッハッハ!それはお前さんが、毒の効かないマスクとマジックバッグを持っているからだ。俺には使えんのだろう?それに、この村には俺がいた方がいいだろうからな。何が起こるか分からん。ワイバーンが襲ってくる可能性もゼロではない」


(しまった!錬金術のアイテムは自分にしか使えない事にしてたんだった……墓穴をほった。虫だらけの森には入りたくないが、ワイバーンよりはましか?)


「了解!しかし連絡はどうしますか?」


「それはこいつらがやってくれる」


ノックとゴードンは背筋を伸ばし硬直した。


「ブラックヴァンパイアの位置も、そいつがいれば分かるだろう」


リッキーは、指をさされると大きな声で返事をした。


「こっちからの連絡は、俺の連れを行かせる。そいつは今、村を調査中だ。遊んでるかもしれんがな」


ロックジョーは大声で笑い、何杯目かも分からないエールを、水でも飲むかのように飲み干した。


「ガッハッハ!お前さんの錬金術はかなり強力だと聞いた。だが無理はするな!危険だと感じたら直ぐに引き返せ。作戦を立て直す」


「了解!それでは掛かります!」


ゼンジとポーラは立ち上がった。


「嬢ちゃんは残った方が良いんじゃないか?」


「いえ。私は回復魔法が使えます。いざと言う時の為にゼンジについて行きます」


ポーラはメロンを抱きしめて、ゼンジにウィンクをした。


「ガッハッハ!そうか。分かった。二人とも、くれぐれも無理はするなよ」


「「はい!」」


「これが事実ならば生態系が崩れて、森がとんでもないことになります。手遅れになる前に、どうか宜しくお願いします」


村長が立ち上がり、深々とお辞儀をした。


「全力を尽くします」


それに対し、ゼンジは敬礼をした。


「お気を付けて!少しですが解毒薬です」


テープルが、解毒薬の入った麻袋を渡した。


「そうだ。キーラさん、干し肉があれば幾つか分けてください」


「おつまみ用でよければありますよ」


「ありがとうございます」


ゼンジは金貨1枚と、40個の干し肉を交換した。


その後地図を受け取り、右手と右足を同時に出して歩く、カチコチになったハウンドドッグの三人を引き連れて森へと向かった。



(女神様、こちら自衛官、

ギルドマスターって何なのか聞くのを忘れてました。かなり強いのは三人を見て分かりましたが。

どうぞ)

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