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27 新たな仲間はスフィアから来たぬいぐるみ


「ところでメロンは、どうしてこんな所にいるんだ?」


ポーラに抱えられたまま、ほっぺをプニプニされているメロンに聞いた。


『聞きたいの?涙を拭く準備は出来てる?これから話すのは、聞くも涙、語るも涙の物語だよ』


「いーから話せよ」


『やっぱりマスターを付けさせようかな?」


「是非聞かせて下さい」


『うむ。何から話そうか……』


「聞くも涙、語るも涙の物語を聞かせろよ」


『物には順序があるんだよ。まずは、我がマスタードラゴンだと理解したと思うけど、そもそもマスタードラゴンとは何者なのか知ってる?』


「理解はしてないが、まぁドラゴンの頂点だろ?」


『良く出来ました。ただ、何故ドラゴンの頂点なのか?それは……』


「一番強いからだろ?」


『照れるじゃん!で何が知りたいのかな?』


「ほほう。マスタードラゴンはアホなのか?」


『ポーラー。ゼンジが意地悪する〜』


「ゼンジ、メロンちゃんを虐めないでください」


「…了解しました。それで!そのマスタードラゴン様は、何故こちらにおいでなのですかっ!?」


『良くぞ聞いてくれた。我は実はマスタードラゴンではない』


「でしょ〜ね。お前、はっ倒すぞ!」


『おい!話の腰を折るな!黙って聞け!』


「おまっ!……了解」


『マスタードラゴンとは、この世に一体しか存在しないんだ』


「……」


『……』


「……」


『おい!ここは、何だって!?って大声で聞き返すところだよ!』


「お前が黙れって言ったんだろうが!!はぁ〜。じゃあ聞くぞ…何だって!?」


『そんなに驚く事ではない!』


「腹の中の綿を全部抜いてやろうか!」


『ぎゃ〜〜〜〜!ドラゴンスレイヤー!』


「話が全く進んでないぞ!」


『貴様がいちいち絡んでくるからだ!』


「なっ!?……了解。続けてくれ」


『ウオッホン!マスタードラゴンは、全てのドラゴンの頂点にいるんだ。そしてその下に、十二の属性を司る、十二体のドラゴンがいるのさ。さらにその下に、それぞれの属性を備えた、様々なドラゴンが分類されている。それら全ての頂点に立つマスタードラゴンは、十二の属性全てを使えるんだよ』


「……」


『残念ながら、今は使うことができないんだ』


「……」


『それはね、我はこの世界の住人ではないからだよ』


「……」


『そうだよ。実は我は表の世界から来たんだ』


「……」


『……』


「……」


『ちょっとは反応してよ!相槌は許可する!』


「いや、普通に驚いてたんだが。色々と聞きたいことがあるが……表の世界とは、異世界の事か?」


『違うよ』


「じゃあ、このナイナジーステラとは、また別の世界があるのか?」


『そうだ。知らないのか?ここは裏の世界。そして表の世界の名は、ナイナジースフィア。我は、そこから来たんだよ』


「どうしてこっちが裏なんだ?」


『ん〜。そういうもんだからなぁ〜。強いて言えば、スフィアの方が、魔素が大量にあるからだと思うよ』


「マソって何だ?」


『簡単に言えば、魔法を使うためのエネルギーだよ。それが大気中や水中、土の中とかに多く含まれてるから、魔法の威力も回復力も高いんだ』


(ゲームで良く聞く、マナみたいなもんかな?)


「その魔素ってのが多いから表なのか?」


「魔素が豊富にある世界。別名、魔界。魔界は住人もモンスターも、ここより遥かに強いからね。要はスフィアの方が、全てにおいて優れてるからって事かな』


「裏の世界の、弱いモンスターに囲まれて泣いてたのは、どこのどいつだ?」


『仕方ないだろ!この姿は仮の姿だし!』


「仮の姿?どうしてぬいぐるみなんだ?」


『……騙されたんだ!信じてたのに……信じてた仲間たちに…騙されて…奪われたんだ』


「奪われた?何を?」


『マスタードラゴンって、名前とか種族名じゃないんだよ。十二の属性の代表が闘って、勝利した者に与えられる名誉なんだ。

我はその闘いで勝ち上がり、ドラゴンの頂点に立った。そして負けた各代表は、属性の指輪を勝者に譲るんだよ。その指輪を十二個装備することで、全ての属性が使えるようになる。

その時、名実共に名誉ある最強の称号、マスタードラゴンを与えられるんだ。でも、その指輪を奪われちゃった』


「十二個全て奪われたのか!?」


メロンは、右の手の平をゼンジに向けて、小指につけている指輪を見せた。


『今つけている、聖竜の指輪だけは取り返したんだけど、他の指輪は我を騙した者共が、裏の世界、つまり、ここ、ステラへと持って逃げたんだ。我はそれを追って来た!この指輪を全て取り戻す!それまでは表の世界、スフィアには帰らない!絶対に』


「そうか」


ゼンジは真剣に聞いていた。そしてポーラと目を合わせてうなずいた。


「じゃあ、一緒に探そう!」


『……良いのか?』


「勿論ですよ。私たちにも手伝わせて下さい」


ポーラもメロンの、小さな翼を触りながら微笑んだ。


『ありがとう。だけど、我は聖魔法しか使えないよ…しかも、初級魔法だけなんだ』


「マスターヒールは、かなり上級じゃないのか?」


『実はただのヒールだよ。雰囲気でマスターを付けただけで……ごめん、ただのヒールなんだ』


「いや、メロンのマスターヒールで、自分は救われたんだ。大したもんだよ!」


「私たちの目的も出来ました!これからは、指輪を探す旅にしましょう」


「ああ、元々あてもなかったからな。そこは臨機応変に対応可能だ!」


『……貴様ら』


「そうだな!決まりだ!そう言えば、さっきの黄金郷からこれを、拝借してきたぞ」


ゼンジは衣のうの中から、金の指輪や宝石を取り出した。


「この中にあるか?」


『……ない。と言うか、こんなに小さくないんだ』


「どういうことだ?メロンがつけてるリングは、これより小さいぞ」


ゼンジは、ブラックドラゴンの巣から、危険手当と称して持ち出した指輪を見せながら言った。


『それは普通の指輪でしょ?これは別名ドラゴンリングと言って、ドラゴン専用の指輪なんだ。つける者のサイズによって大きさが変わる、マジックアイテムだよ。これは外すと通常サイズに戻るんだ。そしてドラゴンが装備すると、そのドラゴンに応じてサイズが合うようになるんだ』


メロンは小さな右手をクルクル回して、小指に付けている指輪の、表と裏を見比べていた。それを見ていたゼンジがある事に気付いた。


「ドラゴン以外は装備出来ないって事か。しかしその指輪、どこかで見たことがあるよな…」


『本当に!?それはどこで見たんだ?外して見せようか?』


「ん〜」


ゼンジは腕を組み、空を仰いで思考を巡らせた。


(こっちの世界に来てまだ日は浅い。見たとしたら、最初の城のアーノルド王……違うな、ゴブリンとオークも違うし、黄金の馬車か?いや、あそこの中の樽には……)


「そうか!樽だ!」


『樽?』


「ああ、黄金郷の柱だ!」


「あの柱がどうしたんですか?壊れて、樽になりましたよね?」


ポーラはメロンの角をモニモニしていた。


「あの柱は樽かと思ったが、底も蓋もなかったよな?だからもしかしたら。衣のう!」


ゼンジは、スキルを使用して衣のうを出現させた。


『……』


訝しむメロンを他所に、衣のうの中から黄金の樽を二つ取り出した。


『あった〜!こ、これだ!炎竜の指輪と、地竜の指輪!』


その樽だと思っていた指輪は、良く見ると下から上へ炎のようなラインが入っており、中央には燃えるように美しい石が嵌められていた。もう一つの指輪は、砂が流れるようなラインであり、大地のような暖かさが感じられる優しい茶色の石だった。


「やっぱりそうか!」


『いきなり二つも見つかるなんて!貴様ら!これをどこで手に入れたの?』


「ここに来る前に、ブラックドラゴンの巣から拝借したんだ」


「そうなんです。後、二つあったのですが、取り戻しに来たブラックドラゴンに、持ち帰られました」


ポーラが残念そうに伝えた。


『ブラックドラゴン?』


「そこに戻れば、二つあるのは分かっているんだが、今は無理だ……相手が強すぎる」


『でも、良かった』


「良かったですね」


「さあ!つけてみてくれ!」


『良いのか?譲ってくれるのか?』


「譲るも何も、これは元々メロンの物だろ?」


『ありがとう!』


ピッピッピッと可愛らしい足音を鳴らして、指輪へと近づいたメロンは、右手を指輪の入り口につけた。そして下を向き、ゆっくり目を閉じた。

ゼンジもポーラもワクワクしていた。

暫くすると、メロンは目を開けて、ゼンジたちへと振り向いた。


『これ、どうやってつけるんだ?』


「…全ての時間を返してくれ」


『触れたら大きさが変わる筈なんだよ!!』


「ドラゴンと認識されてないんだろ?ぬいぐるみだから」


『ぐぬぬ…やはり表の世界に行かないと、装備できないのかなぁ?よし!表の世界に連れていってよ』


「指輪を全て取り返すまでは、絶対に戻らないんじゃなかったのか?そもそも、表の世界への行き方が分からないだろ!」


『時は常に前向きなんだよ!後ろ向きな事を言うんじゃない!!』


「こんな場面じゃなければ、きっと名台詞なんだろうな!」


『お願〜い、ポ〜ラ〜!表の世界に連れてって〜』


「指輪も、表の世界に行く手段も、絶対に見つけますからね!メロンちゃん!頑張りましょう!」


『ありがとうポーラ!』


メロンはポーラに抱きつき、ポーラから見えない角度で、ゼンジに向けて、口角を上げニヤリと悪い顔をした。


「こ、この野郎……」


ゼンジはポーラに見えない角度で、握り拳に力を入れた。


『臨機応変に対応しないとね』


ゼンジの握り拳に、血管がビキビキ盛り上がった。


「ぬいぐるみのクセに……」


ポーラは満面の笑みで、メロンに頬擦りしていた。


(女神様、こちら自衛官、

世界が二つあるって本当ですか?ナイナジーステラのモンスターでさえ強いのに、ナイナジースフィアのモンスターを考えると、恐ろしくてたまりません。でもメロンを見てると、大したことなさそうなんですが。どうぞ)

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