19 ピンク【Side.ビニール仮面】
『前回までのあらすじ!
仲間の死を乗り越えたり、乗り越えなかったり、
変身解除を知ったり、知らなかったり、
ハンバーガーを見つけたり、食べなかったり、
新たな仲間ミミを加えたり、加えなかったり、異世界での冒険の旅が始まったり、始まらなかったり…』
「あらすじ下手くそか!」
『……そして今、雨が降り続けるジャングルの中で「三人」のヒーローが睨み合い、牽制し合っていた。
一人はイセカイザーピンク!この物語の主人公である。
二人目はイセカイザーピンク!この物語の主人公である。
そして最後の三人目も勿論イセカイザーピンク!この物語の主人公なのであ〜る』
雨で足場が悪くなっている中、水しぶきと共にピンクが、ピンクに急接近して高速の右ストレートを放った。
「くっ!参ったな…なかなかやるじゃぁないか!」
腕をクロスにして、強烈な攻撃を受け止めたピンク。
そして左手で側頭部を触りながら、ピンクは怒鳴るように言った。
「想像以上のパワーだな。遡って、このパワーの説明をしてくれ!」
『説明しよう!
それは遡る事一日前!巨大な隕石が地球へと接近していた』
「遡り過ぎだ!」
『説明しよう!
遡る事一時間前!新たな仲間と共に、始まりの洞穴を出たところである』
〜〜〜
「腹減ったなぁ。少し小降りになってきたから外に出てみるか」
イセカイザーピンクに変身しているアスカは、キュウとミミを両肩に乗せ、雨の降る夜のジャングルへと足を踏み出した。
しばらく歩くと木々が減り、少し開けた場所へ出た。何かの鳴き声と雨の音が相まって、世にも奇妙な空間へと変わっていた。
「気味が悪りぃなぁ」
『ワオォォォン』
幾つもの遠吠えが聞こえる。
すると突然イセカイザーピンクたちの目の前に、黒い狼と、白い狼が二匹飛び出してきた。
「出たな晩飯!」
狼に向かって構えたイセカイザーピンクの両肩から、キュウとミミが飛び降りた。
そして地面に着く前にキュウは『どろん』という音とともに煙を上げて、イセカイザーピンクに姿を変えた。
一方ミミもグニャグニャと形を変えて、イセカイザーピンクへと姿を変えた。
そこには、まさにイセカイザーピンクが三人立っていた。
「へ?何だ?ど、どうして?……アナライズ!」
キュウの頭上に出現したステータスには、〈変化の術〉というスキルが増えていた。
「変化の術ってのが増えてるぞ!何でだ!?」
『説明しよう!
九尾はMPを吸収した相手と親しくなる事により、変化の術を行使する資格を得るのである。
MPの吸収量は200必要である。したがって、それ以下の者には変化する事が出来ないのである』
「そうか、親しくなったのは俺が名前をつけたからか?それとも誘惑したからか?」
『キュ〜ゥ』
キュウはピンクの格好で、ピンク(アスカ)に抱きついた。
ピンク(アスカ)は、激しい音と衝撃を受け、倒れそうになるのを足に力を入れて踏ん張った。
「うっ!体当たり攻撃かと思ったぞ!」
(しかしピンク同士が抱き合う絵は、なかなかシュールだな)
「なる程な〜。MP200って事は、素の俺に変化はできないのか。俺、MP低いからな。その内な!」
『キュ』
「よし!次はミミだ!アナライズ」
キュウ同様、ミミのステータスにも擬態の後に(イセカイザーピンク)と表示されている。
「擬態?なるほどな。擬態の条件はどうなんだ?」
『説明しよう!
ミミックスライムの擬態は、吸収した対象、もしくは捕獲対象の思考を読み取る事で擬態する。そして思考を読み取った場合は、弱点等に擬態し、油断させたところで、攻撃、吸収するのである。また、危機を回避する際にも使用するのだ』
「お、おう。捕獲対象な……やっぱり出会い頭の大ジャンプは、俺に対する攻撃だったのか?いやいや違うよな?俺の場合は違うよな?空腹な仲間の危機を回避する方だよな?な?」
『ミミ〜』
ミミもピンクの格好のまま、キュウとは反対側の腕に抱きついた。
「ぐっ!」
再びピンク(アスカ)は、タックルのような抱きつきを踏ん張って堪えた。
「能力が上がってる事を忘れるなよ!」
(ピンク三人が抱き合ってる姿は、ウルトラシュールだな…)
「二人とも、ありがとな!しかしイセカイザーピンクはそんな顔してんだな。なかなか格好良いじゃぁないか!」
そう言ってピンク(アスカ)はピンク(キュウ)と、ピンク(ミミ)の頭を撫でた。
「おいおい!お前らスゲェな!見た目は全く同じだな!強さも同じか?あの狼で試してみるか」
『キュウ』
『ミー』
「しかしお前ら、イセカイザーになっても喋れないんだな……」
ピンク(アスカ)から離れたピンク(キュウ)とピンク(ミミ)は、二匹の狼へと向かい構えた。
狼を見ると二匹とも、お座りをして尻尾を振っている。
「しまった!あいつら誘惑してるよな?」
『説明しよう!
誘惑済みである』
「だよな…しかも良く見ると、まだ子供じゃぁないか。攻撃するのはやめだ。お前らはそこで座って待ってろ」
『『ウォン』』
「キュウ、その姿で俺にパンチを打ってこい」
雨で足場の悪くなっている中、水しぶきと共にピンク(キュウ)が、ピンク(アスカ)に急接近して、高速の右ストレートを放った。
「くっ!参ったな…なかなかやるじゃぁないか!」
腕をクロスにして、強烈な攻撃を受け止めたピンク(アスカ)。
そして、左手で側頭部を触り、怒鳴るように言った。
「想像以上のパワーだな。遡って、このパワーの説明をしてくれ!」
『説明しよう!
それは遡る事一日前!巨大な隕石が地球へと接近していた』
「遡り過ぎだ!」
『説明しよう!
遡る事一時間前!新たな仲間と共に、始まりの洞穴を出たところである』
「だ〜!違う違う!変化したら相手のパワーやスキルも使えるのか聞いてるんだよ!」
『説明しよう!
変化の術とは、相手の姿形を真似する能力である。それにより、おのずとイセカイザーのステータスも真似する事ができる。しかし、相手の思考や癖等は真似する事は出来ない。したがって、真似た相手のスキルは使用できない。結果、イセカイザーそれぞれのスキル及び、ユニークスキルは使用することができないのである』
「擬態もか?」
『説明しよう
擬態もほぼ同じである。思考を読む事が出来るというのは、発声した声から、記憶を読み解く能力なのである』
「そうか分かった……ん?…ん!?待てよ?待てよ!待てよぉ〜!!イセカイザー『それぞれの』ってことは、ピンク以外にも変身出来るってことじゃぁないかぁ〜!!!どうなんだ?」
『説明しよう!
魔石の色によって、変身出来る種類が決まっているのである』
「グ〜〜〜〜〜ッド!!!まさかの戦隊物だ!
イセカイザーって名前的に除外していた!女神様様!良い仕事してますねぇ〜!」
ピンク(アスカ)は、空を仰いで拝んだ。
「やっぱりピンクだけじゃぁないんだ!ピンクに括弧がついてるもんな!良かったぁ〜!
てことは…しまった!デーモンスパイダーにも魔石はあったのか!?そこまで気が回らなかった。何色だったんだろう…惜しい事をしたが、まぁいっか!よ〜〜〜し!俄然やる気が出てきた!
今度はミミ!かかって来い!」
またもや水しぶきと共に、ピンク(ミミ)がピンク(アスカ)にハイキックを放った。
ピンク(アスカ)は両腕を縦に揃えてハイキックをガードした。
「くっ!なかなか重いな!ミミもいいぞ!二人ともほぼ同じパワーだ!これはザックリ計算しても戦闘力が三倍だな!そこらのモンスターは瞬殺だろ!」
アスカは防御体勢を解いて狼を見た。
「お前らはどうなんだ?アナライズ」
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名前 : ー (魅了)
種族 : ウインドウルフ
分類 : 魔獣
属性 : 風属性
年齢 : 5
性別 : 雄
Lv : 8
HP : 60/64
MP : 56/56
攻撃力:66
防御力:58
素早さ:92
知 能:40
器用さ:38
幸運値:6
装備 : なし
スキル : 噛みつき、引っ掻き、風魔法初級Lv2
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もう一匹の白いウインドウルフは、レベルは5で雌だった。
「おい!風魔法って!お前ら魔法が使えるのか!スゲェな!見せてくれよ!」
しかし次の瞬間、それは起こった。
突然、ビービーと警報のような機械音が、イヤーカフから聞こえ出したのである。
「何だこの音は!?」
『説明しよう
ヒーローポイントが0になったのだ。警報が10回鳴ると、イセカイザーの変身が強制的に解除されるのである』
「強制解除ぉ!?嘘だろぉ!?」
警報音が鳴り終わると、ピンク(アスカ)の体から眩い光が放たれて、アスカに戻ってしまった。
「どうした?まさか!?」
『ワオォォォォン』
アスカは仲間の能力に興奮して、周囲の変化に気付いていなかった。
既に、大量のウインドウルフに囲まれていたのである。
「ピンチワーン!」
『仲間の新たな能力に一喜一憂したのも束の間、命の危機に直面するアスカ。
この局面を打ち破る事ができるのであろうか!
行け、イセカイザー(キュウ)
闘え、イセカイザー(ミミ)
次回予告
はったり』
「あらすじの方が下手だなオイ!しょっぱな、あれだとモチベーションが落ちるわ!やっぱ次回予告だけでお願いします」