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18 仲間 【Side.ビニール仮面】


「キュウ。雨止まないなぁ」


『キュ〜』


イセカイザーピンクに変身しているアスカは、洞穴の入り口に腰掛けて、雨が降り続ける空を眺めていた。

すると、ピンクの膝で丸まっているキュウの腹の虫が鳴った。


「そろそろ腹が減ってきたな。ここで待ってても拉致があかないし、前がダメなら後ろに行ってみるか?でもなぁ、奥には苔かキノコくらいしか無さそうだしなぁ。ハンバーガー食いてぇ」


そう言って洞穴の奥を振り向くと、そこには、ちょこんとハンバーガーがあった。


「何ぃ〜〜!!ハンバーガーじゃぁねえか!どうしてこんな所に落ちてんだ?」


(ここは異世界だろ?何でこんな物が?)


「はは〜ん。これはあれだな。女神が俺の願いを聞いてくれたんだな?キュウも腹減ってんだろ?食うか?」


『キュッキュッ!』


「しかし、変身したままじゃ食えねぇしなぁ。変身はどうやって解除するんだ?」


ピンクは両手でヘルメットを外す仕草をしたが、外れなかった。


『説明しよう!

変身を解除するには、左右の腕に嵌めているブレスレットを重ね合わせ、「変身」と発声するのだ』


「そんなもん分かるか!!ナレーション無しじゃぁ一生分からなかったぜ!しかもそれは、イセカイザーに変身する時に試してたポーズじゃぁねぇか!それじゃぁ何か?解除する時も変身って言うのか!?ったく。どっちが本当の俺なんだよ!取り敢えずやるけども」


ピンクは立ち上がり、胸の前でブレスレットを重ねるように腕をクロスした。


(待てよ。イセカイザーに変身するにはどうすれば良いんだ?

まさかさっきの魔石ってのが無いと変身出来ないんじゃぁないか?だったら、解除するのは魔石を手に入れてからの方がいいな?)


「イセカイザーに変身するにはどうすればいいんだ?」


しかしナレーションは説明を始めなかった。


「おい!どうした?教えてくれよ!」


(どのタイミングで説明してくれるんだよ!ったく)


「そうだ!さっき頭を両手で引っ張ったな」


ピンクは、再度ヘルメットを外す仕草を行った。


「イテテ、これでいいのか?イセカイザーに変身するにはどうすればいいんだ?」


『説明しよう!』


「やっぱり!合ってた!」


『変身するには魔石を消費して、その力を取り入れる事により、イセカイザーへと変身することが出来る。即ち、胸の前に魔石を添えて「変身」と発声するのだ』


「変身地味!解除に比べて変身の派手さが弱いな!

でもまぁ聞いててよかったぜ。解除するのは魔石を手に入れてからだな」


『キュッ!』


「どうしたキュウ?ハンバーガーを睨んで。ああ腹減ってるんだな?悪りぃな、食っていいぜ」


ピンクがハンバーガーに近付いたその時、ハンバーガーが飛び掛かった。


「うおっ!」


ピンクは反射的に仰け反り、間一髪かわす事に成功。ハンバーガーはそのまま後方に落ちた。


「うおぃ!このハンバーガー攻撃してきたぞ!」


ハンバーガーはピンクに向き直り、小刻みに震えている。


「下がれキュウ!何か変だ!アナライズ!」


ピンクは、目の前に現れた赤色の『+』をハンバーガーに合わせた。


ーーーーーーーーーーーー

名前 : ー (魅了)

種族 : ミミックスライム

分類 : 妖精

属性 : 闇属性

年齢 : 3

性別 : ー

Lv : 3

HP : 39/39

MP : 39/39

攻撃力:33

防御力:33

素早さ:33

知 能:33

器用さ:33

幸運値:33

装備 : なし

スキル : 吸収Lv1、闇魔法初級Lv1、読声術、擬態 (ハンバーガー)

ーーーーーーーーーーーー


「はぁ〜!?ハンバーガーじゃぁないのか?ミミックスライムって、こいつモンスターかよ!しかも、魅了済みだし…」


『キュッ』


「どうするキュウ。ハンバーガーのモンスターってどうなんだろうな?食えるのか?」


するとハンバーガーは、グニュグニュと形を変えて、淡いピンクの丸いゼリー状になった。

その中にはクリクリとした可愛らしい目玉が浮かんでおり、黒目の中には、やはりハートが見える。そしてゼリー状の中心には、丸くて濃い桃色の魔石が浮かんでいた。


「おっ!綺麗な色だな!それがお前の元々の状態か?」


『ミミ〜ッ!』


「意外!何だその声?スライムってそんな声だったっけ?ん〜可愛いから許すけども」


『キュッキュッ!!』


キュウは、ピンクの左肩に乗り抗議している。


「勿論キュウも可愛いさぁ〜」


キュウは肩でクルクル回り、ピンクの頭の上にジャンプした。


ミミックスライムは、ピョンピョンその場でジャンプして、ハートが浮かび上がった目と魔石を左右に動かしている。


そして二つの目が瞬きをしたかと思うと、魔石が形を変えて三日月形に変形した。


「えっ!魔石の形を変える事が出来るのか?」


再びハートを瞬かせて、三日月型の魔石を、まるで口のように縦や横に伸ばして見せた。


『ミミ〜!』


「可愛いじゃないか!そうか、やっぱピンクで誘惑すると目の奥がハートになるんだな」


『ミ〜!』


ピンクは両手で自分の頭を引っ張った。


「ところで、いつ誘惑したんだ?」


『説明しよう!

イセカイザーピンクの誘惑は常に発動している!射程距離は半径100メートルであり、そこに入った者は有無を言わさず魅了されるのである。ヒーローポイントの消費は50。相手を魅了した瞬間にヒーローポイントが減るのだ』


「おいおい!ピンクの能力えげつないぞ!無敵だろ!…でもおかしくないか?誘惑のHPの消費は50なのに150減ってたなぁ。キュウとスライム…まさか!もう一体この辺りにいるのか?」


アスカは周囲を見回したが、他にそれらしい生物はいなかった。


「おかしいな?他に何か…まさか、デーモンスパイダー?脚を縮めて丸くなったのは防御じゃなくて、服従だったのか。愛情表現みたいなものだったと考えると…間違いなさそうだ」


(気付かなくて、何かごめん)


「蜘蛛が仲間になるなんて…正夢か?いやいや、仲間になってないだろ!!微妙だけど。まさかこの先、カマキリまで出てくるんじゃぁないだろうな。絶対仲間にはしないからな!」


『キュ?』


「キュウは別だよ!血と泥水の汚れが落ちたら、モフモフさせてくれよ」


『キュ〜』


「キュウを助けることが出来て良かった。変身のお陰だな…待てよ…蜘蛛が正夢だとしたら、俺はゴキブリになるかもしれないのか?」


洞穴の奥で、何かがカサカサと動く音がした。


「絶対ゴキブリにはならないからな!!」


誰もいない洞穴の奥に向かって叫んだ!

ピンクの声は数回反響して聞こえなくなった。


「ふぅ〜。でも、誘惑が常に発動ってことは、町なんかで変身したら大変な事になるぜ…い〜や、ありだな!黒の天使みたいな可愛子ちゃん達を集めて変身したら、たちまちハーレムの出来上がりだ!」


ピンクは、美女に囲まれている自分を想像した。


「グフッ…はっ!ダメだ!この笑い方は、あの忌々しい小太りの『おっ君』と一緒だ。よし!今ここで黒の天使に誓おう。人前ではイセカイザーピンクにはなりません!残念だけどっ!」


『ミー!』


「おっと、悪りぃ。ピンクワールドが発動してたな。ん?」


スライムは仲間になりたそうにこちらを見ている。


「お前も一緒に行くか?」


『ミミ〜!』


「じゃあ早速名前を付けるぜ?お前は間違いなくミミだ!よろしくな」


ミミはジャンプして右肩にプルンと着地した。


『ミミ〜!』


「そうだ!ナレーションが喋るタイミングをハッキリさせといた方が良いな!」


ピンクは両手で頭を引っ張った。


「痛っ、ナレーションは頭を引っ張って質問すれば答えてくれるのか?」


『説明しよう!

左耳に装備しているイヤーカフを触れつつ喋れば、質問が成立するのである。変身時も同様、マスクの上から触れつつ喋れば、質問が成立するのである』


「恥ずかしいわ!最初に聞いとけば良かった!!首が痛いんですけど!」


イヤーカフに触れていない為、答えは返ってこなかった。


「くそっ!」


ピンクはマスクの左耳付近に触れた。


「もっと早く教えてくれよ!」


『説明しよう!

ペラペラペラ』


「早くて聞き取れねぇし!その早くじゃぁねぇよ!人をおちょくる天才だな!お前のせいで首を引っ張り過ぎて痛ぇし!どうしてくれるんだ!」


イヤーカフに触れていない為、答えは返ってこなかった。


「あ〜もう!」


ピンクはマスクの左耳付近に触れた。


「首が痛ぇぞ!」


『説明しよう!

引っ張り過ぎである』


「カッチ〜ン。頭に来た!外してやる!」


ピンクはイヤーカフを外そうとして耳を触るも、マスクが邪魔して触れなかった。しかし、考え直して外すのをやめた。


「ふぅ〜。俺の質問が悪かったな。大人になれ俺!この先ナレーションの説明が必要になるだろうし。ムカつくけど我慢!」


気を取り直し、同時に転移された他の二人の現状を聞く為、左耳付近のマスクに触れた。


「他の二人は元気か?」


『説明しよう!

元気である』


「まあ、そう答えるよな。大体分かってきた。聞いた事にはちゃんと答えてくれるみたいだな」


ピンクは二人の名前を思い出そうとした。


「名前聞いとけばよかった。え〜っと、自衛隊と黒の天使は今どこで何をしてるんだ?」


『説明しよう!

自衛隊は、南東にある森でエルフと会話中なのである。黒の天使は、北にある村のベッドで眠っているのである』


「二人とも楽しそうだな!俺は毒蜘蛛と闘ってたっていうのによ〜。おい!自衛隊は早速、異世界満喫してるじゃあねぇか!」


『キュウキュウ』


『ミミ〜』


ピンクはキュウとミミを見つめ、ホッコリとした。

そして自分の体を一瞥して頷いた。


(俺も満喫してた)


「よ〜し!行き先は決めた。北だ!」


ピンクはマスクの左耳付近に触れた。


「北はどっちだ?」


『説明しよう

イセカイザーピンクが今向いている方角が北である』


「運命!幸先いいぞ。黒の天使、待っててくれよ」




『イセカイザーピンクの、真の能力に驚愕したアスカであった。

ネーミングのセンスは、ふたまず置いておこう!

そして、尊い仲間の死を乗り越えて、目指すは北。

進めアスカ

戦えイセカイザー

次回予告

ピンク』


「ふたまずってなんだよ!しかも、デーモンスパイダーは仲間じゃぁねーし!

毎回毎回、次回予告は、おちょくり過ぎの、悪意あり過ぎだ!もうやめてくれ!」

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