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16 変身 【Side.ビニール仮面】


静寂が支配した世界。


次第に雨音と、何かが鳴く声が聴覚を刺激する。


アスカは腕をクロスにして声を出した。


「へ〜んしん!…チェンジィィィ!……ダメだ。やっぱり変身出来ない。どういう事だ?この、いつの間にか嵌めてるブレスレットが、絶対怪しいんだけどねぇ」


アスカは両腕に、黄金に輝くブレスレットを装備していた。まるで、変身のキーアイテムであるかのように。


(そういえば黒の天使が言ってたな。ステータスが見れるんだったな。確か…)


「ステータスオープン!だっけ?」


すると突然目の前に透明なウィンドウが出てきた。


ーーーーーーーーーーー

名前 : 一色 飛翔

種族 : 人間

分類 : 異世界人

属性 : 異属性

年齢 : 20

性別 : 男

職業 : 変身ヒーロー

名称 : ()カイザーorライダージャーダーマン

Lv : 1

HP : 20/20

MP : 15/15

攻撃力:25

防御力:20(+6)

素早さ:19

知 能:15

器用さ:19(+20)

幸運値:10(+10)

装 備 : 地球の服(防御力+1)、地球のズボン(防御力+3)、地球の靴(防御力+2)

アクセサリー : ブレスレット(器用さ+10)、ブレスレット(器用さ+10)、イヤーカフ(幸運値 +10)

スキル : 言語理解、ナレーション、アナライズ

ユニークスキル : 変身

ーーーーーーーーーーーー


「ッ!!!!職業、変身ヒーローって書いてある!!しかもユニークスキルってとこに変身が!!!夢なら覚めないでくれぇ〜!」


その時、茂みの向こう側から、咀嚼音が聞こえた。


(ヤベェ油断してた)


アスカは咄嗟に地面に伏せて息を潜めた。


(何も来ないな)


音の聞こえた方へゆっくりと近付き、茂みの向こうを覗いた。

そこには大きな熊に似た獣が、何かを食べていた。


(あ、あの熊デカ過ぎだろ!3メートルはあるぞ!

パン屋か?夢の続きなのか?夢なら覚めてくれ〜!)


そう考えていると、熊に似た何かは食事を終えて、森の奥へと消えて行った。


(やばかった、ん?)


熊が食べていた場所で、何かが光って見えた。

アスカは警戒しつつ近付いた。

そこには桃色に輝く、テニスボール程の大きさの石が落ちていた。


「これは…」


石を拾い上げ中を覗くと、薄いピンクのモヤのようなものが、妖しく動いていた。


「綺麗だな。これは売ったら金になるぞ」


その石をポケットに入れた。


雨がますます強く降り始める。


「まずは雨宿りが出来そうな場所を探すか。勿論こっちだな」


アスカは熊とは逆方向へ、逃げるように進んだ。



しばらく歩くと、人が一人通れるほどの、小さな洞穴を見つけた。

入り口には、砕けた岩がいくつも転がっている。


「何だこりゃ。気味が悪いな…」


その岩の幾つかに、奇妙な文字が描かれていた。

それでもアスカは、雨の当たらない場所でひと休みしたかったため、見て見ぬ振りをしてそのまま中に入った。


「ふぅー。ひとまず、雨は凌げそうだな」


洞穴の中は苔とカビの匂いが充満している。


「中は意外と広いな」


入り口は狭いが、奥に行くにつれて広くなっている。血痕のようなものが奥へと続いていた。しかし明かりがないため、その奥までは見えなかった。


「何も見てない!よし!まずはステータスオープン…」


アスカは、自分のステータスを確認して顔が綻ぶ。


「顔がニヤけてしまうな。しかし突っ込み所満載だな。スキルはナレーションとアナライズ…意味がわからん」


一通り目を通し、分類や属性、スキルに眉を寄せるが、やはりヒーローに関する名称が気になった。


アスカは左耳に違和感を感じ、地球では付けていなかったイヤーカフを触りながら呟いた。


「名称の横の括弧カイザーorライダージャーダーマンってなんだ?」


『説明しよう!

括弧の中にはヒーローの名前が入る。そしてカイザーまたはライダージャーダーマンのどちらかを、名前に続く名称として選択するのだ』


「誰だ!?」


周囲を見回すが誰も居ない。


「突然声が聞こえたが…誰もいない。耳元で聞こえたような」


そう思い左耳にあるイヤーカフに触れた。


「イヤーカフ!!まさかここから聞こえるのが、ナレーションか?」


『説明しよう!

そこから聞こえるのがナレーションである』


アスカはイヤーカフから手を離し叫んだ。


「だろうな!耳元でうるせぇ!何で今まで黙ってたんだよ!」


しかしナレーションは口を閉ざした。


「だんまりかよ!何かルールがあるのか?まぁいい。それより名前を決めないとなぁ名称は…おかしいな…」


(あ〜、あの時女神に、何とかカイザーとか、何とかライダー、ジャー、ダー、マンって続けて言った気がする。ライダーとジャーとダーとマンが繋がってるし!?あの女神め!)


「わざとだろ!ここまで嫌がらせするか!?ライダージャーダーマンはなしで結局、カイザー、一択じゃんか!ドラゴンライダーにしたかったのに!」


アスカは再び、違和感のあるイヤーカフをかきながら呟いた。


「しゃーない。名称、カイザーでオネ」


『名称カイザーでよろしいですか?YES/NO』


「YESだ」


『YES。名称カイザー』


(後は名前か!任せろ!得意だ!

地球から来たからアースカイザーかな?

いや、俺の名前と被るなぁ。ん〜〜そうだ!良いの思いついた!異世界だから、イセカイザーだな!)


「名前はイセカイザーだ」


『(イセカイザー)カイザーでよろしいですか?

YES/NO』


「よろしくない!NOだ!NO」


『NO。キャンセルしました』


(危ねぇイセカイザーカイザーなんてダサすぎるだろ!)


「名前はイセだ」


『(イセ)カイザーでよろしいですか?

YES/NO』


「YES」


『YES。名前イセ』


『ヒーロー名、イセカイザー。登録しました』


(よし!イセカイザーになった。これで変身出来るのか?)


アスカはイヤーカフを触るのを止め、立ち上がり目の前で、両手に嵌めてあるブレスレットを重ねてポーズをとった。


「変身!……トランスフォーム!」


(ダメか……このブレスレットが怪しいと思うんだけど…ポーズが違うのか?)


(そうだ!アナライズって何だろうか)


「アナライズ」


アスカがスキルを声に出すと、目の前に赤色の『+』が現れた。そして、何かを探す様に上下左右へと動き出した。


(お?お?なんだこりゃ)


それが左下へと動いたので、視線を下げると、ズボンのポケットで止まった。


「まさか」


アスカは左手で、ポケットから桃色の石を取り出した。


案の定『+』は石と重なり、ピピピと鳴った。そしてステータスのように、目の前にウインドが表示された。


【魔石】魔物の核。色や大きさ、内に秘める魔力は魔物により様々である。


「アナライズすげぇ!これは女神に頼んだスキルじゃあないな。と言うことは、ヒーロー固有のスキルだな」


(…で、魔石は何に使うんだ?)


『キュ〜』


その時、洞穴の奥から何か聞こえた。


「何だ?」


奥の方を目を凝らして良く見ると、宙に浮いた小さな白い動物がアスカを見ていた。


「リス?」


恐る恐る近付くと、そこには蜘蛛の糸に絡まった、鼠色をした子狐が苦しそうに、もがいていた。


「狐?大丈夫か?ん?」


不意に視線を感じ、天井を見上げると8つの赤い光が揺れていた。


「え?」


次の瞬間、天井にへばり付いていたそれが、アスカ目掛けて飛びかかった。


「うおっ!」


アスカは咄嗟に前に転がり、かわそうとしたが背中を何かで切られてしまった?


「くそッ!?何なんだ?」


入り口の方を振り返り、8つの光を見た。

それは1メートル程の巨体を持つ、蜘蛛の目だった。


「ア、アナライズ」


アスカは『+』を蜘蛛に合わせた。


ーーーーーーーーーーーー

名前 :ー 

種族 :デーモンスパイダー

分類 :魔蟲

属性 :毒属性

年齢 :9

性別 :雄

Lv :12

HP : 113/113

MP : 86/86

攻撃力:74

防御力:50

素早さ:134

知 能:18

器用さ:113

幸運値:16

装備:なし

スキル : 噛み付きLv3、引っ掻きLv4、糸Lv5、毒Lv4、毒耐性Lv4

ーーーーーーーーーーーー


「強っ!これは逃げないとヤバイ!」


しかしデーモンスパイダーが入り口を塞いでいる。


「どうする!?」


アスカは立ち上がったが、突然目眩がして再びしゃがみ込みだ。


「何だ?目が霞む。ステータスオープン…」


アスカは自分のステータスを見て驚愕した。


「ヒットポイント残り2!!しかも名前の横に毒ってあるぞ!あのクソ毒蜘蛛!毒を盛りやがったな!く、苦しい。死ぬ…」


アスカは毒の影響なのか息苦しくなり、左手を胸に当てた。


(やっぱりヒーローにはなれなかった…そもそも信じた俺が馬鹿だった。そんな事あるわけないよな…)


「だ、だめだ、意識が遠くなって…き…た……」


(それでもヒーローになりたかった!)


「さ、最後の……賭けだ…頼む!変身…」


すると、左手に持っていた魔石が、胸の前で輝き始めた。

それと同時に意識がハッキリとして、背中の痛みがなくなった。


いや、むしろ力が身体中にみなぎる。

そして魔石が胸に吸い込まれ、アスカは眩い光に包まれた。


光が収まるとそこには……



『アスカは、イセカイザーカイザーへと変身する事が出来たのか?

そして、この窮地を乗り越えることが、出来るのであろうか?

次回予告 勇姿』


「お前だったかぁナレーション!勝手に喋るな!

話しかけてもシカトしたくせに!

しかもイセカイザーカイザーって間違えてるし!

嫌がらせ?何なん!」

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