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キャロラインの誤算

カーグ家に戻ったキャロラインは、口角が自然に上がるのを止めることができなかった。


(…これで、邪魔者はいなくなった)


フレデリック皇太子の婚約者に決まってからも、フレデリックはまだ自分に笑顔さえ向けてくれない。

…今もまだ、フレデリックはアリシアしか見ていない。それが手に取るようにわかった。


アリシアのせいだ。


彼女がいなくなったことを理解すれば、彼も、正式に婚約者となった自分の方を向いてくれるだろう…いや、向かざるを得ない筈だ。

魔術の能力を重視するこのアストリア王国における年若い貴族女性のうち、最も魔術の能力の高いのは、明らかに自分なのだから。



アルスはまだ目覚めてはいないけれど、じきに目を覚ますだろう。


アルスがもし戦いで危険な状態になれば、アリシアが魔力を分けるに違いない。

たとえ、彼女の命を危険に晒しても。

…その読みどおりだった。


ディーク王国で掴んだのは、アリシアが何らかの方法で魔力を外部に放出できるようになったらしいという情報だった。

そして、なぜか彼女には、遠くにいる者の状態まで、把握できるらしい。

詳細はわからないけれど、カーグ家の執事だったグレンにも魔力を飛ばし、自爆を回避させたらしい。


ディーク王国の結界を崩壊寸前まで追い込み、アルスも魔力切れを起こせば、アリシアはその魔力をすべて使い果たしてでも、結界を守り、アルスを助けるのではないか。

そう父に進言したとき、父もすぐに頷いた。


アルスの命を危険に晒す賭けではあったけれど、自分にしてみれば勝ちの見えた賭けだった。…アリシアは、そういう子だから。

そして、それはディーク王国についても同じことが言える。我々は賭けに勝った、と。


もしアリシアがアルスを助けないことを選べば、アストリア王国はアルスを失い、ディーク王国には魔力の供給源となるアリシアが残り、相対的に分が悪くなってしまう。

それどころか、カーグ家にとっては、魔力に優れた跡取りまで失うことになる。

けれど、そうはならなかった。


アリシアさえいなくなれば、アルスが回復して機を改めれば、結界の破壊は難しくはない。

そして結界を破壊してしまえば、魔物による国内への襲撃も再開される。

それで消耗したときを狙えば、落とすのは容易い筈だ。


…勝った。

その喜びの余韻にキャロラインが浸っている時に、アストリア王国皇太子からの伝令が父に届いた。


父は、相変わらずの冷たい顔で、皇太子からの手紙をキャロラインにひらりと差し出す。


「フレデリック皇太子は、お前との婚約は破棄し、アリシアと婚約するそうだ」


信じられない知らせに、キャロラインは膝から崩れ落ちる。


(こんな筈では…。あの子はまだ、生きているというの?

…どうして、こんなことに)


その時、侍女が慌てた様子で部屋に駆け込んできた。


「アルス様のお姿が見当たりません…!

この家のどこにも、いらっしゃいません」

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