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密偵の告白

グレンは、少し考えるように視線を宙に彷徨わせてから、口を開いた。


「ここに集まっていらっしゃるみなさんは、恐らく、ある程度アストリア王国の動きをご存知の方々だと思います。


…アストリア王国は、お察しのとおり、貴国を支配下に置く機会を狙っています。

歴史を振り返っても、アストリア王国が貴国に攻め入ったことが幾度もありましたが、いずれも貴国の精鋭部隊に撃退され、痛手を負ってきました。そのため、攻略が困難な貴国を征服する機会を、長年狙っていたのです。


そんな時、アストリア王国にとってのチャンスが訪れました。

最近、ディーク王国に出没する魔物が凶暴化し、その行動範囲も広がっており、ディーク王国の戦力を魔物対策に回さざるを得なくなっていること、そして徐々にその兵力を消耗していることを掴んでいたのです。


…そして、その裏には精獣の代替わりがあるのだろうと推察しています」


一瞬、居並ぶ面々の面持ちに緊張が走る。


グレンは続けた。


「…ああ、念のため申し上げておきますと、私の話すアストリア王国の推察が合っているかを答えていただく必要はございませんし、そのつもりでこの話をしている訳でもありません。

信じていただけるかは別として、私はアリシアお嬢様がこちらにいらっしゃる以上はアストリア王国側につくつもりはございませんので、それも申し添えておきます。


さて、話が戻りますが、ディーク王国の精獣の存在は、古くよりアストリア王国でも注目されていました。ディーク王国の調査報告によれば、約100年毎に魔物が勢力を増す時期があることから、それと精獣とみられる存在との関係性が研究されていたのです。

研究結果としては、精獣の寿命が尽き、次の精獣に代替わりがなされたばかりで新しい精獣の力が不安定なときが、魔物が凶暴化する時期と重なる。そのように把握されています。


この100年が経ち、代替わりが行われるとみられる時期が、ちょうど今の時期と重なります。そのため、近年は特に、魔物の動向や、ディーク王国の魔術師団、騎士団の動きを把握するための密偵を定期的に送り込んでいたようです。…その辺りの詳細は、私も把握しておりませんが。


…そして。アストリア王国は今回、その精獣の命も狙っています」


「何て罰当たりな…」


エリザが顔を歪めてぽつりと溢す。


「自然界を司る精獣への配慮もあり、貴国は、ある程度手付かずの自然を残し、動植物を守りつつ人間との共存を図っている。


しかし、貴国の資源を手にしたいアストリア王国にとっては、そのような存在は邪魔者以外の何者でもありません。そのため、精獣がまだ幼く、魔力が十分でないうちに、その存在を突き止め、抹殺しようとしているようです。

ただ、代替わりの度、精獣の取る動物の姿は異なるとのこと。

私の知る限りは、まだ、アストリア王国では、代替わり後の精獣がどのような姿なのかまでは把握していないと思われます。


それから…」


そこで一度、グレンは言葉を切った。


「…これは私が聞いた事実ではなく、予想に過ぎないのですが。精獣の代替わりの影響を考えたとしても、一部の魔物の動きが不自然に思われます。人間が魔物に通ずることが可能なのか、私も存じませんので、あくまで感覚ですが…。


そして、魔物を防ぐ結界がディーク王国全体に張られたことで、アストリア王国はかなり焦っています。精獣の力が成熟する前に、恐らく近いうちに何らかの手を打ってくるでしょう。


なぜこれほど強力な、国を守る結界が短時間で張られたのか。それも探っていると聞いていましたが…」


グレンはそこまで話すと、私の目をじっと見つめた。

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