地下の扉
エリザと別れ、リュカード様とザイオンを待っていると、ルーク様が通り掛かった。
「あれ、アリシアちゃん?リュカード様たちを待ってるの?」
もう業務を終えたようで、騎士団の制服から私服に変わったルーク様は、にこにことしながら近付いてきた。
「はい、ルーク様」
「そっか。
さっきリュカード様たちを見掛けたけど、もう少しかかりそうだったよ。
…よかったら、リュカード様たちが戻るまで、簡単に騎士団の中でも案内しようか。
なかなか見る機会もないだろうし、どうだい?」
「ルーク様自ら、よろしいのですか?」
「ああ、俺はもう上がるだけだから」
確かに、こんな機会はなかなかなさそうだ。
騎士団長にお願いするのも気が引けるけれど、せっかくなのでお言葉に甘えることにする。
「では、ぜひお願いします」
騎士団の建物は王宮の横にあり、地上は1階までの代わりに地階がある。もう人もまばらになった建物内を案内してもらった。
「ルーク様は、リュカード様とザイオンと仲がよろしいのですね。昔馴染みなのですか?」
気になっていた質問をすると、
「うん、そうだよ。エリザも含めてね。みんな幼い頃からの、気のおけない仲なんだ。
リュカード様は、貴族位も高いし、俺より1つ年上だから、様付けしてるけど、そのくらい。言いたいことを腹を割って話せる友人だよ」
「ふふ、いいですねえ。
そう言えば、ルーク様は女性にとても人気があるみたいですね。エリザが、ルーク様のことを女性によく質問されると言っていましたよ」
ルーク様が困ったように笑う。
「いや、うーん、まあね。
…でも、自分が想っていない相手に追いかけられたところで、嬉しいものでもないしね」
「そうなんですか。
…人気があるというのも、大変なんですね」
ふと、ルーク様の視線を感じた気がしたけれど、ちょうど通路の右手に現れた部屋の説明をしてくれた。
地階に降り、てくてくと歩きながら説明を聞いていると、途中、1つだけ趣の違う扉があった。
同じように並んでいる扉の1つなのに、その扉だけが古めかしく、扉の木の色もくすんでいる。
少し気になって、ルーク様に尋ねてみた。
「この扉は、何の部屋なのですか?
…ここだけ、古いみたいですね」
ルーク様は訝しげな顔をしている。
「ん?どの扉のこと?」
扉の前で、ここです、と指を差すと、さらに首を傾げられた。
「ここには、扉なんてないけど…」
おかしいな、と思って扉に触れると、突然その扉が開き、私の身体は扉の向こうに吸い込まれていった。




